「愛を貫く事で満たされるモノ。犠牲になるモノ。」シラノ bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
愛を貫く事で満たされるモノ。犠牲になるモノ。
結果的にですよ。シラノは自己の誇りへの愛を貫き通し、ロクサーヌは人の本質への愛を貫いた。2人が結ばれる事は無かった訳ですが、これは悲劇なの?社会通念上の幸福は得られなくとも、精神の孤高の中に過ごす日々には、切ない満足感はあったと思う訳で。その切なさは、悲惨でもないし悲劇でもないんじゃないかと。ココロが満たされ過ぎない幸せって言うヤツ?
人の本質への愛を貫いたロクサーヌは、妥協と犠牲の結婚から自分の人生を守り。シラノは愛を犠牲にして自己の誇りを満たし続けた。と言う現代的合理性追求型価値からは程遠い物語りが、未だに舞台化され映画化される世の中は、捨てたもんじゃないかも。
本編の方はと言うと、まずはヘイリー・ベネットですよ。Swallowに続いてジョー・ライト監督とのコンビですが、歌がうま過ぎて「こりゃ吹き替えやな」と信じてたら本人歌唱だった。細目で透明感のある声が上に伸びること伸びる事。これはビックリもんですw
ミュージカルとしてのクォリティよりも、純粋に映画としてのクォリティの高さに拍手です。幕開け直後の劇場シーンの衣装・内装・調度品の手抜き無し感。金掛けてます!時間掛けてます!力入ってます!って言う作り手の本気度も好感が持てます。
言葉の持つ力をテーマにしてるだけあって、脚本・台詞にも神経使って仕上げた感じがマンマンですもん。要所を締める「決めゼリフ」がいちいち文学的でハッとします。
音楽はスノッブでキラーソングらしいキラーソングが無いってのが痛いけど、劇映画としての品質感だけで十分に満足できました。
良かった。結構。
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3/2 2回目
やっぱり音楽が今一つで、これが痛いですw
いや、なんか、ありきたりなんです。Scoreそのものが物足りないと言うよりも、演奏・録音なんだと思うんですけど。厚みを出すなら、もっと出して欲しいし。クリーンにするなら、もっとシンプルにして欲しい気がするし。中途半端だと感じてしまいました。
と。ですね。
キラーソングが無い。また、主役以外に、歌だけで観客を魅了する歌姫も歌の王子様もいない。これは、Musicalとしては致命傷にしか思えないんです。
一方では。純粋に映画としての造りこみは緻密でため息が漏れます。
お互いが姿を見ることなく愛を語り合う場面。
シラノが息を引き取る場面。
2回目の方が感情移入してしまい、2か所でポロリーン。
良かった。とっても。