「仕事をするということ」アキラとあきら りかさんの映画レビュー(感想・評価)
仕事をするということ
後に神父になったやすさんは、「アキちゃんらしい。昔からそんな子でしたよ。」と井口さんに言っている。
二人が初めて出会った子供時代、アキラが落としたベアリングを車から降りて来たあきらが拾って拭いて渡してあげている。
アキラとあきらが、成人し就職して銀行員として仕事に揉まれながら、最後には二人で協力して会社再生を成し遂げる話である。
頭脳明晰、思考判断力、行動力もさることながら、人への思いやりを大事にした二人だからこそ功を奏したのだろう。
銀行とは金の商売をする営利企業である。その容赦なさが見えて、アキラが取り引き先の井口さんの娘さんの命を救うがためにしてはならないことをしてしまう。
結果、アキラが左遷されるのは当然である。
だが、アキラにとっては、自身の進退など二の次であり、自分の子供時代に嫌と言う程父の苦悩を見て来たアキラにとって銀行の意向に従っていたら一生後悔したであろう。
アキラには井口さんの娘さんが描いた絵が宝物のように見えた筈だ。
あきらは幼い頃から身内の問題を目の当たりに見て血縁者でさえこうなのだから、他人相手なら隙のない徹底した仕事ぶりでないとと考えている。
アキラに度々言う「お前は育ちがいいな。」という言葉も裕福な生活ながらも身内の色々な面を見て来てそこから逃げ出している自分が惨めでもあり、少し屈折している自分とは違った真っ直ぐなアキラが眩しく見えたのだろう。
経営の才に乏しい叔父たちが、なぜ兄である父に抵抗するのか。父や叔父たちの父である祖父が長男である父を常に重んじたためではないか。父はそれがわかっていて叔父たちに負い目を感じていたが何も言い出せぬままこの世を去ってしまった。それゆえ、弟である叔父たちにも相続させる遺言書を認めていたのだろう。
父の最期の気持ちも知り、叔父や弟と真摯に向かい合うことで一族一丸となれて会社再生への道も開けた。
アキラがトップバンカーの道を断りあきらの会社の為に知恵を絞り奔走し考え出し作成した稟議書を持って不動本部長に食い下がる場面。
見守る銀行員たちと共に固唾を飲んで見入った、感動のシーン。
TV版と違い、時間短縮のため、
いつの間にかアキラが栄転して本社復帰したり、福島支店での融資先との関わり、憧れた工藤銀行員、ピール会社との契約、など最初の描写はあるが、経過やその後が描かれておらず展開の早さに驚いた。また、東海郵船という会社についても祖父から父へと受け継がれた本作の重要な部分を占めるにも拘らず、あまりに描かれていないのが残念だった。
その分、主役二人が際立って浮き彫りにされてこれは良かった。
入社式での頭取の言葉
➖人の為に金を貸せ➖
実践できた。
アキラたちの上司役である江口洋介やあきらの叔父役のユースケ•サンタマリアが盛り上がるところを上手く感動させてくれていた。
記:TV版も超お薦めです。
誰もが立場があり、自分の正義感で仕事をします。
特に銀行に必要なのが「根拠」でしょうか。
その根拠の中に「想い」という項目はありません。
行員の中にヤマザキアキラの様な人物が一人でもいたらいいなあと思いました。