「池井戸節全開の友情ドラマ」アキラとあきら といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
池井戸節全開の友情ドラマ
(池井戸潤原作は)レベルの高い合格点を超える映画、オールウェイズ出してくれる。
池井戸原作と実写映画(ドラマ)は相性が良いのか、半沢直樹にしろ空飛ぶタイヤにしろ七つの会議にしろ本作にしろ、作品としてのクオリティが保証されているので安心して鑑賞できますね。
とにかく、どの作品観ても面白い。会話劇がメインなのに全然ダレない。内容は難しいことを話しているのに、脚本や演出のおかげで経理の知識が無くてもちゃんと理解できる。どの作品も安定して☆4以上を出してくる印象があります。
正直不満点は全然無いんですけど、とある映画レビュアーさんが「池井戸原作は毎回展開が同じで先が読める」「主人公の父親が町工場の社長で銀行から融資断られて会社潰れる展開は見飽きた」って言ってるのを観て、確かにそうだな~と思っちゃいましたね。不満点は強いて挙げるなら「展開がお馴染み」ってところですね。
ただそれは、今までの池井戸原作の作品をいくつも見ているからこそ感じる不満点ですので、そこまで池井戸原作の作品に触れてこなかった方からすれば、非常に面白い作品に仕上がっていることは間違いないと思います。
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国内有数のメガバンクである産業中央銀行。同期入社の中で群を抜いて優秀な社員として二人の男が入社する。父が経営する町工場が倒産して厳しい生活を送ってきた山崎瑛(竹内涼真)と、大企業の御曹司として育てられたが次期社長の座を拒み行員となった階堂彬(横浜流星)。対照的な二人は行員として切磋琢磨するが、情に流されやすい山崎と機械のように冷静沈着な階堂の間にはどんどんと差が開いてしまう。そんな中、階堂の父親である東海郵船社長が病に倒れて亡くなってしまう。父の遺言により会社を引き継いだ階堂であったが、社長代理を行なっていた弟と彼を目の敵にする叔父らが起こしたリゾート事業による多額の負債があることが明らかとなる。
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私個人的に池井戸原作の実写作品は一つもハズレがありません。どれを観ても間違いなく楽しめるという安定感と安心感があります。本作においてもそれは健在で、「絶対楽しいだろうな」という確信をもって公開初日に劇場に赴き、「やっぱり面白かった」と満足しながら劇場を後にする。そんな感じの映画でした。
他の池井戸映画(『七つの会議』とか『空飛ぶタイヤ』とか)を鑑賞して楽しめたという方ならば、本作も絶対楽しめると思います。安心して劇場に来ていただきたいですね。
池井戸作品の魅力として、難しい題材を知識のない人でも分かりやすく説明するのが異常に上手いというのが挙げられます。『空飛ぶタイヤ』であれば車の部品のことであったり、本作や『半沢直樹』であれば企業の会計などの数字について。通常ならばある程度知識がある人でなければ理解できないことを、難しいところを上手いこと端折って分かりやすく描いています。観ていてなんだか自分の頭が良くなったような錯覚を抱くんです。ここが、池井戸作品の魅力ですね。
また、キャラクターの描き方が上手いのも魅力の一つですね。
本作に限らず、池井戸映画はキャラクター数が非常に多いんです。特に2019年に野村萬斎主演で映画化された『七つの会議』に至っては台詞分量がそこそこあって「メインキャラ」と呼べる登場人物が30人くらいいる。他の映画と比べると異常な多さです。
しかし、その多すぎるように見えるキャラクター達にしっかり映画としての役割が与えられ、キャラが立っていて、魅力的に見える。こんなにキャラクターの描き方が上手い映画ってなかなかないように感じます。『七つの会議』に引き続き、本作でもそのキャラの魅力がそのまま映画の魅力につながっていました。
本当に面白い作品でした。知的なのに分かりやすく楽しめる作品と言うのは希少ですので、ぜひ多くの方に観ていただきたいですね。オススメです!!