「昔、この業界のすみっコで暮らしたことがある者としては◎」アキラとあきら グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
昔、この業界のすみっコで暮らしたことがある者としては◎
(ラストの稟議のスキームについてネタバレになるかもしれないので、ご注意ください)
下田のリゾートホテルの借入れに対して、不出来なオジの経営する東海商会と東海観光が保証している債務の合計は90億円。そしてオジたちの策略で東海郵船が保証してしまうことになった債務が50億円。実態として連帯保証は本人の借入と同義ですから、グループ総額のリゾート関連の借入は140億円ということになります。
ラスト直前まで、この借入はすべて三友銀行が融資しています。
経営状態が悪くて他の銀行は貸してくれないので、三友銀行が金利を高く設定しても、この二社は借りざるを得ません。
赤字続きで、返済が滞るリスクが高いのだから金利を高く設定しないと貸す側としては割に合わない、というのはひとつの論理です。まぁ経済原理(金利を高くすることで高リスクの融資ができる)の一種なのでやむを得ないと解釈するか、アコギなやり方だと解釈するのかは、人それぞれ⁈ですが…。
産業中央銀行が140億円を貸して、三友銀行の借入は全額返済させます。すると、金利も三友より低くしてくれるので、金利だけでも年間数億円負担が減ります。大日ビールへの売却で更に50億円返済できるので、この山崎瑛の稟議の結果、グループの下田リゾート関連借入は90億円となり、後は階堂彬の経営手腕で着実に返済していく。
事業見通しが甘いまま、多額の資金を貸し出し、下手をすると100億円に近い貸倒れ引当金を計上しなければならなくなったライバルの三友銀行をも救う全面的な肩代わりのスキームだからこそ、常識では〝あり得ない〟崖っぷちからの稟議なのです。
不動部長の、なぜそこまで?には銀行員としてのバランス感覚を超えてくる瑛の発想への驚きも含まれています。
型破りなのに、正攻法。
正攻法なのに、型破り。
それが瑛の真骨頂。
今の若者の皆さんは電子押印(回覧)も増えてきたので、実感しづらいかもしれないですが、少なくとも2000年以降0年代までは、稟議決裁はトップに回る以前の直属上司との勝負でした。あの緊迫感を経た後の『いい稟議だった』のひとことは何ものにも代え難いゾクっとくる瞬間です。
決裁権限をカサにきてパワハラ的な振る舞いをする上司も少なからずいましたが、それなりに勝負として楽しかったように記憶してます。
若い頃、徹夜で稟議書を書いていた頃の思い出を想起させてくれるエピソードが満載で、思ったより泣けました。
スリリングなビジネス上の真っ向勝負。
きっても切れない身内との相剋。
二つの要素が見事に絡まる素晴らしい作品に仕上がってました。
「シャイロックの子供たち」の予告編観ました。
ワクワクしました。
面白そうですね。
阿部サダヲさんって、今回は良い人みたいですね。
共感たくさんありがとうございました。
文章おかしかったです。
合理性を追求して、非合理になるのは、人間でなければできないことを見極められない。というより利益第一主義の中で。あえて切り捨てる。言い方きついけど、ヒューマニズムの否定だと僕は思います。言ってること同じかなと思います。
コメントありがとうございます。そうです。AIと人間の関係です。AIにより仕事が半分なくなるって論議ありますが、「その仕事、その労働に人間は必要なのか?人間を信頼し人間だからこそできることを見極められたら、やはり人間がする仕事は残る」って僕は思っています。合理性の追求が非合理になるのは、人間にしかできないことがあり、人間性への信頼。ヒューマニズムの信頼だと思います。
簡潔な補足説明ありがとうございます。
おかげ様で作品を咀嚼する機会となりました。業界のシステムやら倫理観を全く知らない僕でさえ胸が熱くなる箇所もあったので、それらをご存知の方には爽快な作品だったのかもと感じました。
ありがとでした😊
U-3153さん、畏れ入ります。
たまたま映画に近いような(取り扱う仕事のスケールは映画と比べるのはおこがましいくらい、遥かにちっぽけなもんですが)人間関係を経験したことがあるから身に染みて感じられたからだと思います。
ほー、なるほどー。
その駆け引きの醍醐味が、俺には分からなかったのでしょうねえ。
グレシャムさんのレビューを読んで、結構スリリングな展開だったんじゃないかと、感じた次第です。
今晩は。
お久しぶりです。
今作を鑑賞し(実は今週一番に観たかったのですが、今日になりました。 けれど高レビューの多さから矢張りな・・、と思いました。)現在の中堅のサラリーマンって、グレシャムさんが仰る通り、稟議書を通す大変さって分かるのかな・・、と思いながら観ていました。
池井戸潤さんの小説は、少し前に嵌り(というか、サラリーマンで読書好きで嵌らない人っているのでしょうか・・。)殆ど読みましたが、今作は原作の良さを残しつつ、三木監督が上手く映像化作品として纏めたなあと思いましたね。
池井戸潤さんの作品は、殆どTVドラマ化されていますが、私はTVドラマを見ないので、映画になった「空飛ぶタイヤ」「七つの会議」のみ映像化した作品を鑑賞したのみですが、どちらも非常に面白く。
但し、昭和の香りが濃厚に漂っていたので、今作はその辺りを三木監督が上手くアレンジメントしたなあ、と思いました。では。
明日からは又、キビシイ仕事ですので、返信は不要ですよ。