「【”救済”小さなベアリングの絆が、二人の優秀で漢気溢れる男達が”人生の舵”を取り戻していく過程を描く、胸が熱くなる人間ドラマ。青春映画の旗手、三木孝浩監督の絶妙な手腕に唸った作品でもある。】」アキラとあきら NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”救済”小さなベアリングの絆が、二人の優秀で漢気溢れる男達が”人生の舵”を取り戻していく過程を描く、胸が熱くなる人間ドラマ。青春映画の旗手、三木孝浩監督の絶妙な手腕に唸った作品でもある。】
ー メガバンクに入社した山崎瑛(竹内涼真)と、階堂彬(横浜流星)は、同じ東京大学経済学部卒として、同期の中では頭一つ抜きんでている。
が、生い立ちは真逆で山崎瑛は銀行の融資を得られず廃業した小さなプレス工場の息子。
故に、彼は人を救えるバンカーを目指している。
一方、階堂彬は老舗海運会社、東海郵船の御曹司。
父親を含めた3兄弟たちの、身内でありながら柵に囚われた姿に嫌気が差し、銀行員に・・。ー
◆感想
・物語の設定、構成が絶妙である。
原作では長く語られていた山崎瑛と、階堂彬の子供時代の話を最小限にとどめ、銀行に入行してからの二人の生き様にフォーカスして描いている点が良い。
ー そして、子供時代に二人が一瞬交錯した、”ベアリング”を彬がハンカチで拭いて、瑛に渡すシーンの再後半との連動制が、鮮やかである。ー
・新入社員研修の一環で”会社側”と”銀行側”に別れて、ある会社に融資するかどうかを、チーム毎に検討させるシーン。
ー あのシーンは、見事だったと思う。
山崎瑛チーム(銀行側)が、階堂彬チーム(会社側)が作成した貸借対照表から、粉飾決算を見破り、融資を拒否する・・。そして、二人は周囲からその力量を認められつつ、それぞれのバンカーの道を突き進んで行くのである。-
・山崎瑛は、地道に足で町工場を回り、資金繰りの厳しい会社の経営者(宇野祥平)の愛娘の心臓移植手術だけでも受けさせようと、バンカーとしてはやってはいけない事をし、地方都市に飛ばされる。
一方、階堂彬は順調に、出世街道を突き進む。
ー それにしても、今時、本社勤めが出世コースで、地方勤務が出世から見放された人の辿る道って、どうかなあ・・とは思ったが、物語的には分かり易いので特に突っ込まず。-
・山崎瑛は地方でも、足で稼ぎ実績を残し、見事に本社復帰を果たす。そこには、彼を地方に飛ばした常に”確実性”を求める不動(江口洋介)が営業部長として、君臨していた。
ー 不動は、一見ヒールの様に見えるが、至極真っ当な男である。後半描かれる彼の行動からそれは分かるし、仕事の出来ない男がメガバンクの営業部長にはなれないだろう。-
・階堂彬の家が、崩壊寸前だった描き方もスリリングである。
二男(ユースケ・サンタマリア)は東海郵船Gの東海商会の社長。三男(児島一哉)は東海観光の社長だが、東海郵船を率いる長男(石丸幹二)と合わず、勝手にリゾートホテル、”イーストオーシャン下田”を開業するが・・。
ー 今作の時代設定が、バブル期である所で、観ている側は”マズイよなあ・・”と感じる。
そして、山崎瑛にコンプレックスを持つ弟、龍馬(高橋海人)は、義兄たちの”イーストオーシャン下田”がリスキーで実質は赤字になっていることを薄々感じつつ、連帯保証金を出してしまう。-
■白眉のシーン幾つか
・東海郵船の危機を救うために、前途洋々たるメガバンクを退職し、社長になった階堂彬が、義兄たちと対決するシーン。義兄たちの粉飾決算を見抜き、追及する姿。開き直る義兄たち。
ここで、驚いたのはプライドの高い階堂彬が、階堂家を再び一つにするために、彼らの前で土下座するシーンである。
自分が、東海郵船を継がずに逃げた為に、階堂家の絆が解れた事に対する自責の念と、亡き父への詫びだろうと、私は思いながら観ていた。
更に、義兄たちに告げた亡き父の”義兄たちにイロイロと、押し付けてすまなかった・・。”という言葉。それまで、シニカルな態度を取っていた次兄が、立ったまま涙する姿。
ー このシーンは沁みたなあ。次兄も、自分自身が長兄に対し、コンプレックスを持っていた事と、”自分の人生の舵”を父に決められてしまい、レールの上で走らざるを得ない苦しさが垣間見えるのである。
そして、彬の行動により、東海郵船Gに、再建への微かな光明が差すのである。
彬の提案を、義兄たちが承諾した事により・・。ー
・東海郵船Gを救うために、山崎瑛が考えた”救済策”の秀逸さの見せ方。
ー この映画では、複雑な会社間関係や再建方策を、ホワイトボードを上手く使って観る側に分かり易く説明する。見事である。
そして、山崎瑛の稟議書は、不動を納得させ、頭取(奧田瑛二)にまで上げられるのである。
観ていて、胸が熱くなるシーンである。
稟議書に押された、不動の印のアップが滲んで見えてしまったよ・・。-
<当初から、階堂彬が山崎瑛の行動、言動を見ていて度々言う言葉。
”お前は、育ちが良いよ・・。一度どんなところで育ったのか見て見たい。”
ラスト、総てが解決し、海が良く見える丘の上で、”アキラとあきら”が固い握手をするシーン。
そして、山崎瑛が常に首から下げているあの”小さなベアリング”が落ちた時に、階堂彬が、子供の時と同じように、ハンカチで丁寧に拭いて渡す姿。
今作は、非常に濃密な、胸が熱くなる人間ドラマである。
青春映画の旗手、三木孝浩監督の、絶妙な手腕に唸った作品でもある。>
ご返事遅くなりました。それぞれ立場があり、それぞれ利害は違うのですよね。しかしそれぞれに生活があり、人生がある。皆同じだと思いますよ。しかし、疎ましく思ったり理解がお互いに無いのがやはり人間なんですよね。映画のようにドラマチックな人生送りたいですね。ハッピーエンドに☺️
NOBUさん、コメントありがとうございました。僕は元れいすけ、ですよ。木村れいでカクヨムかいてます。僕は長く医療機関の事務系で働いてました。公的と民間の真ん中みたいなイメージです。メーカー勤務だったんですね。僕も視野が狭いです。銀行や、証券会社の社会的役割ってなんでしょうか。あまり僕にはわかりません。池井戸潤さんの作品はすべて大好きです。半沢直樹や、ルーズベルトゲーム、下町ロケット良かったです。
また映画評論に戻ってきました!
何のため、誰のため、という仕事の原点と、社内の様々な事情や人間関係から生まれる忖度やしがらみなどとどう折り合いをつけ、どう目的を実現するか。
どんなにIT化が進んでも、人間の判断が関わる以上これらの不合理は無くならないと思いますし、だからこそ達成感が生まれることがあるのも事実です。
スマートな効率化とヒューマンドラマは相性が悪い。だから、AIの活躍する時代には、不合理に価値を求めるAIが、人間ではないのに、人間ドラマの主役になったりするのですね。
こんにちは。カイドウ親族の関係性も見所でしたね。確かに涙するユースケ・サンタマリアのとこ良かったです。最後のベアリングがおちてハンカチで拭くシーンは、泣けました。