ハケンアニメ!のレビュー・感想・評価
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味わい深い人間ドラマに感動
【鑑賞のきっかけ】
本作品は、興行収入としては、今ひとつのようですが、映画ファンの間ではなかなか評判が高かったのと、原作者の名前を観て、鑑賞を決意しました。
【率直な感想】
<「辻村深月」が原作!>
彼女の現在の作家としての売りは、「直木賞・本屋大賞受賞」作家です。
でも、彼女のデビュー作は、「ミステリ小説」(メフィスト賞:講談社主催)です。
ミステリ作家の中でも、「直木賞作家」になれるのはごくわずか。
なぜなら、直木賞作品には、「人間ドラマ」が欠かせないから。
彼女は、ミステリの中でも、「心理サスペンス」が得意で、人間の細やかな心情から生まれる驚きや意外な展開のある作品が多い。
もちろん、その中で、人間ドラマがきちんと描かれています。
そこで、彼女の原作は未読でしたが、作風からして、人間ドラマを中心とした「心理サスペンス」の要素が入っているのでは、と感じ、鑑賞を始めました。
<作品のみどころは、深い人間描写>
本作品を、「ミステリ」と紹介している人は見かけないし、確かに純粋な「ミステリ」ではありません。
でも、「心理サスペンス」という視点で作品を鑑賞していくと、かなりの感動作になるのではないかと感じています。
冒頭、主人公の女性・齋藤瞳は、アニメ制作会社の面接で、「どうして、国立大学卒で県庁勤めているようなあなたが、当社を選んだのか」という問いに対し、「王子監督を超える作品を作りたいから」と答えます。
そして、「7年後」とテロップが流れ、本編突入。
新人監督である彼女の作品が、テレビで、王子監督復帰第1作と、同時間帯で放送されることになり、アニメ作品一騎打ちになっている状態で、物語は進行し始めます。
この冒頭の面接シーンは、物語の中盤以降、その続きがあったことが明かされます(ネタバレになるので内容には触れません)。
その続きには、2つのシーンがあるのですが、1つ目のシーンでは、彼女の深い心情が明かされ、これまでの彼女の行動原理が分かります(深い人間描写)。
もう一つのシーンでは、彼女を取り巻くある人物の本当の気持ちが分かるものとなっていて、その心情に驚かされることとなります(「心理サスペンス」の要素)。
この「深い人間描写」と「心理サスペンス」の根拠は他にもありますが、ネタバレになるので一例だけ挙げさせていただきました。
<見た目と全く違う物語>
この作品は、あらすじの紹介を読むと、アニメ業界の裏側を描き、その激しい競争で対立し合う、カリスマ監督と新人監督の物語に見えてしまうのです。
表面上は確かにそうですし、実際、題名の「ハケン=覇権」とは、アニメ業界のトップで、DVDなどの映像ソフトの売上第1位となることを指しているとのこと。
でも、この作品の主眼は、どちらが競争に勝つのか、ということではなく、主人公と彼女を取り巻く主要な登場人物たちの深い心情を「ミステリ」の要素を巧みに取り入れて、「味わい深い人間ドラマ」として描くことに成功していることだと思います。
<エンド・ロールにも注目>
作中には主人公が監督した「ロボットアニメ」と、カリスマの王子監督による「魔法少女アニメ」の2作品が、本当にテレビで放映されてもおかしくないような画質で、流れるシーンがいくつもあります。
そして、エンド・ロールを見ていたら、「劇中アニメプロット 辻村深月」の表記がありました。
そうなのです。この劇中アニメ2作品のプロットが、物語展開として、私が主眼と考えている「味わい深い人間ドラマ」と絶妙に交錯していくのです。
【全体評価】
正直なところ、「期待以上」の作品でした。
映画作品として、かなり出来栄えの良い作品だと思えるのですが、既に、上映各館での上映回数は減り、このままだとあと1~2週間で上映終了かも。
私には、幅広い客層で、受け入れられそうな作品に思えるのですが…。
何でもアゲル君・・・それ違法だから・・・
アニメ業界の裏側と奮闘する新人監督の願い。一つの作品に仕上げるにはたとえ1シーズン12話のTVアニメであっても想像つかないほどの人員と予算が必要。そしてまとめ上げる監督とプロデューサーの絆という点でもスタッフの人間関係には目から鱗が落ちるほどでした。脚本を絵コンテから作るという点も・・・
デジタルが主流となっている昨今のアニメ。昔のフィルム、手書きセル画の苦労はさらに厳しい状況だったと思うけど、CGが活躍してもスタッフとの打ち合わせなどの苦労が見えてくる。アメリカでは3DCGが中心となっているものの、二次元にこだわりを見せてくれる日本産アニメにも頑張ってもらいたいところです。
同じ土曜日の夕方5時という枠で、注目される気鋭の新人監督・斎藤瞳による「サンドバック 奏の石」と伝説の天才監督・王子千晴による「運命戦線リデルライト」の対決。劇中アニメもそれなりに惹かれてしまうし、視聴者やテレビ局の意向によって最終話も変わっていく過程など、興味深いところが満載。特にデジタル色彩のこだわりとかも・・・
魔法は現実じゃないけど、魔法を越えた何かを与えてくれること。大切なものを無くしても得るものがあること。瞳が幼い頃に良いアニメに出会えていたら・・・等々、リア充には理解できないであろうアニメの魅力についても語られていた。まぁ、アニメに拘わらずフィクションの中にこそ真理があったりするものだと思う。
もう一つ気になったのが、両アニメが放映された直後における人々の会話。高校生たちは大人以上に評論家のように語り合っていて、純粋に心に刺さったのは子どもたちだけだった。昔なら、学校で昨日見たTV番組が話題となるとき、高視聴率の裏番組をこっそり見ていると仲間外れにされた気分になったもの。今じゃ録画すればすむことだし、すぐに配信されるので両方視聴することができるけどね・・・個人的記憶では「ミラーマン」vs「シルバー仮面」「アイアンキング」とか。
そしてヒーロー、ヒロインが最終話に死亡する問題。子ども時代には「主人公は最後に死ぬかどうか」と話題にしてたものだけど、『鉄腕アトム』にしろ『あしたのジョー』にしろ、死んだかどうなのか曖昧にしていた。『巨人の星』だって本当なら星飛雄馬は死ぬ予定だった(高視聴率ながらも『宇宙猿人ゴリ』に視聴率抜かれた)。・・・ちなみに石川県では『巨人の星』は土曜の18:00からでしたが、裏番組では『ハレンチ学園』を放送していて、おいらは仲間外れの方へ・・・
アニメを愛する全ての人に刺さる渾身の一本
新人監督が自信をアニメ業界に導いたカリスマ監督とアニメの覇権を巡って死闘を繰り広げる本作。
自分の作品に対する思いを誰かに届けたいその一心で全員が持てる力全てを振り絞るあまりのかっこよさに目が離せなかった。
アニメ製作に直接携わるクリエイターがフォーカスされがちな中、プロデューサーやPR担当のアニメのあらゆる面で関わる全ての人間が一切の妥協を許さず、自分の想いを表現する熱量に圧倒され、刺さりすぎた!
新人監督の健気に信念を持って好きを貫く吉岡里帆の爽快さ、カリスマ故の苦悩や繊細さを存分に表現した中村倫也は映画の推進力を大幅に上げていた。
中でも柄本佑、尾野真千子の冷静だがうちに秘める圧倒的な熱さでアニメを支えるプロデューサー陣に心を奪われた。
クリエイター、アニメを愛する人への最高の愛とリスペクトが込められた作品!
素敵なアニメの欠片を拾おう
単純に楽しい!という映画ではない。
自分の仕事にもよるのかな。
クリエイティブな仕事をしている人にとっては自分の仕事を考えながら観てしまうから単純に楽しめる感じではなく色々考えてしまうかも。
映画大好きポンポさんも仕事のことは考えながら観たが、観た後に余計なものが削ぎ落とされたのでスカッとして良かった。
ハケンアニメは、チームワーク無くしてはいい作品が作れないことは分かっているけど、つい締切や大人の事情でそこそこのコンセンサスでやつっけてしまうことへの反省を突きつけられた気がした。
作中のふたつのアニメをもっとちゃんと観てみたいなと思いながらアニメの欠片を拾い集めて想像力で補ってプチ感動した感じでした。
スッキリした♪
"可もなし不可もなし…"な映画
なぜだか全く心に刺さらなかった…ホント、自分でもびっくりするぐらい(笑)
分かりやすいストーリーで、難しいものは何も無かったのに…。
なぜなんだろう?
良いアニメーションを作りたい…というのは分かるけれども…。
作り手の情熱とか、そういうものの描かれ方が、今ひとつステレオ・タイプな描写というか…台詞には熱い言葉が散りばめられて、もう満載なんですが…約2時間強、ほとんど傍観者のようにスクリーンを見つめていた。
ホント、心が動かず…笑
しかし、Filmarksでも評価は良いようなので、気になる方はどうぞ!笑
*柄本佑演じるプロデューサーが、唯一新鮮味のあるキャラでした。でも、…最後跳ねるところ…あれはいらんでしょ。キャラに一貫性が無いなと、思いました。なんか"詰め"が甘いな(笑)
*他に観たい洋画が2本あって、悩んだ末、評価も良かったこの作品を選んでみたけれども…やっぱり、こういう時に選ぶ邦画って、リスク高い(笑)…ちなみに、『ニューオーダー』『オフィサー・アンド・スパイ』と競合した(笑)…時間的なこと、映画館までのアクセス等々を考慮してのことだけど…こういう時は、ちょっと無理してでも、やっぱり"観たい"映画を観に足を運ぶべきだなと改めて思った…笑
ものづくりの心意気
アニメ制作の話だけど、ものづくりをする人全般の、必要とする人達に届けたいという心意気を感じる事のできる良い作品だと思います。
ただ、そのやる気に依存した長時間労働は日本の問題点だとは思うのですが、この映画はそれがテーマでは無さそうなので、目を瞑っておきます。
それで、この映画を観て一番届いて欲しいと思ったのは、「この世の中は繊細さのない・・・」のシーンかな。
あのシーンは多く子供たちに、今は刺さらなかったとしても、心の片隅にでも届いて欲しいと思った。
まあ、この映画を子供が観る事は少ないかもしれないけど。
人って、誰かが見ていてくれると分かった時、分かろうとしてくれると気付けた時、前に進む原動力になりますよね。
そんな人と人とのつながりが、しっかり描かれている良い映画ですね。
【個人的メモ】
制作進行 久遠明日美さん
知られざるアニメ制作の裏側
ものづくりにグッと
演出が気になる
面白い作品だとは思うけど、どうしても演出が気になってしまった。
具体的にはわざとらしいオタク台詞の多用。2,3か所なら気にならなかっただろうけどあまりにも頻度が多すぎる。オタクを描こうとした作品でありがちな演出でもあるけど、いつになったら効果的ではない演出だと気付くのだろうか。しかもこの手の演出の悪いところは、結果としてオタク的な人を一括りにして描いてしまうので、同じ属性の登場人物がフラットな印象になってしまう欠点まである。何よりも聞いているこっちが恥ずかしくなってしまう。
わざとらしいオタク台詞に頼らずに、映画「勝手にふるえてろ」のような言葉の端々や挙動からこの人はオタクっぽい人なのかなと観てる人に自然に思わせるセリフや人物描写だったらもっと自然に映画を楽しめたと思う。
誰が彼女にエクレアを渡すのか。
前半は感情移入し辛く乗れなかったが、トータルとしては丁寧な作りで良かったです。否定的な部分もありますが、とりわけ本作の後半の展開の腕力は凄まじく、生理的に感動させられてしまいました。
この話は「内向的な新人監督がチームの輪に入り、仲間と協力して自己実現を果たす」という話の、極めて真っ当なお仕事映画であり、その骨子を「エクレア」という小道具から考える。
主人公の吉岡里帆は新人監督。敏腕プロデューサーからは沢山の仕事を押し付けられ、スタッフからはクオリティよりもスケジュールを優先した(というように見える)提案を受けては捌いて、という忙しい日々を送っている。彼女が監督する作品は裏番組で天才監督、中村倫也が手掛ける作品と今期の覇権をかけて対決することになる…
序盤、吉岡里帆はスタッフたちからさまざまな提案を受けるが、すべて「絵コンテ通りで」という回答で跳ね除ける。製作チームとの連帯はなく、チーム全員が試写に向かう廊下でも1人で後ろから歩いていく。この序盤で彼女がチームから孤立している、アニメ製作において壁にぶつかっていることが窺える。
壁にぶつかるというのは具体的な画としても示される。帰り道電車から降りると足早にケーキ屋へ向かうシークエンスがある。彼女の好きなエクレアを買うためであるのだが、ここでは閉店時間に間に合わず、ガラスの自動ドアにぶつかることになる。
周りに振り回され、アニメ製作において壁に当たった彼女の求めるもの=エクレアは、本作では覇権や彼女の自己実現などのメタファーとも取れる。
その後も彼女はエクレアにありつくことは出来ない。打ち合わせや収録で事あるごとにケータリングのエクレアに手を伸ばすが、敢えなくプロデューサーの柄本佑に先を越されてしまう。
周囲から孤立して、フラストレーションが溜まった吉岡里帆は突然現れたライバルの中村倫也からの助言に従い、演技力の無さから厳しく当たっていた主演声優と和解する。この和解のシークエンスの頭で彼女はガラスの扉をこじ開ける。これはケーキ屋のガラスの自動ドアにぶつかったシーンの対比であり、吉岡里帆はアニメ製作の現場でぶつかった壁に対して、チームの仲間に心を開くことで乗り越えたことを意味する。
彼女はその後多忙なスケジュールから体調を崩して倒れてしまう。
救護室で目を覚ました彼女に対して、プロデューサーの柄本佑が声をかける。彼の手にはエクレアがあり、それを彼女に渡す。そして今まで山のような仕事を振っていた理由を語る。
吉岡里帆は他社から誘われており、前途有望な彼女が退社する前にアニメ作家としてなるべく多くの経験をさせてあげたかった、というのである。(最初から伝えとけとも思う)
上の世代のメンターから、新しい世代へと知識や経験を継承することをエクレアを渡すというアクションでも表現されている。今まで彼女からエクレアを取り上げ続けてきた柄本佑がついに渡したエクレアは、彼女の成長物語はここで完成していることを表しており、その後の展開では覚醒した彼女がチームの仲間と協力してアニメ製作を行うことで自己実現を達成する。
上記の物語において小道具としてのエクレアが演出上重要に扱われている。この丁寧な作劇が後半のアゲ展開を形作っており、そこに感動しました。
以下、個人的な不満。
前半は各キャラクターに感情移入することが難しかった。これは映画の状況説明の為の仰々しい描かれ方が自分に合わなかった(対立構造を明確に打ち出す為のトークイベントのシークエンスとか…)こと、キャラクターみんながアンガーマネジメントしない系の作劇が古くみえたこと、現実の労働問題という視点をオミットして一般化されたお仕事映画として描かれていることが腑に落ちなかったからだと思う。
とりわけこの現実の制作現場での労働問題、ないしは搾取構造を無視して、いわゆる現代のアニメの現場を主題とした映画を作るのは不誠実だと思う。エンタメ映画なのだからこのテーマをがっつり取り扱えとまでは言わないが、深夜までの残業や無理なスケジュールを気合と根性で乗り切ることに対して美化するだけではなく、批判的な視点を入れることは出来たと思う。
2015年刊行の原作で映画制作にも時間がかかるので仕方ないけど、今見ると業界の描かれ方はちょっと前かも…と感じる。テレビの視聴率で対決して、円盤の売り上げを競い、配信サービスもほぼ出てこないのは、それだけ業界も変わったとも言えるけど、ちょっと古い気もする。
(特に女性への)結婚観が古い。最後のタクシーのシークエンスはキモくて、なんか可笑しみがあった。「俺が結婚してあげてもいいけど。」
作品前半で吉岡里帆がチームから孤立してアニメ作っているような描写として「絵コンテ通りでお願いします」というセリフがあるけど、後半で対比としてチームのメンバーの意見を作品に取り入れるシーンがあっても良かったと思う。主演声優に「最後のセリフはお任せします」というシーンがあり、素晴らしかったけど、脚本家や編集、制作進行の意見も聞いてあげて…
小気味良いテンポと清々しい感動
いろいろガチだ。
派遣会社から来たアニメーターがやらかすコメディだと思ってたんだけどww....ぜんぜん違ったww
イケメンわがまま天才アニメ監督とその手綱をにぎる伝説のプロデューサーvs元公務員の新人アニメ監督と凄腕冷徹プロデューサーの同時間帯のアニメ視聴率対決の話し。
別に凄い展開とかはなく業界アルアルのエピソードだけで2人の監督がプライドかけてガチで良い物を作り出そうとして成長し、スタッフの協力を得て努力してそれを形にして行く姿を描いている。未読だが、たぶん原作が良いのだろうかなりエモい。
話に出てくる二つのアニメも声優もガチ高レベルの本物。たぶんそれに呼応する形で撮影部も頑張っている。本編内のアニメと比較されちゃうからヘタな絵撮れないよね。役者達4人の熱量も高い、私は特に男性部が印象に残った。天才と呼ばれた男の努力とプレッシャーを中村。沈着冷静、売る為なら手段を選ばない柄本、彼のジャンプ長塚京三のウイスキーのCM思い出したわ。
あとアニメ業界はまだフィルムの名残でラッシュ試写って言うのね。
かなり胸熱な作品でレビューも高評価なんだが、、、、見終わったあと日本のアニメや映画製作者の薄給について考えずには居られなかった。良いものを作りたい、前へ出たい!そんな若者のやる気を搾取してこの二つのブラック業界は成り立っている。
中国アニメーターに比べて日本アニメーターのギャラは半分以下だという記事を最近見た。日本の映画監督もそれだけで食えてる人はほとんど居ない。
欧米の監督のようにプール付きの家に住む事など夢のまた夢だ、、スタッフのギャラなど押して知るべし。
この映画を見て業界に入る人達の事を考えると悲しくなる、、、搾取構造、日本の暗部である。
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