ハケンアニメ!のレビュー・感想・評価
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視聴率争いが軸なのはおかしい
ハケンアニメという言葉があるんだね。
ある一定期間において一番ディスクが売れたアニメのことを指すらしい。
しかし物語において視聴率争いを2社?二者?で競い合うという設定に違和感を感じる。
確かに追い越せ追い抜けという思いはあるとは思うけど。
本来競い合うものでないものを争わせるという感覚がイマイチズレている気がする。
例えばこれがテレビ局や制作会社の経営者であれば分からなくもない。
それでも視聴率が1%2%で一喜一憂するものでも無いはずだ。
そこが根本的に物語のリアリティを感じさせないのだと思う。
また、2社で描かれているアニメ作品『サウンドバック』と『リデルライト』の内容が全く
分からず、何となく盛り上がりそうなシーンを流してあたかも感動させる感じがどうにも
受け入れがたかった。ある程度ストーリーを組み立てて見せないと、
最終回で無理やり盛り上げさせようとしても視聴者は何のことかわからず
置いてきぼりにさせられた感じが否めない。
また作中無意味に感動させようとするセリフが多用されているが
日常においてそのようなシーンは滅多にあるわけでもないのでしらける。
ただアニメ会社の監督がどのような立ち位置かがわかり見ていてちょっと苦しくなったな。
商品企画をやっていた自分としては自分のアイデアを商品にするまでには色々な
人に説得を試みたり、修正をお願いしたりと、ある意味商品作りの監督という立場でありながら
周りの人に気を遣ってお願いしなければならなかったからだ。
主人公の斎藤監督はまさに新人で他の各部署の人々が先輩であり、修正や複雑なお願いは
頭を下げてお願いする姿は自分のしてきたことと非常に重なり胸が苦しくなる一面もあった。
なのでこの作品においては2社間の視聴率バトルより新人監督がどのように立ち回り、
何を犠牲にして作品を作り上げていくのかということをもっと掘り下げて描いて欲しかった。
なんか安っぽいテレビドラマのスペシャルを見せられている感じがしたなあ。
必要以上に元気の出る作品。
内容は、テレビアニメ業界の同時シーズンのトップ視聴率やトップ人気(覇権・ハケン)を争うアニメ製作者側の仕事映画🎬其々のアニメーションに向き合う姿勢や価値観に違いがあり、すれ違いながらも総合芸術として皆が一丸となる作品作りに一抹の感動を得ることの出来る作品。印象的な言葉は、『あなたがあの子達のお母さん(生みの親)なんですね?!』神原画マン憧れの監督と初めて対峙した場面。この場面で原作では、凄く感動した事で期待していたのですが心情表現が淡白過ぎて思いが伝わらず残念だった事が記憶に残りました。印象的な場面は、やはり行城プロデューサーの影の応援です。あまりに斎藤監督との年齢差が近くて驚いたのと、途中から行城擁護に舵を切る心の機微が伝わりにくかった様に感じました。行城も冷たい表現しながらも温かさが滲み出てるのが残念でなりません。やはりもう少し年齢的厚みが必要だった様な気がします。物語全体としては時代の流れが急激に変わる現代で表現の混雑したオーディエンスの表現は統一性を欠き微妙で難しさを感じました。原作が10年前でそれを考慮すれば多少の違和感の干渉になったやもしれません。兎に角アニメーションという世界のある一つの裏側を表現したという事で、アニメーションに関わらず人の間として一つのモノを作り上げるには好き以上の気持ちが必要なのだ残酷な世界で生き延びるのは困難を極める。その解決方法の一つを見たようで元気の出る素晴らしい作品でした。
覇権‼︎
主人公が後半全員で歩く時前半と違って先頭を歩いていたのがすごい心に残ってる。
エクレアめっちゃ食べたくなる。
最初はあまり上手くいかなかったけど最後は自分の意見を言って最高のアニメを完成させた時すごい感動した。
DVDの予約枚数が1位で行城さんの喜び方がすごい可愛かった。
覇権という言葉を初めて知ったので自分もこれからアニメを見るときはそういうのも調べようかなと思った。
2023年4月30日2回目の視聴!
•銀座コージコーナーのエクレア食べながら見た!自分はいちごの方が好きだった!
•リア充、リアル以外充実していない。
•魔法はないかもしれないけど、アニメは魔法を超える力を与えることができる!
•失った先にもハッピーエンドはある。この言葉大好き!
•主人公が感情を抑える時、顔に力を入れるのすごい良い!
ハケンって派遣じゃなくて覇権だったんだ!
国立大学出て7年で監督になる。司法書士の本が勉強机に並べられていたが、大学は何学部なのだろうか?
公務員辞めて、アニメに携わるって、そもそも、甘くないか?偏差値の高い公務員が、上から目線で描いたアニメなんて面白い訳がない。
アニメは総合芸術である。監督や制作なんて、本当はブルシットジョブだ。兼任も出来るし。JUNKHEAD見たく数人で作る場合もある。
言うまでもないが、芸術を市場経済に乗せて競う事が間違っている。芸術性は視聴率ではないし、別の作品と競うものでもない。
見れば、残り20分位まで、仕事をせずに悩んでいるだけだ。
日本のアニメーションって世界に通じるって言うが、芸術的に世界に勝っている訳では無い。
宮崎駿先生も手塚治虫先生もコミック(漫画)が凄い。最近はアメコミとか騒がれるが、日本の漫画は世界には類は無いと断言できる。
追伸 歴史に残るアニメの名作は『ある街角の物語』『少女終末旅行』かなぁ!だから、少女終末旅行の第二部を早く見たいと思っている。
覇権
アニメがこんなに多くの人の集団作業であることを認識。吉岡さんは堂...
アニメがこんなに多くの人の集団作業であることを認識。吉岡さんは堂々の主演女優だと思った。瞬発力と集中力もある。柄本さんはかっこいい。脇役も揃ってた。ものを作る現場への愛に溢れてた。ED後のラストシーンがいい。
行城さんが良い感じにズルい
原作は2014年発行、確かに当時はオリジナルアニメが多かった記憶はあるが今は人気原作漫画をどれだけクオリティ高く表現するか、視聴率よりも配信やSNSの時代に移行している。
当時のアニメ業界は露骨に異質でプロフェッショナルな集団、それを束ねるのが監督でありプロデューサーで命を削るよな職業なのかと感服する。
今や働き方改革、コロナ禍での進捗変動があるので製作の仕方は大分変わってはいるのではと思うものの、夢見る世界を作り出す裏側の演出がリアルで先が読めない展開が純粋に楽しかった。
吉岡さんや中村くんの熱演も含め特に行城役の柄本さんのEDロール後のリアクションが個人的に後味が良く激しく同意する、上手くまとめられた脚本に爽快感のある終幕に万歳。
クリエイター必見!
原作は辻村深月さんの小説。
原作は
1.王子監督と有科さんの話
2.斎藤監督と行城の話
3.並澤と宗森の話
とあって3が一番長い。
これをうまく斎藤監督を中心にして映画としてまとめてあげた脚本がまず素晴らしい。
原作から時間が経って、今はBDの売り上げが重視されないとか、覇権という言葉が一般的ではないとか、深夜アニメが主流で視聴率が重視されないとか小さな問題はあるが、この映画の世界ではこうなんだろうと考えれば問題ないと思う。実際のアニメ制作の現場ではエンタメにしにくい。映画はフィクションで楽しむものなのだから。
アニメ制作の現場というと『SHIROBAKOが』あるが、SHIROBAKOは制作進行の目線で進むので、むしろ映画製作として『映画大好きポンポさん』の方が比較しやすいと思う。ポンポさんは実写の映画制作をアニメで表現した映画で、本作とは真逆。
ポンポさんとの最大の違いは本作ではライバルとの対立構造にしたところで、それによって物語に厚みが出たと思う。単純に悪いやつとか、足の引っ張り合いではなく、それぞれの陣営が相手に敬意をもって、発破をかけながら対立しているところもいい。
作中に制作するアニメにも手を抜かず、実質3本分の映画を観たような気分にもさせてもらえる。2022年を代表する邦画の傑作だ。
2022 187本目
新人アニメ監督が憧れの天才監督・王子千晴に戦いを挑む熱戦!!
はじめて監督を任された斎藤瞳(吉岡里帆)の情熱・熱意・頑張り・必死さ。
それがバンバン暑苦しいほど伝わる映画でした。
アニメ業界の人たちは「人の心に伝わる作品」を届けるために、
寝食を忘れて、プライベートを犠牲にして、頑張ります。
なんでそこまで熱くなるの?
と聞きたくなるほど《一生懸命》
そこが人を動かし山を動かし《天下=覇権》を取ることなのですね。
アニメ監督の仕事の中身がかなりリアルに描かれています。
アニメは日本を代表する芸術で今や2兆円産業とか。
斎藤瞳・28歳
公務員を辞めてアニメ制作会社大手に転職。
7年目にして初監督の指名を受ける。
(演じるのは吉岡里帆。頑張り屋の代名詞のような方です)
テレビアニメはワンクールに50本もの新作が製作される。
その中でトップを取ったのアニメを「覇権アニメ」と言う。
(覇権とはあまりにも大袈裟な形容だが、原作は8年前、
(この映画の企画は7年前で、当時は覇権が普通に使われていたが、
(今ではその言葉はあまり使われていないそう)
斉藤瞳の仕事ぶりを見ていると、アニメ監督とは
かなりの権力者だと知れる。
スポンサーとテレビ局の次に偉いのだ。
ざっと仕事内容をあげてみます。
1、脚本と絵コンテ制作
(この設計図が一番大事だと思われます)
2、各関係者との打ち合わせ
3、レイアウト
4、原画チェック
5、カッティング
6、アフレコの立ち合い
そして更に統括プロデューサーの行城(柄本佑)が雑誌の宣伝やグラビア撮影などの
雑用(都、瞳は思っている)を多々入れるので仕事は無限大に多くなる。
まさにオールマイティーを要求される最高責任者が監督
・・・なのですね。
責任者って下で働くスタッフの信頼を得て、彼らがいかに気持ちよく、
斎藤監督のためなら無理難題も聞きたくなる・・・
そういう存在に瞳が成長して、信頼を得るまでの過程が
後半で怒涛のように描かれる。
瞳が監督らしくなって行く様子が素晴らしくて引き込まれました。
そして瞳が命を賭ける「劇中アニメ」のクオリティの高さに目を見張りました。
原作者の辻村深月さんが、
『奏の石 サウンドバック』と、
『運命戦線 リデルライト』の、
12話2作品のプロットを作成して東映のプロデューサー陣に渡すほどの
意気込みだったそうです。
なので
「サバク」は谷東監督。
「リデル」は大塚隆史(絵コンテと演出も)
という2人の気鋭の実力者とスタッフが作り上げた。
(まったく何という贅沢な作品なのでしょう)
「サバク」と「リデル」の作画の違いにも注目。
「サバク」のトワコは日本の子どもそのもの。
「リデル」の少女戦士は無国籍の美少女系。
そして更に「ラスト」
“主人公を殺したい”と、熱望する王子千晴(中村倫也)。
そして「サバク」のラストにも一波乱が起こる。
そのゆくへは如何に?
(このあたりの対比が映画に厚みが増しました)
本当の意味で「我を通した」のは千晴か?
はたまた瞳か?
覇権をとる意味は、結局は一等賞より、良い作品を届けたい・・・
10年後にも残っている作品。
だが良い作品と言われる前に売れる作品、視聴率のとれる作品もまず必至で、
このあたりにジレンマがある。
覇権(金メダル)をとってはじめて監督として認めてもらえる。
王子千晴は瞳の人生観を変えた「ヨスガ」の天才監督。
その憧れの人に「覇権をとります」と勝利宣言。
瞳は世間知らずの怖いものなしに見えます。
ラストに向かって自他共に「天才」を自認する王子千晴が、
実は普通の男の素顔をさらしてきたり、
「努力」と「頑張り」「ど根性」に見える斎藤瞳が、
真の粘りとヤル気で《才能》を開花させる・・・図式も見えてくる。
「アニメ」そして「映画」「音楽」も、「文学」も、
「人はパンのみにあらず」のたとえ通り、
どれだけ救われ、どれだけ人生を豊かにし、生きる力になっているか………
改めて考えさせられました。
中村倫也、尾野真千子の実力と愛すべき存在感。
神作画の小野花梨。六角精児。古舘寛治。
声優の高野麻理佳。
ダントツの柄本佑。
素晴らしい奇跡のコラボレーション。
☆そうそう、ラストのラスト。
エンドロールの最後の1秒まで見てくださいね。
(真の勝者がわかるかも……)
何やら中途半端な映画だった。
結局のところ、斎藤瞳監督が、安定しているという公務員の職を投げ捨てて、アニメ界入りしたのは、なぜだったのでしょうか。
確かに、それらしいシーンは、ありました。「自分のような子供の心にも届くようなアニメを作りたい」と幼い頃に思ったと。
だったら、とうして王子監督と覇権を競う必要があるのでしょうか。
たとえ覇権を取れなかったとしても、自分で得心のいくようなアニメが作れれば、斎藤瞳監督としては、本望だったはずですから。
そして、子供の心に届くようなアニメを作りたくて斯界に飛び込んだのであれば、作品の構成としても、その思いを語る対話シーンなり、モノローグ的なシーンが、あっても然るべきだったのではないかと思います。そして、そこで、斎藤瞳監督がアニメにかける情熱が、ふんだんに語られたはずではないかと…。
そんなこんなで、評論子としては、いわゆる「お仕事映画」としてみても、本作は決して秀逸な出来とは言えないように思います。
(その実は、公務員の世界ではうだつが上がらないので、ひと山当てるために、畑違いのアニメ界に飛び込んだとみるのは、穿ち過ぎ?)
どうもに…あまりスッキリしない一本でした。観終って。評論子には。
<映画のことば>
「俺たちは監督のアタマの中を現実にするために、ここに来ている。」
「モノづくり」が重視されてきた今までは、デザインやサービス、アイディアは、いわゆるハコモノ(製品)の「おまけ」でしかなかったというのが現実だったと思います。
しかし、これからの日本は、世界的に優位のあるアニメなどの知的創造の産物を世界に売っていく「知財立国」を目指すということですが。
それならば、労働条件の面など、その製作現場を担う上記の「ことは」のような人材を大切にしないと成功は覚束ない…そう考えるのは、評論子だけではないと思います。
清々しい一本
熱意の邁進
第14回TAMA映画賞最優秀作品賞受賞作。
Amazon Prime Videoで鑑賞(レンタル)。
原作は未読。
近所の映画館での上映がもたもたしている内に早々に終わってしまったので、今回待望の鑑賞でした。いやぁ、面白い!
「誰かに刺され!」を合言葉に邁進した人々の熱量に圧倒されました。ものづくりとは斯くあるべきだな、と…。熱意と想いが無ければ、何も成し遂げることは出来ない。
多彩な登場人物たちの織り成すドラマがとにかく良い。アニメ好きで無くとも、仕事に情熱を持って臨んでいる人や、夢や目標に向かって全力で取り組んでいる人には大いなる共感を呼ぶだろうし、彼ら彼女らの熱さには自分の中にある何かを奮い立たせてくれる力を感じたので、私自身勇気を貰いました。
私は、工事の現場監督の仕事をしています。人を動かす際には、自分の中に確固たる想いがあり、尚且つそれを伝えられないと何も前に進まないし、誰も従ってくれないと云うことを実感して来たので、主人公が最終回の変更をぶち上げた時、その想いに応えようと皆が動いてくれた瞬間にめちゃくちゃ感動させられました。仕事は、人の想いで成り立っている。
※修正(2024/03/04)
想定内
届け、突き刺され。苦闘の果てに掴む“ハケンアニメ”!
市場規模は約2・5兆円。国内のみならず海外でも絶大な人気を誇り、今や日本を代表するカルチャー、アニメ。
現在“アニメ戦国時代”と言われるほど1クールだけでも多くのアニメがしのぎを削るが、その中で勝ち抜くのは僅かに限る。年間だったら尚更。『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『SPY×FAMILY』(←第2クール始まったね♪︎)…。
だが、作り手の情熱に変わりはない。
彼らが目指すは、最も成功したアニメに贈られる称号、“覇権(ハケン)”。
ライバル作、現場内、己との闘いの果てに、勝ち取れ!
漫画業界を舞台に新人漫画家コンビと天才漫画家のバトルを描いた『バクマン。』があったが、本作はまさに“アニメ版”。
公務員から転身した新人女性監督、斎藤瞳。若く見た目も可愛く、モデルは山田尚子監督辺りかな…?
転身を決めた理由は、ある一本のアニメとの出会い。
そのアニメの監督は、“天才”と呼ばれる王子千晴。革命的なアニメを作り、一切の妥協ナシ。唯一無二の才を持つ監督は各々いるが、ここは敢えて庵野秀明とでもしておこう。
奇しくも同クール同時間帯で対決。瞳にとっては念願の監督デビュー作。王子にとっては8年ぶりの監督作。
構図としては瞳が主軸で、新人が憧れの天才と同じ土俵に立つ。
それは光栄な事であり、苦闘。
天才も然り。天才故の苦悩。
瞳のプレッシャーは計り知れない。
他業界からの転身。新人、女性…その肩書きだけで終わらせない。
遂に念願の監督デビュー。並々ならぬ意気込み。
が、もしコケたら…? 次作は無いかもしれない。
全身全霊を注ぐ。
ところが、なかなかスタッフや声優に伝わらない。
そんなんで視聴者に伝わるのか…?
注目の初回視聴率は同率も、第2話以降は差が開き始める。
これが天才との実力や才能の違い…?
視聴者からも手厳しい意見。人気や注目を集める為、タイアップやメディア露出など、本来のフィールドから離れた事も。
暗雲立ち込める…。
一方の王子。
その名の通りのルックスで、天才。人気も注目も瞳とは月とすっぽんで、作る前から“傑作”。
いざ始まると、期待通り。会社も世間も満足。ブランクあったとは言え、天才王子健在!
…そう、何もかも期待通りで想定内。
本人はそれに満足も納得もしていない。
それをぶち破る。安易なハッピーエンドなど作らない。
物語をどう終わらせるか。以前果たせなかったアイデアを再考。
主人公たちを死なせる。
だが、それはタブー。何故なら、放送枠は子供も見る夕方枠。そこで主人公たちの死というバッドエンドなど絶対NG。会社や視聴者はお決まりの感動ハッピーエンドを求めている。
最終回の方針が決まらぬまま。天才の発想は世間の常識に理解されないのか…?
それぞれの闘い、悩み。
二人の関係性がよくある意識し合って刺激し合って…ではなく、多少顔は合わせるがそれほど直接的に関わらず、あくまで両極端のライバル設定なのがいい。
確かに制作中に他の作品や監督に気を取られていたらプロじゃない。
自分の作品に全集中。
ライバル作と闘いつつ、関わるスタッフ/声優や己との闘いがメイン。
二人の若き監督を主役に据え、製作に関わる周りやプロセスも挿入。
デート中でも仕事を依頼される“神作画”アニメーター。
過密スケジュール、突然の展開変更…無理難題に追われる作画スタジオ。
編集のぼやき、色彩設定のこだわり、構成ライターとの相違…。
世間一般の人気と視聴率だけの上役、要望を聞き入れてくれない製作進行の陰口…。
舞台地の市役所職員はアニメに疎くてPR活動。
声がイメージと違う。客寄せのようなアイドル声優。ダメ出し、ダメ出し、ダメ出し…確執深まる。
強いて言えばアニメに欠かせない音楽や主題歌の描写が無かったのは残念だが、アニメ製作に関わる皆の群像劇だ。
中でもそれぞれのチーフプロデューサーはもう一人の主役。
瞳側の行城。ビジネス優先。作品を商品として売り出すなら、監督の意向に反するタイアップやメディア露出も厭わない。
敏腕だが、辛辣家。瞳ともしょっちゅう対立。
だが、的を射た発言も多い。100の方法で一つでも視聴者に届けば成功。
確かにそうだ。大勢が関わる作品を失敗させられない。その為には自分が悪者になってでも成功させる。それがプロデューサーの仕事。
行城にも彼なりの信念がある。ある時瞳もそれを知って…。
対立/衝突からの確執を乗り越えての関係性。
代打ではなく、4番。新人監督にとって、これほど嬉しい言葉はない。
王子側の有科。
いきなりの失踪など、王子の言動に振り回される。
明らかに王子は一匹狼。周りのスタッフも近寄り難い。
その間に入り、円滑に進めるのが、自分。
それもこれも、信じているから。
その為に王子の要望(主人公の死)を上役に頭を下げて直談判。スタジオに頭を下げてまで王子の無理難題を聞き入れて貰う。
それぞれの監督とプロデューサーの対比とドラマは必見だ。
本作は信頼のドラマだ。
最終話を巡って覚悟を決めた王子と有科。
製作当初はスタッフ/声優と溝が深かった瞳。徐々に何を作りたいか、発言力も強くなっていく。
瞳も突然の最終話展開変更。スタッフらは一丸となって監督の要望に応える。
監督がブレなければ製作チームもブレない。監督はわがままなほど自分の信念を貫いていいのだ。
譲歩も必要。ダメ出しばかりしていた主役声優。彼女の本作への思いを知る。自分の意見ばかり押し通したあまり視野が狭くなり、相手を受け入れようとしていなかった。
己がブレず、相手を受け入れれば、自ずと信頼は生まれてくる。
第1話ラッシュでスタッフたちの最後尾でおどおどしていた瞳。最終話ラッシュではスタッフたちの先頭に立って歩く。
紛れもない“斎藤組”。
全ての人へ贈るお仕事奮闘と成長のドラマでもある。
キャストたちも適役。
吉岡里帆を女優としてしかと認識したのは『見えない目撃者』だが、本作でさらにステップアップ!
序盤の新人監督の頼りなさ。多くの苦境を乗り越え、若き才の誕生。
それらを喜怒哀楽たっぷりに体現。
孤高、天才でありながらもナイーブ。中村倫也も常人離れの佇まいがハマってる。
小野花梨、前野朋哉、古館寛治、徳井優、六角精児らが好サポート。
尾野真千子は言わずもがな。だけどやはり個人的にVIPを挙げたいのは、柄本佑。
巧い。ハマり過ぎ。出る度に場をさらう。
序盤の憎まれ役から一転、このキレ者プロデューサーになら全信頼任せられると思いたくなるほど。
親父も名優なら、息子も同世代屈指の名優だ。(最近、『真夜中乙女戦争』でも同じ事書いたような…)
個人的に今年の邦画の助演男優は強者揃い。現時点で印象に残ったのは…、『前科者』の森田剛、『シン・ウルトラマン』の山本耕史、『流浪の月』の横浜流星。そこに、本作の柄本。
この中で“覇権”を勝ち取るのは…?
元々アニメが好きで、ドラえもん映画の脚本にも携わった事のある辻村深雪の小説を、自身も企画から関わって7年の歳月をかけて映画化。
吉野耕平監督の作品を見るのはこれが初めてだが、見事な手腕。
題材、演出、構成、展開も素晴らしいが、一際クオリティーを高めているのが、劇中劇のアニメ。
斎藤瞳監督作は、『サウンドバック 奏の石』。少年少女たちが“奏”と呼ばれる石に音を吹き込む事で変形するロボットに乗って戦うロボット・アニメ。戦いに身を投じていく子供たちは『ガンダム』や『エヴァ』のようであり、王道的な展開から伏線張り荘厳なスケールへと展開していく。
王子千晴監督作は、『運命戦線リデルライト』。自らの魂の力で操作するバイクレースで戦う魔法少女アニメ。ポップな雰囲気からダーク展開になっていく『魔法少女まどか☆マギカ』的な…?
単なる設定に留まらせず、実際にOA出来る1クールのアニメシリーズを2本製作。故に映画化にも時間がかかったとか。
しかも、一流のスタッフ/声優を器用。本当に声優は、人気ビッグネーム!
登場人物たちの台詞の中にも人気アニメの名台詞オマージュ。ニヤリとさせられる。
今現在アニメは、配信などで気軽に見られ、BD売り上げやSNS人気で支えられている。
本作では人気や対決の構図を、視聴率争いで。昭和のTV局かよ!…とつい思うが、ここは敢えて数字で表される分かり易さ。
放送直後の反応や視聴率争いの行く末をSNSでバズる現代的描写も勿論。
でも、放送を日本中リアルタイムでTVやスマホで見たり、そこら辺の過剰描写がちと違和感…。
それが引っ掛かっても、上々!
かつてアニメはオタクのものであり、製作側もよほどでないとスポットライトが当たる事など無かった。
日本のアニメ製作現場は過酷。長時間拘束で、賃金も安い。
その昔アニメや漫画オタクが少女殺人事件を起こし、偏見や白い目で見られる。
今は世界へ誇れるカルチャーとなったが、日本のアニメ文化も苦難の連続。
それでも我々はアニメに魅せられる。それは何故…?
かつての自分に魔法をかけてくれるような、人生を変えてくれるようなアニメを作りたい。今の子供たちへ。かつての自分がそうであったように。
その為に魂を削ってでも。自分が天才ではなく凡人なら、プライベートや睡眠の時間を削ってでも。
だから作り手はこだわる。革命を起こす。
日本アニメの礎『鉄腕アトム』。長きに渡って愛され続ける『サザエさん』『ドラえもん』『ドラゴンボール』…。ジャンルの金字塔とでも言うべき『機動戦士ガンダム』。常識をぶち破った『新世紀エヴァンゲリオン』『魔法少女まどか☆マギカ』…。社会現象となった『鬼滅の刃』。そして、唯一無二のジブリ作品…。
子供も見るアニメで描かれる死。『フランダースの犬』や映画クレヨンしんちゃん『アッパレ!戦国大合戦』。それらはただ悲しいだけじゃない。私たちの心にどれほど響いたか。
誰かの心に届け。
突き刺され。
作り手の真摯な思いは必ず届く。
例えそれが今すぐでなくとも、10年後でも。
日本の数々の名作アニメがそれを物語る。
そしてそれは、本作自体が実証した。
残念ながら公開時は強力ライバル作に押され、週末興行ランキングTOP10入りを逃す不発。
が、見た人は熱く、強く支持。この声は本年度の邦画のBEST級の一つと言ってもいいほど。
どんなに批判受けても致し方ない。私も劇場ではスルーし、レンタルでやっと鑑賞。
この胸に届き、刺さった。
吉岡里帆の役者色が顕著になった
イマイチ伝わってこなかった
アニメ業界の内幕を描くという素材は抜群なのに、それほど面白いとは思いませんでした。
全体的にストーリーのテンポがよくないような印象を受けた(とくに序盤に)。
もっと疾走感のようなものやワクワクしたものを期待していたのですが、意外と物語の展開が地味に感じました。
アニメ制作に関わる人々の奮闘する姿は描かれているのだけれど、どうしたわけか、イマイチ熱が伝わってこなかったです。出演者はなかなかの面子がそろっているのですが、脚本のせいか、カット割りが悪いのか、画(映像)が良くないのか、はたまた東映作品だからか、とにかく、あまり感情移入できなかった。もっとうまく主人公を引き立てる人物――キャラの濃い、愛すべき脇役というような人物――が登場しなかったのも理由のひとつかもしれません。
なんかスクリーンを見つめながら、「映画づくりってホントにムズカシイな」と考え込んでしまいました。
今回もエラそうなことをいろいろと書きましたが、映画の入場料は、こういう好き勝手な感想を述べる権利を買うためのお金でもあると僕は思いますので、どうかお許しを。
全404件中、81~100件目を表示