劇場公開日 2022年7月1日

「自分の選択は、自分の進む無限の彼方へ」バズ・ライトイヤー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5自分の選択は、自分の進む無限の彼方へ

2022年7月7日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

興奮

バズ・ライトイヤーと言えば、ウッディと共にアンディ少年のお気に入りのおもちゃ。
仮面ライダーやウルトラマンのおもちゃみたいなもの。
つまり、モデルがある。
『トイ・ストーリー』の作品世界の中で、子供たちに人気のTVアニメ。
それを、実際に映画化。
それが、今回の“バズ・ライトイヤー”である。

なので、『トイ・ストーリー』シリーズのおもちゃのバズとは全くの別物。
『トイ・ストーリー』と話が繋がってて、おもちゃのバズが宇宙で大活躍!…なんてのを期待したら、アレレレレ~!?
おもちゃじゃなく、人間バズ!
性格も違う。
声も違う!
だから『トイ・ストーリー』とは完全切り離して、ヒーローが活躍する宇宙冒険活劇として見るべし。

もっと子供向けかと思ったら、なかなか本格的なSFアクション・アドベンチャー。
未知の宇宙、未知の惑星。
“相対性理論”を織り込み、時も遥かに飛ぶ。
幾多のピンチ、困難…。
それらにぶち当たりながらも、我らの“スペース・レンジャー”は…?

自身のミスにより、未開の惑星に足止めを食らってしまったバズ。
仲間や大勢のクルーの為に、この星から脱出し、地球に帰還しようと手段を探す。
やっと突破口を見出だし、何度も何度も挑むが、文字通り時だけが過ぎてゆく…。
スペース・レンジャーの任務。…いや、自分自身の責務。
必ず、皆を助ける。が、失敗の連続…。
揺るぎない正義感の中に、苦悩も…。

時が流れていき、別れと出会い。
パートナーのアリーシャ。相手が何を言うか分かるほど、理解し合い、支え合い、信じ合っている。
恋愛関係はなく、欠けがえのないパートナーであり、盟友という関係がいい。
バズのお馴染みのあの台詞。これ実は、意気を高揚させるアリーシャとの“フィンガー・コンタクト”。『トイ・ストーリー』の時より奮い立たせるものを感じる。
バズがミッションに何度も挑んでいる間、アリーシャは惑星に仮設した基地で皆をまとめ、率いる。
自身の職務を果たすと共に、家族を持つ。愛するパートナー、子供、孫…。
“その時”が訪れるまで、自分の人生を全う。思わぬアクシデントに見舞われたが、この地で築いたものは幸せだった。
一方のバズは…。不可能なミッションに盲目的に挑み続ける。気付けば、大切な人たちを亡くし…。司令官も変わり、このミッションは中止。目的を失い、残ったのは孤独…。
中止直前、ミッション成功の希望。逃走し、飛んだ先で出会ったのは…
アリーシャの孫、イジー。祖母にそっくりだが、正式なスペース・レンジャーではない。
彼女と行動を共にする、何かと失敗をやらかすモー、仮釈放中のダービー。問題だらけの面々。
そんな彼らとやむを得なく難ミッションに挑む事になる。
突如現れた巨大宇宙船を破壊する。
行く手を阻むロボット軍。それを率いるは…。

『トイ・ストーリー』とは全くの別物だが、知ってればこそのお楽しみもある。
バズと言えばのあのスーツ。おもちゃとして長年慣れ親しんでいたが、実は本当は超高性能スーツ! 宇宙服としての機能は勿論、ステルス機能やペンだって付いている!
ヴィランはお馴染み、バズの宿敵、ザーグ。『トイ・ストーリー2』では『SW』的なびっくり驚きな設定だったが、今回もびっくり驚きな一捻り。今回のバズは“己との戦い”が描かれるが、それを象徴的に具現化。

“SFアクション映画”なので、アクションは迫力、冒険はハラハラ手に汗握る。映像や技術面含め、さすがのピクサー、高クオリティー。
物語もアクション、冒険、仲間、友情、絆…。
“バズ・ライトイヤー”というキャラクターにぴったりの王道劇。
面白かったが、やはり『トイ・ストーリー』ほどの凝った作り、アクションの見せ方、ユーモアや感動には及ばずかな。

オリジナルのウッディ声優の名優は、ティム・アレンからのクリス・エヴァンスへのキャスティング・チェンジに不満があるとか。
日本でもバズと言えば、所ジョージ。所さんのままの方が良かった…という声も多いだろう。
個人的に言わせて貰えば、そうだろうか…?
今回のバズは“おもちゃのバズ”ではなく、若く、熱い正義感の持ち主の“スペース・レンジャー”としてのバズ。
所さんのバズは好きだが、今回のバズには合わなかったろう。
鈴木亮平の声も思ってた以上に良かった。違和感も感じなかった。
だってこれは、新生バズなのだから!
(おそらくU-NEXT配信になるだろうが、いずれクリス・エヴァンスのオリジナル声もチェックせねば)

バズとザーグ以外は今回の新キャラ。
その人間新キャラも個性があって良かったが、でもやはりVIPは、超ハイスペックの猫型ロボット、ソックス。
アリーシャがバズに遺した“相棒”として、話し相手になったり、思わぬ武器が仕込まれていたり、ミッション成功のきっかけを見つけたり、ありとあらゆる場面で大活躍!
実は一番見せ場があり、頼もしい奴!
“猫型ロボット”が素晴らしいのは、日米共通…?
(かまいたち山内の声が意外や良かった!)

王道エンタメだが、根底に描かれていたのは、“選択”だったと思う。
自身の過ちにより、自分や仲間を危機に。自分の選択は間違っていたのか…?
責任を取ろうとする余り、大切なものを失う。自分がやっている事は正しいのか…?
人によっては、この未開の惑星で育んだ幸せ、人生。
そこで出会った新たな仲間。
それを間違えと言えるのか…? それを正すべきなのか…? 彼らの“全て”を無きものにしてでも。
間違え、失敗し、それでも築き上げられた“今”だってある。
何が正しかったか、間違っていたかなんて、分からない。
そこに意味や意義、尊いものを見つけられれば…。自分の選択は、自分の進む“無限の彼方へ”となる。

現時点の批評や興行から見ても、『トイ・ストーリー』ほどの成功は望めない。
しかし、本作のミッションはそれではないのだ。
かつてアンディ少年は“バズ・ライトイヤー”のキャラや世界観に夢中になった。大切なおもちゃの一つになった。
アンディ少年と同じく、今の子供たちをワクワクさせるスペース・レンジャーの宇宙冒険活劇として楽しめれば、このミッションは成功。

無限の彼方へ、さあ行くぞ!

近大