「どんな対価を払ったらこんなドイヒーな出来に…?」ホリック xxxHOLiC 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
どんな対価を払ったらこんなドイヒーな出来に…?
4人の女性漫画家からなる創作集団“CLAMP”の人気コミックを初実写映画化。
アニメ版は昔少し見た事あり。杏主演のWOWOWドラマも昔少し見た事あり。(“元夫婦”共演…!)
何て例えたらいいか分からないくらい独特さと妖しさとシュールさとユーモアも入り交じった世界観。
実写化するのは禁断の扉を開くようなもの。WOWOWドラマもビミョーだった…。
類い稀なビジュアルセンスが無いと無理。
監督を務めたのは、蜷川実花。
ビジュアルの華である彼女の起用は、製作側にとってはこれ以上ない人選だったであろう。
だが、見る側(特に作品ファン)からすれば、真っ先に不安が過る。
だって、ねぇ…。
やはり的中。必然。
極彩色に彩られ、絢爛美炸裂する映像やビジュアルは、お馴染みTHE蜷川ワールド。
オリジナルの持つ妖しさ、不気味さ、美しさのダーク・ファンタジーの雰囲気は再現したと言えよう。
で、及第点はそれくらい。後はいつもの事ながら…。
そのビジュアルセンスも目を見張るのは最初だけで、次第にクラクラしてくる。
まるでビジュアルだけの押し売り。監督自身が自分の美的センスに陶酔しているかのよう。
人によっては好き嫌い分かれるのが蜷川実花の常。好きな人はとことんハマるが、嫌いな人は全くダメ。
ちなみに私はそんなに嫌いって訳じゃないが、こうも延々見せつけられると先述通り飽きてくる。
次第に辟易してくるビジュアルにピントのズレたCG。何だか悪いクスリでもやったかのような、悪趣味になってくる。
『xxxHOLiC』の世界を実写化するのにビジュアル抜きでは描けないが、一本の映画でもある。物語もないと話にならない。
一番のダメダメ点は、ここ。
話、あった…? って言うかそもそも、話の意味、分かった…?
話の入りはオリジナル通り。
願いと対価、人の心の闇、愚かさ、己の運命、人の尊さ…。
大層な事は語っているようだが、全く心に響いてこない。
一応四月一日(わたぬき)の運命を主軸にし、同じ日(四月一日)が繰り返される四月一日の試練と成長が描かれるが、全く惹かれるもの…ズバリ言うと、面白味がない。
焦点ボヤボヤ。五里霧中。
オリジナルの侑子と四月一日のボケツッコミなユーモアも好きだったのに、ユーモア性はほとんど削られている。見る側に問い掛けるようなシリアス雰囲気が逆に鼻に付く。
原作改変は言わずもがな。それ以前に“作品”として成り立っていない。一体全体、何を語りたかったのだろう…?
いつもながらの蜷川実花のPV。
ビジュアルではなく、物語やキャラ描写重視なんてその口で言ったら、お前絶対嘘やろ!
異様に細長い原作のキャラデザイン。
まあこれを完璧に再現する事は無理だとしても、キャスティングも…。
神木隆之介の高校生役なんて今更かよ…。ステレオタイプ。
柴咲コウの妖艶さは存在感放つが、杏の方がイメージ合ってたような…。
松村北斗は元より、玉木ティナのひまわりがドイヒー…。
マル・モロって少女じゃなかったっけ…?
キャストで頑張ったで賞は磯村勇斗と、吉岡里帆。吉岡里帆もかなり叩かれてるようだが、大胆衣装のセクシーで危険な悪女蜘蛛は怪演と異彩を放っていたと思う。
だけどどうしても拭い切れないキャスト全員のコスプレショー…。
原作の大ファンで映画化を熱望していたという蜷川実花。
願いは叶えられたが、引き換えの対価はあまりにも酷いものであった。
またまたやっちまった。不作続くキャリアにまた一本。
アヤカシにでも取り憑かれていたのかな…?