劇場公開日 2022年4月29日

「蜷川ワールド全開!」ホリック xxxHOLiC bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0蜷川ワールド全開!

2022年5月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

原作となる大ヒットコミック『xxxHOLiC』を、『人間失格』や『ダイナー』を手掛けてきた、蜷川美花が監督し、彼女独特な世界観で、実写映画化。原作は未読のため、内容や人物設定も知らないで鑑賞したが、いつもの蜷川ワールドが、本作の内容とはマッチした作品と思えた。

蜷川作品については、賛否両論あるだろうが、本作でもスクリーンに映し出される色彩美については、写真家ならではのアングルと美しい色彩美で描いている。しかし、その美しさは、決して爽やかな美しさでなく、妖艶であり、耽美であり、何かぞくぞくするような感覚で迫ってくる。

人の心の奥に潜む闇・アヤカシが見える、高校生・四月一日君尋(わたぬききみひろ)は、その能力を棄て、普通の生活に戻りたいと願っていた。そこに、一羽の蝶が現れ、君尋を美しい店主・侑子が待つ、不可思議な店に導く。侑子は彼のアヤカシの能力を棄てる願いを叶えてくれると囁き、その対価として彼の一番大切なモノを差し出すことを条件とした。

その後、侑子の元で店を手伝いながら、友人の百目鬼(どうめき)やひまわりと共に大切なモノ探しを始める。そこに、アヤカシを操る、女郎蜘蛛の魔の手が伸び、四月一日を取り込もうとするだか…。

主演の四月一日役の神木隆之介は、安定感のある演技で、アヤカシに翻弄され、不安感が漂う高校生を演じていた。彼は、幾つになっても高校生の役ができる不思議な役者さん。(笑)

侑子役の柴崎コウは、蜷川カラーに彩られた妖艶さの中で、その美しさを際立たせていた。その柴崎に対抗する存在としてキャスティングされた、女郎蜘蛛役の吉岡里穂は、これまでのイメージを一新。胸も零れるほどの、悩ましい黒革のボンテージ・スーツに身を包み、四月一日を甘い言葉で誘惑する役は衝撃的。

その他には、今、不思議ちゃんを演じたら一番だと思え、『ダイナー』にも出演していた玉木ティナや若手の台頭・松村北斗が脇を固めている。そしてしっかり観てないと見逃してしまうくらいの役で、橋本愛や西野七瀬、大原櫻子なども顔を出している。

全体的には、原作の摩訶不思議で怪しげな世界観が、蜷川ワールドの色彩美によって、十分伝わるっているのだろうと思う。しかし、その色彩美のインパクトが強すぎて、ストーリーの組み立てや登場人物の設定が甘く感じ、シーンの繋がりが分かり難かったのが正直なところ。

bunmei21