「本作は「映画」というより「舞台」を見るような感覚で臨む方が混乱せずに済む、蜷川実花監督の新たな挑戦作。」ホリック xxxHOLiC 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)
本作は「映画」というより「舞台」を見るような感覚で臨む方が混乱せずに済む、蜷川実花監督の新たな挑戦作。
まず、正直に言うと、私が最初に持っていた期待とはだいぶ違う作品になっていて割と戸惑いました。
それは本作における蜷川実花監督の作風のバランスに因る面が大きかったように思えます。
蜷川実花監督作品は、彼女にしか出せないような独特な色彩美や世界観があり、それは本作でも踏襲されていました。
ただ、蜷川実花映画は大きく「映画」と「舞台」という2つの分野における作品のバランスがあり、これまでは「映画」の面が強い映像を構築していたと思います。
ところが本作では、「舞台」のような映像が多くなっていて、「映画」というより「舞台」を見るような感覚で臨む方が混乱せずに済むでしょう。
創作集団・CLAMPの伝説的コミックを10年前に実写化すべく蜷川実花監督が動いていた本作。
ただ、脚本が難航し企画はストップしていたのですが、「舞台演出家」である父・蜷川幸雄の死に直面し、再び本作の実写化に挑戦した経緯があり「舞台」への想いの詰まった作品となったようです。
物語はシンプルで、人の心の闇に寄り憑く❝アヤカシ❞が視える孤独な高校生・四月一日君尋(ワタヌキ・キミヒロ)が、その能力から逃れようとする際に一羽の蝶に導かれ、不思議な【ミセ】にたどり着きます。
そして、そこの女主人・侑子(ユウコ)から、「等価交換」として、願いを叶えるために❝一番大切なもの❞を差し出すように要求されます。
一方、その奇々怪々な世界では、❝アヤカシ❞を操る女郎蜘蛛が四月一日(ワタヌキ)の特殊な眼を欲しがるといった対立も生まれます。
メインの神木隆之介 × 柴咲コウに加え、同級生の松村北斗、玉城ティナ、敵対する吉岡里帆、磯村勇人の6人がほぼ出ずっぱりで、他のモブ的なキャストすら少なかったりと「映画」としては特殊な映像表現となっています。
そのため、この6人のファンは楽しめるかと思いますが、本格的な「映画」として鑑賞すると、やや肩透かしを食らう面があるので見る前に気持ちの整理をしておきたいところです。
本作では、作品が作られた経緯もあり「舞台」に寄った作風となりましたが、次は再び本格的な「映画」が見られることを期待したいと思います。