「絶対に認めない」ONE PIECE FILM RED てらゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
絶対に認めない
ダメですね。
FILMシリーズは基本全部楽しめましたが、今作は無理でした。
最たる理由は設定・展開の雑さと、原作崩壊です。
まず良いところから。
ウタの音楽は文句無しに良かったですし、コンセプトも好きです。
ワンピース映画はストーリーで魅せようとすると絶対に尾田原作には勝てないので、バトル特化・キャラクター特化の作品がやっぱり良いと思います。
本作はウタというキャラクターに特化しつつ、アニメ映画ならではの音楽で魅せる構成になっており、他映画や原作との差別化がしっかり図れておりました。
ただのadoのライブじゃんという意見もありますが、前情報を入れてたこともあり私はそこに関しては全く気になりませんでした。
以下酷評。
設定がとにかくガバい。
夢の中で理想世界を作る能力ってたまにファンタジーで見る設定ですが、ウタウタの実は夢の世界に誘うだけで、記憶改変能力は無い。
なので海賊が夢の世界に入れば普通に荒らし回るし、民衆も時間が経てばそろそろ帰りたいと騒ぎ出す。
この能力では楽しいだけの世界を作ることは不可能で、そもそものウタの計画が破綻している。
結局のところウタは、寂しさと絶望から罪無き人を巻き込んだ集団自殺を試みた人格破綻者でしかないので、同情の余地こそあれど好感を持てる部分が皆無だった。
それをあたかも「可哀想な悲劇のヒロイン」みたいな扱いで物語を進めるので、全く乗れなかった。
いくら同情できる生い立ちがあろうと人を傷つける行為は許されないし、ウタが許されるのであればアーロンだって悲劇のヒロイン扱いされてしかるべきになってしまう。
それ以外にも、いきなりファン全員の前でシャンクスの娘だと暴露するデリカシー0のルフィ、海賊嫌いで集まってるのに「ウタとシャンクスはやっぱり違う!」と一瞬で開き直るファン、ただの小娘相手に無抵抗でやられる億超え海賊達など、お話を進めるために都合良く展開していく様が見てて辛かった。
また細かいことを言えば、海水をかけられただけで力が抜けてしまうルフィや、天竜人が傷つけられてるにも関わらず大人しく引き下がる海軍大将など、ワンピースの世界では「あり得ないこと」が幾度と起きていたのも世界観の矛盾を感じる。
やはりワンピースを題材にするからには、ワンピースの世界設定は絶対に守ってほしいし、ここもこの映画に乗り切れなかった理由の一つ。
最後に絶対に許せないこととして、シャンクスがクソ野郎になってしまったこと。
シャンクスはウタをエレジア島に置き去りしたが、その理由付けが雑すぎる。
まず一連の事件をシャンクスが引き起こしたことだと嘘を付く必要性を感じない。他の海賊がやったことにしたり、ウタとは関係なく怪物や悪魔が現れたことにすればいいのに、なぜわざわざウタがショックを受ける嘘をついたのか。
また、シャンクスがウタを置き去りにした理由が一番あり得ない。そもそも親が子を置き去りにするなんてことは絶対にあってはならないことで、そういう演出をするからにはそれ相応の理由付けを求められる。ましてや文明が崩壊した島で、見ず知らずのおっさんと二人きりにして取り残すなんてのはあり得ない。
音楽の才能を大事にしてほしかったのは分かるが、直前わざわざ「それでもシャンクスと一緒にいたい」というウタの気持ちを確認した上で置き去りしたのは正気の沙汰とは思えない。
シャンクスと一緒にいればウタが犯罪者になってしまうから?7年間も海賊船に同乗させておいてその理屈は通らない。そんなことを気にするのであれば、最初彼女を拾った時からマキノに預けておくなり、海軍に引き渡すなりできたはず。
一連のシャンクスの行動は、「何かの縁だ」と軽い気持ちで育て始めたが、海賊として同行させるには邪魔なので体良く言い訳をつけて厄介払いしたようにしか見えない。
本作のシャンクスが、ミステリアスでかっこいい原作のシャンクスと同一人物だとは絶対に認めない。本作のシャンクスの存在は心から無かったことにしてほしいし、原作で本作を匂わせたり、リンクさせたりすることは二度とないよう切に願います。
続き
・最後に絶対に許せないことと~
置き去りにした理由付けですが、恐らく一番安牌な選択ではないでしょうか。
あの時点で他の海賊がいないのは、事件直後に来た海軍によって分かってしまうし、そもそも並の海賊では国一つ滅ぼせないでしょう(その前に海軍が来てしまうので)、怪物などに関しても国一つが滅ぶ敵が出てきているのに船員がウタを起こさない方が不自然ではないでしょうか。
また、置き去りにした所が文明が崩壊しているところなので、犯人をシャンクスのままにしておける可能性が高いでしょう。
それに、直前でここで音楽について学んだらどうだとウタに尋ねているので、シャンクス自身が自分の船にいたらもったいないと思っていたのではないのでしょうか。
親が子の将来を思ってどこかに預ける、送り出すのは正解でも不正解でもないと思います、結局将来うまくいくか、いかないかの違いでしかないでしょう。
ゴードンとも預ける話をしているときに、かなり親しげに話していたので見ず知らずではなく、既知の仲だったのではないでしょうか。
また、ウタを育て始めたのも自身がロジャーに同じように出会って育てられたし、成長しきる前に親であるロジャーは処刑されてしまっているので、恐らく、親は子の前からいなくなるものと捉えているかもしれません。その場合は、シャンクスの客観的視点はウタが自身を犯人だと思わず、ウタの才能を伸ばすことが出来るゴードンのもとに置いていくが正解だと思ったのではないでしょうか。
ミステリアスでかっこいい原作のシャンクスと認めたくないというのも、結局ONEPIECEという作品が進んでいくにつれて明らかになってしまいますし、自分にとって思い通りでないシャンクスを無かったことにしたいと思っているのも、本作でウタを妄信するファンと変わりませんよ。
あと、途中で書いていて思いましたが、あなたはキャラと設定を重視しすぎている気がしています。
話の流れ、テンポなど色々なものが組み合わさってのONEPIECEです。
今回は私も突っ込みたいところがあって書いてしまいましたが、設定など細かい所ばかりを指摘せず、お互いワクワクして楽しんでいきましょう。
続きです。
・それ以外にも、いきなりファン全員の前で~
そもそもルフィはウタが海賊嫌いとして活動してると知らなかった(作中からも読み取れる)し、ファンが「ウタとシャンクスはやっぱり違う!」となったのも、そもそも人間自体が信じたいものを信じるのでご都合主義思考を持っているので不自然ではないですし(現実だとアイドルがいい例)、設定上ウタワールド内ではウタが最強かつ絶対なので、億越えといえど能力を把握していないなら負けて当たり前だと思います(把握しているならそもそも海軍みたいにウタワールド自体に引き込まれない)。
・また細かいことを言えば、海水を~
原作に一部分しか触れていなくても同じ効力を発揮する海楼石だったり、海水をかけられるだけで撃退できるカゲカゲの実があります。
大将に関しては、シャボンディで黄猿がクマの逃がす行為を止めていませんし、頂上戦争ではその時点では殺しやすい革命軍の長であり、天龍人を殴ったルフィを最優先で殺してはいませんし、ドレスローザでは藤虎が瓦礫を落としていませんので、あり得る事象ですね。
・夢の中で理想世界を作る能力って~
そもそもウタの目的は楽しいだけの世界を作ることではなくて、誰もが幸せになれる新時代を作ることです。似ているようで全然違うものです。
また、ウタウタの能力は夢の世界に理想を作り出して誘うのではなく、自分自身が思い描いた世界(ウタワールド)に意識を引っ張り込む能力です。
ウタワールドでは能力者本人が思い描いた事象を起こせる絶対特権のようなものがあるので、ウタワールドを閉じた後に管理するポジションに就くのならば、別に破綻しているような計画ではないのかなと思います。
・結局のところウタは、寂しさと絶望から罪無き人を~
ここに関して言えば、後の目的の有無によって変わってきますが、今回での目的は死ぬことではなく、上記の通り、誰もが幸せになれる新時代を作ることです。
そして彼女は作中で「死ぬって何?大事なのは体じゃなくて心じゃないの?」と発言しているので自身の体がネズキノコの副作用による衰弱死をしたあと、皆が心が救われる世界に行くことが出来るので、彼女自身自殺と思っていなかったと思われます。
あと、アーロンとの差異に関しては敵になったか、なり切れなかったかによると思います。
主人公であるルフィにとって、アーロンは他人で、仲間であるナミを傷つけた存在であるのに対して、ウタはそもそも大事な存在ですからね。
ルフィを主軸とした作品であるONEPIECEで、多くの人がウタに同情し好感を持つのは普通でしょう。(そもそもキャラを実績経歴を中心でみるか、人となりなどで見るかによって好感の持てる持てないは人によって変わってくるような気もしますが)
コメ主さんと全く同意。
高評価の方々は本当に映画見たのか疑うレベル。
あんなメシもろくに作れなそうなおっさんに娘預ける?
またアニメ特番も異様だった。
ベルメールさんも苦虫噛み潰すほどの悪行を世界に知らしめることになった赤髪海賊団がフーシャ村で呑気に酒飲める異様さ。
でもエンドロールで今回の映画に携わってる人が多いのも見たし、関係者が高評価にしてたりするのかなって疑ってます。
数ある低評価のレビューの中では最もしっくりくる内容でした。
私は今回の映画はかなり好きで高評価の立場ですが、レビュー主さんの指摘は至極真っ当だと思います。
ナイスレビュー!
世間一般的に傑作と謂われている映画でも
極一部の人はつまらないと思っているのが常ですがこの映画は違う。賛否両論大荒れ状態。
少なからず評価される部分も有るにせよ、つまらない部分もあることは各サイトのレビューを見ても明らかなんですよね。
私も今回の映画結構観てて苦しく、詰まらないと思った人間です。
だから貴方と私のような思いをさせてしまった
監督と脚本家の全責任だと思っています。
個人的にとても同意します。
自分の娘という存在を置き去りにする理由があまりにも雑で、キャラクターの良さが崩れていると感じました。
1度海賊船に乗せる覚悟を決めたのならそれを貫き通すと思っていましたし、想像すれば誰でも良くない判断だと分かると思いますので、このキャラはこんなこと言わないとこだわりを持っている尾田さんがよくこれでGOサインを出したなと...
幸せを願うならもっといい選択がありましたし、原作に影響ない範囲でこじつけの設定をしたいとしてももっといい脚本があったのではないかと思います。
拙い文章失礼しました。
これは捉え方の問題。
私は☆5でした。
シャンクスがクソ野郎だと断定されてないです。
あなたたちが勝手にシャンクスをクソ野郎と捉えただけです。
まだ原作で結末まで描かれてないですが、この前の漫画のシャンクスの感じからして、今回の映画のシャンクスも人からどう思われても良いが、たとえ本人からどう思われても、本人が無事に進んでいければ良いという感じがします。
それで映画では最後救えなかったことに後悔の涙をしたのだと思います。人は誰でも間違いするという表現かと。
嘘をついたまま海賊を続けさせる方が無理があると思います。
実際ロビンが知る記事になるほど有名な事件で、シャンクスがやった事にしないとボロが出るし、一緒にいたらいずれバレる。
最悪の偶然でウタが事実を知り、最悪の偶然の重なりの結果今回の事件を起こしただけで、そもそもシャンクスは自分が悪者になる事でウタには純粋に音楽家を目指して欲しかった。
それが間違ってるかどうかは誰にも判断出来るものじゃないと思います。
ウタの才能に気付いたのはエレジアに行ったからですし、あの時ゴードンも死んでたら置いて行っては無かったでしょう。
最悪の偶然の重なりのせいであって、
自分が悪者になる事で音楽の道に真っ直ぐに進めるだろうと思った事は不自然では無いと思います。
そして、どんなことがあっても娘だと思っているから今回ウタのもとにすぐ駆け付けたんじゃないでしょうか?
ミステリアスなシャンクスに魅力を感じるのは分かりますが、娘を前にした親に対してその魅力を求めるのは流石にシビア過ぎると思います。
酷評の部分こそ、ファンなら本気で議論するべき部分なんじゃないかと思います。
Adoの歌なんかは単なる劇中歌で、好き嫌い別れようが大した問題じゃない。私から言わせればAdo批判してる人はズレてる。
今回の内容が最高だと言ってる人は、シャンクスがクソ野郎なことに何も感じなかったということになるんですが、ファンはそれでもいいんでしょうか?
ルフィが水かけられるとかそういう小さな矛盾はまだ許せましたが、そもそものストーリーの破綻は問題視されるべきだと思います。
今は絶賛している著名人やYouTuberがたくさんいて、それに乗っかる形で高評価してる人が多いですが、この熱が冷めてきた時にようやく正当に評価され始めるのかな?と少し冷めた目で見守っています。