「美しいCG技術と映像美。お子様と気軽に観られるファンタジー映画だが……ポリコレの足枷が……。」ピノキオ kouさんの映画レビュー(感想・評価)
美しいCG技術と映像美。お子様と気軽に観られるファンタジー映画だが……ポリコレの足枷が……。
吹替版、Disney+にて視聴
ゼペット爺さんの家の時計は小ネタがいっぱいだし、ピノキオは可愛らしい。
化物クジラの表現も良いし、CGの美しさが際立っている。
正に子供と共に楽しむ映画としては良く出来ているかと思います。
また、本作では現代的なメタギャグみたいなものも多く、ウィットを用いてただのリメイクでは終わらないようにしようという気概も伺える。
映像の良さとトム・ハンクスの起用だけで3.5の評価を与えたい。
……しかし、ここからは若干厳しめの言葉を並べていく。
実写化に伴って追加変更されたシーンが、ことごとくポリコレ色に即している。
予告の時点から話題になっていたブルーフェアリー。ファビナに至っては脚に障害を持っている描写すらある。
しかも、それらがストーリー上、一切必然性がないように感じる。
近年の映画作品において、これらのアイコンが出てきた瞬間に「こいつは悪役ではない」と分かってしまうのも悲しい。ストーリー構造の欠陥として蝕んでいるのに何故気づかないのか……。
本作はエンディングも原作(1940年アニメ版)とは異なる。
原作ではロバの耳と尻尾は治らないままゼペット爺さんと再会し、ピノキオが爺さんたちを庇って死に、それをブルーフェアリーが人間として甦らせると言う流れなのだが、
本作では、ファビナとの会話で耳と尻尾は戻り、爺さんが死にかけて、ピノキオの愛がそれを救うような展開である。しかもピノキオは人間には戻らない。
これは、企業的にピノキオと云うキャラクターを人間化しない事で、マスコットとしての価値を下げないようにしているのだと思う(人間の役者が演じる事でのライセンスで揉めないようにする配慮とも言える)
そして、何よりもジミニーへバッジが与えられると言う大事なシーンがない。
official conscience(公認の良心)のバッジは、ジミニーを象徴するものであり、
本作の一番のカタルシスとも言えるラストシーンを2つも削ってしまい、作品価値は下がってしまったように感じるが、商業的役割の方が大きいので、損得を考えるなら、こちらの方が得をするだろうと云う判断だったのだろう。
大人の汚さをおもちゃ箱に閉じ込めたような作品とも言えるのが悲しい……。
先日PV発表されたリトルマーメイドも、ブラックウォッシュとも言える人種変更がなされている。
あちらに関してはキャストヴィジュアルとしては、若干合わないと思うが、歌唱力が素晴らしいので納得させられる力を感じる。ただ、日本国内は吹替版需要が圧倒的に多いので、歌唱力補正が付かないだろうから……配役選定に物凄くウェイトが置かれると思うと……。
お子様と楽しむ分には、映像の美しさも相まってオススメできます。
ただ、大人が深く楽しむような作品ではないので、考察などが好きな方には合わないかなぁと。
たまには名作を振り返るように楽しむ映画を見ても良いのかなぁと思います。
P.S.
一応、タレント声優扱いなのでしょうか、
ジミニークリケットを山本耕史さん、J・ワシントン・ファウルフェローをとろサーモンの村田さんが演じているのですが……お二人とも本職かってくらい上手いです。
コーチマンの吉原光夫さんの歌声がガチすぎて凄いです。
タレント声優を起用される際、このくらいの演技をして頂きたい……と云う指標にもなる作品かも知れません。