ベルファストのレビュー・感想・評価
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モノクロームの鮮やかさ
ケネス・ブラナー監督をほとんど意識したことがなかったのですが、「シンデレラ」(05)は大好きな作品です。絵本がアニメになったり、アニメが実写になるときに、想像する余地が少なくなってしまうと却って表面的で陳腐になるやもしれませんが、そんなことは微塵もなくとてもイマジネーションをかきたてられて楽しめた印象があります。今作は、ブラナー監督自身の体験がベースになった自伝的映画です。平和だった街が宗教観の違いで分断され、暴力の連鎖となり引き裂かれていく様は、人間の歴史上繰り返し登場することで、やるせない気持ちになりました。とても印象的だったのは、モノクロで描かれているのにとても鮮やかな印象を受けたことでした。
人として生まれたなら
モノクロの優しい映像は彼の心か?
バディがかわいい
北アイルランド紛争
どんな時代・場所でも変わらず無垢なもの。
ケネス・ブラナーの故郷への熱き思い
【鑑賞のきっかけ】
俳優、監督、脚本と幅広く活躍しているケネス・ブラナーの自伝的な作品として注目していたものの、劇場鑑賞を逃していたため、今回、動画配信で鑑賞してみました。
【率直な感想】
<映画鑑賞に予備知識は必要か?>
基本的に映画は、何の予備知識がなくても、楽しめるように作られていると思います。
しかし、本作品は、特に日本人の場合は、ある程度の予備知識があった方が、ケネス・ブラナーが伝えたかったことを深く理解できるのではないかと思います。
本作品は、1960年代に北アイルランド・ベルファストで起こった暴動を中心に、若き日のケネス・ブラナーと思われる少年バディとその家族が辿る運命を綴った作品です。
この暴動なのですが、キリスト教徒の中でも、プロテスタントの一派が、カトリックの一派を町から追い出そうとして起こしたもの。
プロテスタントとカトリックの対立という現実を、少年バディは初めて目にした訳です。
でもこの暴動は、突発的に生じたものではないと言えるでしょう。
アイルランド島の歴史は、イングランドの侵攻と支配の歴史です。
アイルランド人の多くはカトリック。ここに、イングランドから、プロテスタントが持ち込まれることとなります。
つまり、カトリックとプロテスタントの対立には、長い歴史があり、1960年代の暴動は、深く根付いていた対立が表面化したものと考えられます。
その結果、現在、アイルランド島は、ベルファストのある北部は、イギリスの国土であり、南部は、アイルランドという独立国家です。
だから、イギリスの正式名称は、「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国」という、とてつもなく長い名称になっています。
この映画の救いは、少年バディの一家はプロテスタントなので、暴動の首謀者側であるのですが、両親は宗派の違いによる対立には否定的で、少年バディもそうした両親の考え方に沿った形で成長していくところでしょう。
<一部カラーなのはなぜ?>
本作品は、冒頭、現代のベルファストの様子がカラー映像で映し出され、やがて時代を遡って1960年代の映像になるとモノクロとなります。
でも、物語の途中、一部カラー映像になります。
それは、少年バディが、両親などに連れられて、映画や演劇を鑑賞するシーンがあるのですが、観客席はモノクロなのに、映し出される映画や舞台上の俳優は、カラーで表現されています。
この演出の意図は何かと考えたのですが、少年バディが生きている現実世界は、暴動により治安が悪化し、光り輝いた世界ではないと感じられます。
これに対し、鑑賞する映画や演劇という架空の世界は、少年バディにとって、光り輝く世界に見えたのではないでしょうか。
【全体評価】
ネタバレになるので書けないのですが、物語のラストに流れるテロップには、ケネス・ブラナーの心の温かさがにじみ出ていて、辛い現実を描いた作品ではありましたが、後味は良い作品に仕上がっていたと思います。
「ニュー・シネマ・パラダイス」と「Dearフランキー」を足して
「ベルファスト」というからIRA絡みの「デビル」(’97 ハリソン・フォード、ブラッド・ピット)の
延長線かと勘違いしてました。 ケネス・ブラナー監督ごめんなさい。
ストーリーはブラナー監督の少年期の追想のようですが、
G・トルナトーレの「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い起こさせます。
やっぱり映画監督って子供の時分から人一倍映画が好きなんですね。
子供目線で見ている点は「Dearフランキー」と同じ発想ですね。
こちらはスコットランド・グラスゴーの話ですが。
まずモノクロで撮っているのが深みがあってとても絶品です。
ストーリーも宗教対立の中で自分の生まれ育ったベルファストに対する
強い思い入れに揺れる家族を描いていて、見る者に感情移入させます。
主人公の少年の脇を固める4人(両親・祖父母)の役者もナイスです。
そして何よりも劇中映画が懐かしさを呼び起こすのはたまらない。
「リバティ・バランスを射った男」(’62)ではJ・スチュワート、J・ウェイン、そしてリー・マービン。
L・マービンを画面中央にアップで映すなんて凄すぎです。
「ニュー・シネマ・パラダイス」でも「駅馬車」のJ・ウェインをアップにしてたけど。
ゲーリー・クーパー主演の「真昼の決闘High Noon」(’52)ではあのグレース・ケリーが
映っているではないですか!!
彼女はまだこの時は駆け出しで可憐な女優でしたが、その後モナコ王妃になっちゃうのだから。
監督はなんとあの巨匠、フレッド・ジンネマンですよ。
そしてテーマ曲ディミトリ・ティオムキン作曲の Do Not Forsake Me, Oh My Darlin。
耳からも記憶を呼び起こさせてくれる。
幸せを感じさせてくれる場面でした。
欲を言えばジョン・フォード監督の「わが谷は緑なりき」が無かったのは残念であった。
場所はウェールズだけど炭鉱夫一家の話なので、亡くなったおじいちゃんへのオマージュとして是非入れておいて欲しかった。
ブラナー少年は当時この作品を見なかったのかなぁ?
蛇足です。 ベルファストは北アイルランドNIRの首都ですが、
ロンドン・テムズ川のロンドンブリッジそばに同名の巡洋艦が博物館として停泊しています。
幼少期のインパクトある思い出
良い映画をみました
アカデミー賞で作品賞を受賞したと知り、へーっ、どんな映画かなーと気になってやっと鑑賞。
モノクロ映画ってだけでとても印象はオシャレになり、音楽も映像も役者さんも全て素敵でした。
ストーリーは北アイルランドで起きた実際の歴史に基づいていますが、大人のあーじゃこーじゃがメインではなく、ある普通の一般家庭に住む男の子が、ある日突然、その日常を脅かされなければいけなくなるというもの。
ベルファストという場所も初めて知り、この場所でそんなことがあったということも初めて知りました。
社会で起こる争いごとに、社会的弱者達はいつも巻き込まれ、生活を脅かされ、選択を迫られる。
そんな中でも、バディやバディの家族は前を向き、時にはユーモラスに生きていく姿に勇気をもらいます。
心優しく、思慮深い祖父母の存在もかなり大きく、二人のシーンには何度も心がホンワカさせてもらいました。
まだ小さなバディだからこそ、大人が気づかないシンプルなことに気づく。そして素直で、真っすぐで、純粋。
歴史に翻弄されながらも力強く生きる登場人物達に学ぶことは多くありました。
本当に良い映画!!
どの登場人物にも感情移入しちゃう
殺伐とした動乱のベルファストで過ごしたケネス・ブラナーの想い出。まず、純情で、愚かでもあり、それでいて何かに踏み出し始める微妙な年齢の子供バディの視線で描かれている。ここがとてもいい。「トルコの喜び」味のチョコバーとか「環境に優しい」洗剤とかバディならではのこだわりアイテムが芸の細かいくすぐりだ。殺伐としたシーンのなかでも可愛くて笑える所が多いところはとても癒されるが、ちょっと「受け狙い」っぽくてズルいぞ。
バディ本人だけじゃなくて父ちゃんにも母ちゃんにもじいちゃんにもばあちゃんにも感情移入、というかシンパシー感じる。武装集団側のビリーと父ちゃんの関係ものっぴきならないところが良く表現されていました。人間そのものと、加えてその関係性の描写がいいんですね。いい映画を観ました。
音楽もゴキゲンでしたね。
母ちゃん役、カトリーナ・バルフっていう方ですか?初めて見たけど脚長くてめちゃくちゃスタイルいいじゃん、って思ったらファッションモデルなんだそうですね。道理で。
ゆっくりと流れていく優しい時間と確かな現実
2022.95本目
国も時代も自分とは違うけど、どこか懐かしいと思ってしまうくらいに暖かい家族や近所の人々、ベルファストの日常。その日常が淡々と優しく描かれているからこそ、紛争や差別などの現実がより一層身近に感じられる。
日常を暮らしているなかでじわじわと闘争や紛争の影響を受けていくことを、自分自身も追体験しているような気持ちになった。
特に、好きな女の子がカトリックだと言った時のお父さんの返答。よかった。
映画を観て、瞳をキラキラとさせる主人公がとても綺麗。その後、映画に携わることになったという事実も含めてとても良かった。
オープニングの、現在のベルファストからかつての記憶へのうつりかわりのシーンの美しさが印象に残って、何回かみかえした。笑
故郷への哀愁や、愛が感じられる映画だった。
安心してやさしい気持ちで観られる映画だけど、
評判が良すぎた分期待しすぎて、少し展開の穏やかさに物足りなさを感じた部分も。
愛の底には憐憫さがある。少年バディーから見た世界。
内容は、1969・8・15北アイルランドにある労働者の町ベルファストで起こる宗教問題や種々の問題による紛争を一つの家族を中心に描く悲しくも心暖まる忘れていた子供時代を思い出させてくれる様な映画🎞印象に残った台詞は『愛の底には憐憫さがある』主人公の少年バディーに祖父が話す場面。そんな難しい言葉子供相手に選ばないでと感じました。しかし年老いた大人の達観した恋愛観を率直に表した言葉だと感じます。『答えが一つなら紛争など起きんよ』この言葉も祖父がバディに語る言葉。背景の雨の音が悲しみの涙の様で状況が悪化しているのがよく分かり面白い。印象的な場面は、やはり冒頭の8分間でいきなり心を掴まれた様な気がします。現在のベルファストの素晴らしい黎明に3分間〜労働者の看板を越えると1969・8・15に移りバディのチャンバラからカメラが主人公バディを一回りする間に暴徒に囲まれてしまう辺りは息を呑みます。それだけで、この映画を観た事を喜んでしまう程素晴らしい。ベルファストといえば自分にとっては、タイタニックでありホワイトベースの寄港地だったぐらいしか記憶にないのですが改めて根深い問題を掘り起こされた様で、世界が広がり楽しめました。モチーフとして、たまに挟まれる印象的な場面のカラー映像の使い方やバリケードや鎖は意図的に配置され視覚効果も良かったです。民族紛争については、イギリス🇬🇧と言う国は日本しかなく正式には『グレートブリテン及び北アイルランド連合王国』であり何度も繰り広げられた紛争の結果。現在とりあえず今の線引きで収まってはますが、数々の不穏な感じが正常な状態なのかもしれません。この映画を観て感じたのは、人間はある種の植物🪴の様なものかもしれないと言う事です。育ったら土地を離れて幸せを感じ難い生き物なのかもしれませんが、植物も時に風に乗り遠くに行く様に出会いと別れ・残留者と移住者(旅人・レイヴン)になりより良く生きていくものだと元気が出る映画でした。1秒たりとも気の抜けない編集と全体の流れは何度みても色々な気づきの得る事の出来る素晴らしい作品だと感じました。
人々は
小難しくない
ケネスブラナー+白黒=絶対難しく堅苦しい映画だと
覚悟して観たけど、
子どもの視点で主人公の心の成長と家族、分断されて
行く町が描かれていて、とても見やすく面白かった。
起こってる事は大変な事なのに、子ども視線なので
なんか大人たちの関係が変わって行ってるぞ、
俺たちには関係ないよなと言う距離感が
自分の子どもの頃の大人を見てた視点と重なって、
懐かしい目線だった。
分断は今、世界の解決しないといけないテーマの
一つだと思うけど、
子どもの頃にそれを経験したケネスブラナーにしか描けない映画だと思うし、
それを優しさをもって描いてるのが素晴らしいと思う。
あの時、大人たちは間違いを犯した、
子どもたちは好きな友だちと離れ好きな子と離れ、
大好きな街を後にした。
犠牲になったけど、それでも前を向いて進んだ。
今貴方たちはどうする?
そう投げかけられた気がします。
鑑賞動機:デンチ様4割、海外での評判3割、ポスタービジュアル3割
ジュード君を見つけてきた時点で大成功かと。映画監督としてのブラナーはあまり相性が良くなかったけど、これは実にしっくりきた。撮りたいという強い意志が感じられた。
冒頭の現代/カラーから1969/モノクロへの切り替え方とか好き。基本的にはバディ君の目線なので、日常がいきなり破壊されたり、逆にバリケードが日常の風景になっていったり、ちょっと(戦争じゃないけど)戦場を舞台にしない戦争映画にも見えた。血の日曜日はもう少し後なのね。
ばあちゃんじいちゃんのお互いに承知で転がされているというか、息の合ったツーカーぶりというか夫婦コントシーンにホッとする。それに比べると、父さん母さんはまだまだ若い(青い)。それでも略奪の中でも人としての道理を通す母さん、分断を煽り立てる脅迫に屈しない父さん、二人ともカッコいい。
別エンディングは単独映像としても非常に味わい深いが、本編には組み込まない選択は正解だと思った。
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