「ごく私的な小品なれど」ベルファスト 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
ごく私的な小品なれど
ケネス・ブラナーが北アイルランド・ベルファストでの少年時代を題材に映像化。モノクロ、ノンスターで、肌合いはごく私的な小品だが、紛争下での少年とその家族の日常を描いており、期せずして現実の事態を思い起こさせる。
それまで仲良く暮らしていた隣人に、宗教の違いだけで暴力を振るうことが、少年には理解できない。名前でも区別できないのに。それでも暴力はエスカレートし、否応もなく少年と家族を巻き込んでいく。そのあたりの詳しい背景や理由は描かれず、少年の疑問や不安な心情とシンクロしている。
その代わりこの作品で描くのは、家族や住民の歌や踊り、そして映画。モノクロの日常から、舞台や映画館のシーンでの鮮やかなカラーへ。映画館やテレビで観る映画、お父さんが買ってくれたおもちゃなど、ブラナーが当時愛したものをすべて、喜々として盛り込んだ感じ。
ジュディ・デンチ以外は知らない役者さんばかりだが、みないい味を出している。お母さんのミニスカートが当時を彷彿とさせる。また、主要キャストはみなアイルランド出身とのこと。アイルランドといえば、なんと言ってもベルファスト・カウボーイことヴァン・モリソンの歌が全編に流れているのが嬉しい。
始めのうちは、カットが早く、人間関係の把握に手間取って、今一つ乗り切れなかったが、だんだんとカットも長めになって、物語に入っていけた。もう一度、最初から見直してみたい。
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