「子どもも大人も老人も、垣根のない世界観」ベルファスト ぼぶさんの映画レビュー(感想・評価)
子どもも大人も老人も、垣根のない世界観
ケネス・ブラナー監督の幼年期を抒情的に描きながらも改めて人間そのものを考えさせる秀作であった。北アイルランド紛争が背景。モノクロ映像がひたすらに美しい。人々の喜怒哀楽もカラー作品よりもはっきり読み取れるから不思議だ。この時代の人々は世代間の関係性が近い。子どもも大人も老人もさしたるラインはなくみんな深く関わりあって生きている。監督は本作でそれを強調したかったのかもしれない。紛争による経済不況で生活は大変だ。しかし悲壮感はあまり表に出しすぎない。苦しいながらも彼らは映画やダンスで人生を楽しむことを忘れない。絶望の前にいつでも仲間がいる安心感というか心の基礎がある。思えばおれ自身のガキの頃の社会の雰囲気も現在とはだいぶ違い、このベルファストの雰囲気があった。昔を思いだして懐かしい想いに胸がつまった。
今日はアカデミー賞の発表があった。コーダの作品賞受賞には素直に嬉しかったが、おれの中ではパワー・オブ・ザ・ドックだった。作品賞受賞には政治的な思惑が入る。だから重要なのは作品賞にノミネートされることだと思っている。その意味でドライブ・マイカーは快挙中の快挙であった
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