「ティーンズに向けたメッセージ」凪の島 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
ティーンズに向けたメッセージ
この作品はティーンズに向けたメッセージ
わかりやすさがあるし、いじめや虐待などの要素がない。
また、教育的視点ではなく、誰もが持つ「心の傷」に焦点を当て、寄り添う作品となっている。
小さな島
小さな世界
逃げ場所
海以外何もない場所
母と主人公原田凪が都会から移り住んだ場所
夫のアルコール依存症と暴力
凪にとって日課のようになっている早朝海に潜ることは、彼女にとっての瞑想
自分自身を整えるために必要な所作
今日一日を恐怖に支配されることなく過ごす手段
登場人物の多くが「心に傷」を持ちながら生きている。
コウヘイの吃音は過去の出来事の傷跡
吃音がある劣等感はあっても、自分の心に正直に生きている。
コウヘイを好きなったミズキ先生も、教師故に心が傷つくということを良く知っているのだろう。
ライタはなぜ入院している母と会えないのか、何度も祖父に尋ねるが、いつも返事は「母ちゃんのことは忘れろ」と言われる。
ライタの母の病院は精神病院で、病名は解離性健忘症
辛い過去を思い出したくないという強い思考によって過去を封印することで10年間分の記憶がない。
幼いライタの大きな「心の傷」に、胸が締め付けられる。
凪も、コウヘイも、山村もそして凪の父もまた、深い「心の傷」を抱えながら生きている。
世の中の多くの人もまた、「心の傷」を抱えながら生きている。
笑わないジジイ 通称笑ジイは、娘を病気で亡くした過去がある。
それ以来笑うことがなくなった。
笑ジイを面白がる子供たちに悪気はない。ただ笑わせたい。
しかしどうしたらそうなるのか? 笑ジイの誕生日に多くの人が集まって誕生パーティを開く。笑ジイが泣き崩れ、笑った。
小さな島
小さな世界の住人たちのお互いに思いやる心
この作品の中に「いじめや敵役」は存在しない。
問題のすべてが誰かの「心の傷」にある。
自分自身に向き合えないことが、苦しみの原因だと。
笑ジイは30年かけてようやく自分自身に向き合うことができるようになった。
過去の出来事は、人を何十年も苦しませ続ける。
ライタの祖父はいつもライタに「勉強しろ」とうるさい。
ほとんどのティーンズも親からそう言われ続けてきただろう。
でもライタは母と会い、母のことを知り、祖父からその意味を教えられたとき、境遇に対する不満が生きる原動力に変わったのだろう。
凪という名前も波風と正反対の言葉だ。
不安や恐れや過去の出来事のことで心を揺さぶられてはならない。
凪の父の謝罪と母の赦し。
すべての問題は、「私の心の中」で起きている。
それに向き合うことが解決の糸口。
この作品はそう言いたいのだろう。
なかなかうまくまとめられていて面白かった。