劇場公開日 2022年1月21日

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「strike a chord」コーダ あいのうた アツサミーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 strike a chord

2025年8月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:その他

楽しい

単純

幸せ

 地元のホールでバリアフリー映画を見た。日本語吹き替えで、視覚障害者等に対応する描写説明の音声も流れる。
 映画館とは違う舞台のあるホールにスクリーンを吊るして上演された。両サイドには「禁煙」の赤いサインボードとその上のデジタル時計が最初は気になったが、様々なナレーションと同様、そのうち気にならなくなった。私はそれなりに「適応」出来るのだ。観客は300人位か。基本は無料だが、アンケート用紙と募金があった。

 ストーリーは実にシンプルだ。港町で漁師を営む4人家族、主人公のルビーだけ耳が聞こえる。幼い頃から家族の耳や口となり外部との通訳を担ってきたルビーは、父兄と毎朝3時に漁に出て、魚臭い服装のまま学校に通っている。聴覚障害者の家族だという理由で周囲からからかいの対象にもなっていた。
 そんな彼女は歌う事が大好きで、魅力的な声の持ち主だ。合唱クラブに入り顧問の先生に見いだされ、同じクラブの男子とデュエットし、恋仲になる。進路を巡って家族を取るか、歌を取るかで揺れるが、最終的には家を出て音楽大学に進む。パピーエンドだ。

 世の中は「金」「暴力」「女」で構成されている。強い者が勝ち、勝った奴が正義だ。弱き者、ハンディを持つ者は生き辛い。それが鉄板だ。
 それでもこの映画が人の心を打つのは、「ヒトの遺伝子に組み込まれた仏性」に訴えかけて来るからだろう。
・秋の定期演奏会で練習してきた曲を観客の前で披露する、その場面には肝心の歌声はなく、映像のみだった。それまで散々、練習過程を見せられてきた観客の私は当然戸惑う。そして気づくのだ。「あぁこれが聴覚障害者の日常なんだと。」
・そのコンサートに着ていく赤い服を娘にプレゼントするシーンで、母親はこう言う。「あなたが生まれたとき、耳が聞こえるかどうかを頭に電極をつけてテストしたの、そしたらちゃんと聞こえているのが判明した。その時、私は心からガッカリしたと。」
私は思わずえッ何故?って思った。母親は「健常者のあなたと私は一生、分かり合えないと思った」と。

 CODA とはChildren Of Deaf Adultsの略称で、耳の聞こえない親に育てられた耳の聞こえる子どもたちの事だ。
 ヒトがここまで繁栄出来た要因の一つは社会性だと思う。他者の心の痛みを我が事とし、弱き立場の人に寄り添おうとする能力だ。そうすることで自分がその立場になった時、誰かがきっと私を助けてくれると思える。その信頼感が人類の強みだ。
 coda家に生まれたルビーの痛みがよく分かる、ルビーの自立を心から応援したくなる。
 作品中には様々な歌、歌声が出てくる。codeが重なり合い素敵で迫力ある歌声がこの映画のベースにある。
 This movie really struck a chord with me.

アツサミー
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