「離別」コーダ あいのうた U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
離別
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良い話だった。
自分以外は聴覚に障害のある家族。
彼女は家族と健常者を繋ぐ唯一の手段だった。
幼い頃から通訳を務め、思春期の女の子には訳し難い言葉も飛び交う。なかなかにハードな人生だ。
そんな特殊な環境下だが、彼女は普通の女子高生で、恋に落ちる。
「歌」に出会うプロセスが微笑ましい。
その歌が、彼女と家族を変えていく。
彼女の歌声は美しく、とても豊かだ。
だけど、その環境が彼女の才能を阻む。
それと同時に健常者ではないない者だちの苦悩も描かれる。父親はコンプレックスを抱いてるし、母親は保守的だ。兄貴は反骨精神の塊のようだ。
母親は「理解してもらえない」と嘆く。
家族でありながらも、それほどの溝があるのだろう。
彼女は自分の才能に背を向けて、家族の犠牲になっていくかなような展開に。
それに反発する兄は、おそらく自分が出来なかった事を出来るのにやらない妹が歯痒いのであろう。
発表会の夜に、娘の歌をどうにか聞こうとする父親に胸が締め付けられる。
彼女は結局、家族から巣立つ。
今は苦しくとも、お互いが自立していく為の試練でもある。必要ならばやるしかないのだ。
そこから新たな仕組みが出来上がる。
あいのうたなんて副題が付いてるけど、その歌は聞こえてはこない。発表会の時の無音のシーンに哀しくなってくる。賞賛される娘の歌声を聴く事が出来ないのだ。
こんなにもどかしい事などない。
彼女が世界的な歌い手になっても、その声を聴く事が出来ないのだ。
オーディションの時、手話を交えて歌う彼女はとてもとても素敵だった。
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