「青春の光と影…そして,愛」コーダ あいのうた bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
青春の光と影…そして,愛
本年度のアカデミー作品賞を受賞した作品。近場の映画館では公開していなかったので、遅れて鑑賞。聴覚に障害のある家族の中で、唯一人、耳が聞こえる少女の心の葛藤と成長を描いたヒューマン・ドラマ。
最近のアカデミー賞は、人種やジェンダー問題等、個性の尊重を取りあげた作品が受賞する傾向にある。今回は、耳の聞こえない障がいのある人達が生きていく息苦しさを、背景に描いている。しかし、主人公の家族は、聾唖であることを障がいと感じながらも、決して卑屈にならずに逞しく生き抜く、人としての強さと明るさを感じられるように描いている。そして、それを支えているのが、ゆるぎない家族愛なのだと思う。
漁師である聾唖の家族の為に、幼い時から通訳となって漁師の手伝いをしてきたルビー。学校では、変わり者の家族ということで、仲間外れにされながらも、新学期に合唱部に所属する。その担当教師が、ルビーの歌の才能を見出し、音楽大学進学を勧める。一方で、ルビーの通訳を頼りにしている家族は、進学に反対し、家族を守ることを願う。好きな歌を続けるのか、家族の為に歌を諦めるのか、その葛藤の中に、淡い恋心も織り込みながら、ルビーの青春物語を描いていく。
それほど、サプライズのあるストーリーでもないし、よくあるヒューマン・ドラマだが、本作の素晴らしさを増幅したのは、やはり手話による演出構成であると思う。主人公家族となる、父役のトロイ・コッツァー、母役のマーリー・マトリン、そして兄役のダニエル・デュラントは、実際に、聴覚に障害を持ちながら、聾唖俳優として活躍している。だからこそ、本作の演技が、決して台本を読むだけの演技ではなく、彼らの心の内から訴えるような、喜怒哀楽が現れているのだと思う。
手話を知らない自分でも、その手話や表情からその想いが伝わり、音声としての言葉を発しなくても、ヒシヒシと感じるものがあった。特に、最後の『青春の光と影』を歌うルビーが、家族の前で、手話をつけて歌い出すところは、それまでのストーリーと相まって、心に熱いモノが溢れてきた。
海外では、こうした障がいのある人々が、エンターテイメントの世界でも、堂々と活躍できる場もあり、それを認める風土ができている。日本も、『24時間テレビ』の時にだけ盛り上がるのではなく、常にこうした人達が、明るく生きられ、互いを認めあえる社会を、築いていかなければいけないと感じた。
全く申し訳ありません。俯瞰した言い方で申し訳ありません。是非、まだでしたら『愛は静けさの中に』を見てみて下さい。貴方なら、良さが分かると思います。見ていたら、申し訳ありませんでした。