「愛が包む名作。」コーダ あいのうた kouさんの映画レビュー(感想・評価)
愛が包む名作。
Amazonプライム 吹替版にて視聴
フランス映画「エール!」を米リメイクした作品。
障碍者を題材にしたフランス版のリメイクと言うと「最強の二人」を思い浮かべてしまうが、
こちらは舞台設定をよりドラマチックに修正したようだ。
「エール!」については未視聴なので、対比については割愛。
聾者の家族の中、通訳のように生きる主人公のルビー。
しかし、召使のような訳ではなく、家族の愛の中で身を寄せ合って暮らしている。
彼女は歌が好きだが、家族の理解は得られない。そんな中、音楽の先生に才能を見出され……
と言った内容の本作。
本作のテーマは「理解と共感におけるハンディキャップの壁」と「家族の中の犠牲を是とするか」の2点だと感じた。
話者とのコミュニケーションの難しさ。これは聾を扱う上では必須だ。近年の映画では「聲の形」が一番適格に描いていたと思う(ヒロインの非現実性以外)
そこに主人公の音楽的才能を理解する事の難しさも加わってくる。
なるほど、これは共感出来ないことを共感させられる。とても苦しい演出だ。
しかし本作は、むしろそこから先を越えた、家族として娘の夢を後押しする事を描いている。
愛が全てを包むような読後感を与えてくれる。それが素晴らしい。
この物語の性質上、主人公の才能を説得力のある描写で表す必要があるのだが、
ルビーことエミリア・ジョーンスの歌が上手すぎて納得させられる。
特にラストの歌唱シーンは最高だ。
あそこまでの歌唱シーンは近年類を見ないくらいの心の揺さぶり方だ。
例えるなら「バーレスク」のテス(シェール)の歌唱シーン「You Haven't Seen the Last of Me」クラスの出来だった。
劇場で観たかったような。一人で静かに観たいような。
そんな宝箱のような作品だったと思う。