「少女の成長」コーダ あいのうた カイトさんの映画レビュー(感想・評価)
少女の成長
聾者の家族を持つ少女をコミカルかつドラマチックに描いた本作。
周囲とは異なる環境で育ち、自分を信じることできないルビー、歌を歌うことが生き甲斐だが、周囲の前では上手く表現することが出来ない。少女を愛し、育てた家族も経験したことのない音楽に才能を表す娘を信じることが出来ない。才能を認めたものの少女の心の内を信じられず戸惑う教授、そんな登場人物全員がお互いを信じ、少女を温かく見守り、大きな成長を遂げていく本作のストーリーには心を大きく動かされた。
中でも本作のハイライトとも言える秋のコンサートでのデュオシーン。ルビーが歌い出すと同時に静寂に包まれる。見つめる観客の表情、観客が作り出す会場の雰囲気をルビーの父の目を通して強烈に表現していた。このシーンで映画における音楽の表現に新たな風が吹いたと感じた。
また、このコンサートによって心を動かされた父親がとった娘への行動は覚悟、寂しさ、愛情と言った様々な感情が複雑に絡み合っていて何度も観たいと感じるシーンとなっていた。
本作は家族、少女自身がお互いを信じるまでの過程を美しく描き、家族愛は勿論、健聴者である人々にも聾者から見た世界を知るきっかけとなる作品であり、より多くの人々の理解を生むきっかけとなる壮大な愛によって作られた映画だと感じた。
コメントする