「エミリア・ジョーンズの歌声が心に染み渡る」コーダ あいのうた 藤崎修次さんの映画レビュー(感想・評価)
エミリア・ジョーンズの歌声が心に染み渡る
ジョニ・ミッチェルの名曲“青春の光と影”を荒削りながらも伸びやかな声で唄うシーンは凄く良い。
本家のジュディ・コリンズの繊細な歌声とはまた違った魅力がある。
宮本亜門風のV先生のアツい指導もウザさは無く、むしろ心から応援している姿が好印象。
聾唖の両親と兄も貧しいながらも卑屈になることなく、日々を明るく楽しく過ごしているのも素敵な感じ。
下品な表現も多いのだが、明るい家族の笑顔がいやらしさを吹き飛ばしてくれている。
娘にとっては一番の理解者であってほしい母が家族の中で最も娘の進学に否定的だというもどかしさもあったりするが、最終的には応援してくれるのも何かホッとする。
そして、何よりも印象的だったのは、クライマックスの発表会での1分間もの無音のシーン。
観客にも難聴者と同じ光景を伝えようとするこのシーンがこの作品を心に残る物にしてくれている。
星空の下、父が娘の歌声を感じ取ろうと喉元に手を添えながら、目の前で歌ってもらう場面。
歌い終えた娘・ルビーが父に「どうだった?」とばかりに目で問いかけるところもジーンときた。
鑑賞前は宣伝文句の『アカデミー賞最有力』というのは大袈裟だと思っていたが、作品賞はともかく、何がしかの賞は取るんじゃないかと思う秀作。
やはり、さすがGAGA。今回も良い作品を持ってきてくれた。副題の『あいのうた』も敢えて平仮名にしたところにこの作品へのこだわりを感じる。
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