「子供立ち、親立ち」コーダ あいのうた ハムカツ太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
子供立ち、親立ち
今作を見て最も印象に残っているのは、「リアル」ということです。見てよかったと、素直に思えるような、いい映画でした。
タイトルにも記載したように、この物語は親子それぞれが子供立ち、親立ちする物語でした。
聾唖者である、母、父、兄の3人は生きていく上で、ルビーに頼ることが当たり前になっていた。ルビー自身も、大学の専攻が近づいたとき、漁師を続けることを理由に一度進学を諦めた。私はこのシーンは、家族を手伝うことを進学に対する強い意志を持てない言い訳にしているように少し感じてしまった。このように、家族同士で仲良く過ごしているように見えて、依存になっており、お互いの足枷になっているように感じました。
父親、母親の2人は生活していくために、ルビーを大学に行かせることはできないと言ったシーン。レオだけは、妹の幸せを願う不器用な兄であった。家族のために、自分の夢をあきらめてほしくない、だが自身でも健聴者の妹がいなければ自分達は生活ができないとわかっている。兄であるのにも関わらず、妹を助けるために何もすることができない自分にずっと腹が立っていた。不器用ながらも、素敵な兄であると感じていました。
しかし、発表会でのシーンを境にそれぞれの思いが変わっていく。分かりやすかったのは、聾唖者の自分達は実際に歌を聞くことはできないが、ルビーの歌を聞いた人々が、自然と笑顔が溢れ、涙を流す人が現れたシーンだ。このシーンは聾唖者がどのように世界を見ているかが、リアルかつ分かりやすく描写されているとてもわかりやすい場面であった。そして、父もまた不器用ながらも、娘のことを最もよく考えていると感じました。序盤にラップは振動を感じるから好きだといった伏線が、最後にルビーの喉を直接触れることで回収されるとは思っても見ない感動するシーンでした。
そして、家族全員がルビーの進学を応援するようになったころから、周りの人間関係も自然と良くなったように描かれていた。これまでは、自分達は「聾唖者だから」といった、自信を否定し、他人は掛け合ってくれないと決めつけるような会話が多かった。ルビーの進学をきっかけに、周りの人間にも、自身から歩み寄ることで問題が解決しているように感じた。
最後に、私は兄のレオが1番好きなキャラクターでした!