「2021年度米アカデミー賞作品賞受賞作品。聾者の家族の中で唯一耳が...」コーダ あいのうた しろぶたさんの映画レビュー(感想・評価)
2021年度米アカデミー賞作品賞受賞作品。聾者の家族の中で唯一耳が...
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2021年度米アカデミー賞作品賞受賞作品。聾者の家族の中で唯一耳が聞こえる少女の家族を支えなければいけないという重圧と責任感、それに反して膨らむ歌、音楽への関心と自信。その相反する価値観を行き来する彼女の心の揺らぎを丁寧に描き切った傑作。タイトルが出るシーンで海と空を水平線が綺麗に画面を割っていて、その間に船に乗った彼女がいる。どちらの世界に行くか、その間にいる彼女という構図から引き込まれた。
彼氏として登場する男子の扱い方も上手で、愛で乗り越えるというチープな展開はせずに、あくまでも彼女のオアシス、癒しであり続ける。水辺で遊ぶシーンからも彼氏のオアシス感は感じられる。それ以上はなく、彼女の問題を解決することはできない。それが非常にリアルに感じた。
聾者の俳優さんを実際に起用したことは言わずもがな素晴らしいことだが、それ以上に聾者(障害者)をある種神のような存在として描いていない点に好感を持てた。障害者は健常者よりも心が綺麗、神秘的である、というような表現をする映画は少なくないが、コーダでは下ネタも言うし、性交渉もするし、聾者であってもそれ以前に普通の人間であるという寄り添いがあり、綺麗事に収まっていない居心地の良さを感じた。
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