「見たかった男女の恋バトルの行方がここに…!今年ベストの快作」もっと超越した所へ。 たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)
見たかった男女の恋バトルの行方がここに…!今年ベストの快作
今年ベスト…!こういう恋愛モノが見たかったのだ。会話劇によって作られた圧巻の世界観、個々の事情と溜まりに溜まったモノを携え、もっと超越した所へ…!
原作は根本宗子さんの戯曲。スズナリで公演されていたモノを映画として再構築。脚本を根本宗子さんが再び組み立て直すことで、映画らしい場面の映え、メッセージ性の強さを乗せることに成功している。そして、山岸聖太監督がより脂の乗ったエンタテインメントへと昇華させている。映画らしくない、もっと超越した所へ持っていく多彩なギミックは心を踊らせ、ジェットコースターのような2時間を濃密に堪能させてくれる。そしてそれを、男女のあるあるを交えたカップル間の揺らぎで描き切る。そこに不快感を与えるわけでもなく、エモさで片付けたりしない。「あぁ、なんか分からないけど面白かったわ〜」と言わせたい制作陣の言葉に納得だ。
考えると実にシンプル。塵が積もったカップルにおける気まずさというか、どの男女にもありそうなクズさと強がりが各方面に散りばめられていて、共感したりしなかったり。恋愛は盲目になるから…なんてごまかしも効かない。あの時幸せだったのに…。それを4つの部屋で多動に起こるから、一瞬も油断出来ない。そしてその一瞬一瞬が面白い。みんな米は食べるし、生活出来ればいいなんて思う。それでいいんですかぁ!?となってから、我々は胸ぐらを掴まれる。ネタバレになるので多くは言わないが、見事に裏切られるし一気に面白くなる。グワッと溢れて高揚感に包まれる。そして、男の弱さと女の甘さも全部包んでくれる至福。こういう映画を待っていたのだ。
キャストが何より素晴らしい。主演の前田敦子さんが程良く油断を許してしまうような雰囲気を醸し出し、菊池風磨さんが心も体もすぐにさらけ出すクズ男を。これがまた似合って見えるし、新しさも感じる。黒川芽以さんはクリープハイプ『憂、燦々』並みに苦しく思えたが、自我があるので強くも思えた。三浦貴大さんが演じる男のプライドを張りたがる辺りにすごく共感。やりたくなるのよな…。趣里さんが見せる甘えと千葉雄大さんの鈍感さが見せるズレもなかなか秀逸。伊藤万理華さんも相変わらず勢いを感じさせるし、相手に依存しすぎる点がどっちにも作用する辺りが面白い。オカモトレイジさんが1番可愛げがあった。バランスよく混ざり合い、ど派手に展開していく。はぁ…早く語りたい!
細かなディティールの中に組まれた精密な人間味。それがキャスト8人と絡み合い、根本宗子さんの元で生き生きと動いていく。そして、山岸聖太監督が鮮やかに映像化していく。こんな幸せで切なく笑える恋愛映画、他にあるか⁉もう1回観て、あのギミックにまた驚きたい。