劇場公開日 2024年3月15日

「◇光、風、砂ぼこりのザラザラした感触」デューン 砂の惑星 PART2 私の右手は左利きさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5◇光、風、砂ぼこりのザラザラした感触

2024年3月20日
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鑑賞方法:映画館

 「日本人は水と安全をただと思っている」半世紀前のベストセラー『日本人とユダヤ人』の言葉。砂漠の民の価値観に共感するのは、われわれにとって容易なことではありません。

 シリーズものに弱い私、壮大な世界観を巧みに構築するドゥニ•ヴィルヌーヴ監督、勢揃いした有名どころの俳優陣、導かれるように再び「砂の惑星」を訪れることになりました。

 前作以上に砂漠の乾ききった風とザラつく砂埃と深い地響きに全編支配されていました。そもそものSF活劇であることを越えて、砂漠の自然の猛威の中では、人間の意志の移ろいや権力闘争劇そのものが陳腐に感じられてくるような不思議な感覚に酔いしれます。この作品の主役は無限に広がる砂漠の景色だったようです。

 「砂をかむような思いがした」という言い回し。本来の「無味乾燥でつまらない」という意味から「悔しくてたまらない」様子を示すときの使用へと変遷しつつあるようです。「砂」のザラザラとした身体的に不快な感覚の真ん中に全身で浸っている時間。その触感から遠く越境したところにある心身の原初的なリズムの存在に思い至る深い映像体験になりました。

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私の右手は左利き