「新約?」デューン 砂の惑星 PART2 SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
新約?
神話とSFが融合したかのような壮大で緻密な世界観。予言や運命がからむところは古代ギリシャの叙事詩みたい。服装、道具、メカなどのデザインも好みにドンピシャですばらしかった。
前作を完全に忘れていたので、あらすじを復習してから観たので、ストーリー、専門用語、人間関係で混乱することなく観れた。でも、もし復習してなかったからかなりの部分理解できなかっただろうな、と思う。
ただ残念ながら、ストーリーは正直言って「面白い」とは言い切れなかった。これは僕自身の感性の問題だと思うので、面白いと思える人には面白いんだろうなと思う。
前作は独特な世界観を初めて知れるというだけですごく面白かったのだが、今回は世界観は分かっているので、それ以上のドラマ部分の面白さを感じたかったのだが、それがあまりピンとこなかった。
まず、共感できる人物がいない。それぞれのキャラの裏の思惑が読み切れなかったということもある。とくに、ベネ・ゲセリットが結局何を目的とした組織なのか、クウィサッツ・ハデラックが彼女らにとってどういう存在なのか、良く分からない、ということが大きいと思う。
救世主(クウィサッツ・ハデラック)の位置づけは面白いと思った。普通は救世主といえば、宗教的な文脈の中で登場が予言される存在であるし、実際にフレメンからはそうみなされているが、実はベネ・ゲセリットが「作り出す存在」である。
救世主は救世主としての能力を示すから救世主としてあがめられるのではなく、「皆が救世主と信じるから救世主になる」という存在である。主人公もそれが分かっているから、複雑な葛藤に苦しむことになる。
救世主といえばキリストだが、もしかしたらこの物語は変形した新約聖書なのだろうか? などとも思った。救世主信仰をもつ先住民族(フレメン)がいて、彼らは他民族に支配されていて、支配者側は信仰心を統治に利用しようとする一方で、実際に救世主があらわれてしまったことをきっかけに先住民族の反乱がはじまって、みたいな…。先住民族側も支配者側もそれぞれ一枚板ではないし、それぞれに通じている存在があったりして非常に複雑。
主人公は仕組まれた運命を強いられている存在なのだろうか? それとも、運命どおりにならないように反発しようとしているのだろうか? それとも、運命を受け入れて、積極的にその運命を達成しようとしているのだろうか? その辺が観ていてよく分からなくなってくる感じもした。主人公に比べると彼の母親の行動は確信的で、彼女の本当の意図は分からないとしても、ブレない行動をしている気がする。
どうでもいいが、うちの近くだと字幕版が小さいシアターでしかやってないので、できるだけでかいスクリーンで観たい。やっぱこういう壮大な物語は。
共感ありがとうございます。
原作あり、それも長くて有名なSFの古典とくれば改変してるのか、忠実なのか読んでる人でないと判断出来ない厳しさがありますね。ビジュアルの再現度は誰も文句つけてないようですね。