ゴヤの名画と優しい泥棒のレビュー・感想・評価
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【1960年代の英国のタクシー運転手や、多くの人々が年金生活者や、社会的弱者に示した善性溢れる粋な作品。法律とは人を断罪するモノではなく、公平公正で適正な社会秩序を維持する為にあるのである。】
-1961年、ロンドン・ナショナルギャラリーから「ウェリントン公爵」の肖像画が、盗まれた。犯人とされたのは、正義感の強い年金生活者で、タクシー運転手のバントン(ジム・ブロード)だった。-
◆感想
・娘を失った哀しみが、バントンを社会的弱者を救う気持ちにさせたのだろう。
ー ナポレオン戦争の英雄「ウェリントン公爵」に対する彼の否定的な言葉。だが、その価値をTVで知り・・。
・バントンは絵画の身代金で高齢者のBBCのTV受信料を肩代わりしようと考えていたのである。
ー 1960年代から現代まで、孤独な老人がTVを通じて、社会と繋がろうとしている事は、何処の国でも同じなのであろう。
又、今作では、年金生活者や、社会的弱者に対する彼の視点が、随所で、ユーモラスに描かれている。-
・そんな彼の気持ちを支える息子ジャッキー(フィオン・ホワイトヘッド)。
最初は、娘を亡くした悲しみと、不器用な正義感を振り翳し、度々職を失う夫に呆れていた妻ドロシー(ヘレン・ミレン)が、徐々に彼の想いや娘を失った喪失感を克服し、受け入れて行く過程も上手く描かれている。
- そして、息子が、彼の代わりに行った大胆な事。-
・良心の呵責に耐えかね判決の三年後、出頭した"真犯人"に対し、検察官が言った言葉も忘れ難い。
ー 当時の英国官僚は、寛容な人物が多かったのだなあ・・。-
<ラストの法廷でバントンが語る言葉の可笑しさにクスクス笑いつつ、裁判員達が下した寛容な判断が心に沁みる粋な作品。
当時の英国社会の懐の深さを感じさせる作品である。
そして、”法律とは人を断罪するのではなく、健全な社会秩序を維持する為にある”という事を思い出させてくれた作品でもある。>
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