やがて海へと届くのレビュー・感想・評価
全29件中、21~29件目を表示
誰にも言わずにそっと抱きしめていたい良作
大学の新入生の時に出会った女子二人をメインにして、大事な人を亡くすことの喪失感を丁寧に描いた作品。
岸井ゆきの主演。
クラブ勧誘でごったがえすキャンパスで、湖谷真奈(岸井ゆきの)はネコ🐱のポーチを拾う。強引な歓遊に戸惑いながらも断れない真奈。そこへ割って入ってきたすみれ(浜辺美波)。
新入生歓迎コンパで真奈は先輩男子からえげつないセクハラとモラハラの洗礼を受ける。すみれが機転を利かせて助け、その日のうちに二人は仲良くなる。
かねてより母親と折り合いの悪いすみれ。雨の夜に突然真奈のところに来て、一年半居候したが、敦(杉野遥亮)と同棲することになって、出て行ったらしい。
卒後、ホテルのレストランのフロアマネージャーとして働いている真奈。京都の木工インテリア製作会社への入社を考えていたが、今の部屋(広いバルコニー付きの木造アパート)を離れたくないので、断念した真奈。優しさに溢れた真奈のインテリアと植栽のセンス。互いに過干渉はしないが、互いを尊重する暮らしにすみれも居心地がとても良かったであろう。
ある日、真奈は敦からすみれの遺品整理の連絡を受ける。
活動的なすみれは3.11の東日本大震災の時に海岸線の駅のホームにいて、被災したらしいのだ。
敦の部屋で猫のポーチを見つける真奈。すみれに介抱してもらったときの青いシュシュを入れて、大事にとっておいたものだった。
「いつの間にかなくなっていたものがあるんです」
敦と真奈の会話。すみれの死をどうしても受け入れたくない真奈の気持ちが痛い。
レストランの店長の楢原(光石研)は店のBGMにこだわりをもっていた。真奈は楢原から信頼されていたが、ある日、楢原から出勤が遅れると連絡を受ける。真奈にBGMの選択を託して、自宅の風呂で首吊り自殺してしまう。すみれに続き、楢原の死に落ち込んでいる真奈にコックの国木田(中崎敏)ば有給を使って気分転換することを勧める。真奈が選んだのは三陸への旅だった。心配し、同行する国木田。訪れた土地の建物のなかで、震災で亡くした家族の思い出を語りそれをビデオカメラで撮影する人々(中嶋朋子、新谷ゆづみら)。
「親友が帰ってこないんです」
伊藤母娘の民宿に泊めてもらい世話になる真奈。
民宿の娘はずみに海岸で祖母から習ったという子守り歌を歌ってもらう。漁に出たきり帰ってこない夫への気持ちを歌った唄だった。
10メートルを越える防潮堤に佇む真奈。
冒頭の水彩画のアニメと対をなす赤いスニーカーを履いたすみれが無人駅にただずむ姿。駅のホームのおばあちゃんも浜辺美波に勝るとも劣らない上品で綺麗な人だった。はずみのおばあちゃんだったのかもしれない。
一晩寝たあとでも、映画の美しいシーンがどんどん沸いて来て止まりませんでした。
真奈を大切にしてくれた人々。
ある日突然いなくなった人々。
不器用ながらも繊細で素朴な真奈を演じた岸井ゆきのにやられました。
幼げで、虚ろで、悲しげで、それでいて強く訴えて来る眼。涙。
すみれのビデオカメラを何度も再生するシーン。
真奈はすみれの目線で確認し、知らなかったすみれの一面を感じたい。
敦は死んだあとでもすみれの秘密を見てはいけないと思うと言う。
大切な人の撮った写真やビデオ映像は捨てられない。
ノマドランドでも父親の撮ったスライドを車の中で時々見る彼女のシーンが辛かったのを思い出しました。
追記
すみれが吐けない真奈に
「噛まないでね」と言って、口に手を入れて吐かせるシーン。
新入りの下戸の後輩がさんざん飲まされた挙げ句、キモち悪い上司に駅のトイレで無理やり口に手を突っ込まれて、吐け吐けと大きな声で攻められて、翌日、もう死にたいと言っていたのを思い出してしまいました。
浜辺美波さんの手だったら、彼もどんなにか幸せだったでしょう。
恋愛以上、友情以上
岸井ゆきのさん、人間のお芝居と思えないほど美しいタイミングで美しい涙をこぼす。アニメで描いたらそうなるのも分かるけど、生身の人間があんなふうに泣けるものなのか。北島マヤなのかな。
こういう名前のつかない感情をやりとりする女と女の映画ができたことがうれしい。異性に恋愛するまでの成長過程の幻覚などではなく、むしろ異性の恋人との明確で誰はばかることない関係よりも二人自身が二人だけで尊んでいる関係になっていて素敵だった。
私は、すみれから真奈への感情って、たぶん恋愛とはまたちょっと違うんだろうなと思う。同性の親友に恋して辛いじゃなくて、同性の親友のことが大好きすぎてずっと一緒にいたすぎるんだけど恋とも違うから困っているような、そういうふうに見えた。
恋人同士の関係性に落とし込めない感情だからこそ、結婚やら出産やらこの先のライフステージで容赦なく分かたれていくことを予感してしまって辛くなるっていう。キスは、キスするような関係になってでも一緒にいたい強い衝動があるだけで、キスがしたい衝動っていうわけじゃないんだろうなと思った。違うかなあ。
真奈からすみれへの感情は、すみれ以上に友情寄りに見える。もしも恋愛感情に近いものがもっと多く含まれていたら、敦に敦のことが嫌いだったと打ち明けられないと思う。誰かにすみれのことを話すときも、誰が相手でも何度でも「親友」と言い切って迷いが全然なかった。真奈のこの迷いなさ屈託のなさが、すみれを出て行かせたと思う。すれ違い切ないとも取れるけど、構成の異なる感情を抱き合っていても、お互いの心を温め合えていたところに私は希望を感じる。二人は素敵だったよ。
被災者が体験や思い出を語っていくシーンは、当事者じゃなくてよかったのだろうかと少し疑問。新谷ゆづみさん、主演映画でのお芝居も見ごたえがあったし、成功してほしい俳優さんだけど、この役は宮城や福島でオーディションして、当地の若い人にチャンスを配るほうがよかったんじゃないかという気もする。もうこの“当事者”問題、どこまでそうすべきなのか本当に難しいなと思うけど。
関係性また違うんだけど、これを気に入った人には『春原さんのうた』とか『君が世界のはじまり』とか薦めてみたい。あと漫画でジョージ朝倉の「ハッピーエンド」、志村貴子の「ラヴ・バズ」。
海の底の様に落ち着く部屋。で身体を寄せ合う2人。
震災遺族のインタビュー。燃えるように朝日が昇り、海岸では「帰らない人を待つもの」と「世界へ飛び出す夢を抱く者」が立っている。と言うピークからの。
女子2人の絆と隠されていたすみれの視点の暴露。忘れていた伏線(ポーチ)は中途半端に未回収。「海の底の様に落ち着く」とすみれがつぶやいた真奈の部屋(ベランダ)への帰還。顔。顔。顔。即ち、人。人。人。への賛歌、って言うか讃美。的な。
A面アイドルの美波ちゃんとB面アイドルのゆきのちゃんです。浜辺美波は久しぶりにスクリーンで見た気がしますが、二皮むけてた。イヤ、こんな芝居出来る女優さんだった?B面アイドルのゆきのちゃん。A面アイドルに、こんな芝居されたら負ける訳にはいかんだろうと。この2人は良かったです。
いずれにしても、「撮り散らかした物語りの手仕舞いの仕方を間違えました!」な印象で、最後はシラけた。
ラスト、欲張り過ぎずに、も少し早く終わるか、スッキリと整理は出来なんだろか。って思いました。顔顔顔の時間は蛇足感しか有りませんでした。
点数が付けられない作品
だけど投稿出来ないので3点としました。
出だしの意味不明だけど美しいアニメーション。
後から3.11の津波の事と知る。
「電車は来ないよ」とか
「後ろを振り向かない」
などのメッセージが恐ろしい。
震災を美しい映像にした事にどんな意味があるのか解らないけど浜辺美波さんと岸井ゆきのさん二人の演技は良かった。
浜辺美波さんは相変わらず美しいけど岸井ゆきのさん。
美しかったりそうでもなかったり表情が豊過ぎる。
桜や菜の花。海岸の映像が美しかった。
点数はつけられません( ´∀`)
チューニング
親友が行方不明になって5年経ち、気持ちの整理が出来ない女性の話。
親友と同棲していた彼氏が職場にやって来て、引っ越すこと、そして遺品整理をすることを告げられて巻き起こって行くストーリー。
親友の言葉を代弁するかの様な発言に納得が出来なかったり、故人の様に扱われることを受け入れられなかったり、そしてまた職場でも…。まあ、そういう感情は共感出来るところもあるしとは感じつつ、親友に何があったのかと思っていたら、半分過ぎた辺りで津波??
まさか3.11絡めて来るとは…。それならそれで最初から示せば良いのに、この狙った様な話の進め方に何をみせたいんだ?と違和感を覚える。
そこから怒濤の津波ネタラッシュで、しかもドキュメンタリーと思しきインタビュー入れたりね。
終盤のすみれパートもカメラに残された映像や回顧という訳でもないしどういう意図か???
主人公の機微は良かったけれど、何が言いたいのか、何を感じれば良いのかわからなくなってしまった。
海深く深い想い
優しいアニメーションからはじまる
大好きな友を亡くし
…失踪感が
彼女のなかで大きな哀しみが
奥深く深いところで彼女のことを想う
岸井ゆきののなんとも言えない演技が見事です
落ち着いた雰囲気と人の優しさも感じて
いつまでも忘れたくない人
過ぎていく日々に
薄れていく記憶
いつまでも失くした人を想いたい
【”万物流転・・”忌まわしき天災の傷を時間を掛けて受け入れ、再生して行く人々の姿。アーティスティックな作品であると共に、岸井ゆきのさん、浜辺美波さんの凄さを堪能する作品でもある。】
ー 大学の新歓で知り合った内気な真奈(岸井ゆきの)と、表面的には外交的な、だが内面に深い孤独を抱えるすみれ(浜辺美波)は、ふとしたことが切っ掛けで知り合い、距離を縮め、二人で住むようになる。
だが、すみれはフラリと東北に一人旅に出かけ、帰って来ない・・。-
■東日本大震災の犠牲者には、未だ遺体が見つからない人が多い。
残された家族は、”いつか帰ってくる・・。”という儚い望みと、死を受け入れ新たな生活に踏み込まねば・・、という板挟みに悩む人が多いと、仙台に住む友人が、且つて私に話してくれた事がある。
◆感想
・岸井ゆきのさんの柔らかな演技と、表面的には外交的だが内面に深い孤独を抱えるすみれを演じる浜辺美波さんの物凄い美しさの中に秘めた、憂いを帯びた表情、時に”眼””は凄みさえ感じさせる。
- 今作は、この二人の女優さんの好対照な演技を見るだけでも価値があると、私は思う。-
・すみれの元恋人遠野(杉野遥亮)、母親(鶴田真由)は5年経っても帰ってこない彼女を故人として扱おうとするが、真奈はそれに納得がいかない。
- すみれの”遺品”の扱い。残されたすみれがいつも愛用していたビデオカメラは遠野も母親も引き取らず、真奈が手元に置く。
すみれが、カメラのファインダー越しにしか物事を観ない、大切なことを言わない事を遠野が諫めるシーン。すみれの心の闇が仄かに描かれる。
すみれこそ、実は内向的な性格なのではないか・・。脆さを抱えているのではないか・・。-
・真奈がアルバイトしているレストランの店長(三石研)がある日、突然首を括り自殺する。真相は誰も分からない。
だが、その事件をきっかけに、真奈とレストランのシェフ国木田(中崎敏)は、すみれが行方不明になった東北の海岸沿いの土地に出掛ける。
- そこで、出会った人たち(中島朋子、新谷ゆずみ、そして実際に震災に遭われた人々)がビデオカメラに向かって”その時”を語るシーンは、東北に所縁のある私にとっては、キツカッタが印象的なシーンであった。
皆が、愛する人の死を受け入れ、必死に生きている姿は、心に沁みた・・。-
・すみれが愛おし気な表情で撮っていた真奈の寝姿。すみれは本当は・・。
- すみれは、且つて真奈に”貴方は本当は強いんだよ・・”と言っていた。
真奈はすみれにとって、憧れの存在だったのではないか・・。-
・そして、ゆっくりと時は流れ、真奈にも変化が訪れる。
いつもはすみれが撮っていたカメラに向かって明るい表情で喋り掛ける姿。
”こちらは、天気です。そちらはどうですか・・。”
<冒頭の幻想的なアニメーションシーンとラスト近くの万物流転を暗喩したアニメーションシーンの繋がりも良い。
今作はアーティスティックな作品でありながら、独り善がり的な個所は少なく、見応えは十二分にあると思った作品である。>
■今作は、睡眠は十二分に取ってから、観賞することをお勧めします・・。
#24 秘密とかアニメとか
冒頭と終わりのアニメは個人的に不要だと思う。
電車は来ないだろうけど、先に大地震があったんだから津波が来るかもしれないことはわかるよね。
そこが全く抜け落ちてるのは日本人的に常識なさすぎと思っちゃう。
あと秘密って言うからもっとすごいことかと思ったら拍子抜け。
これも昨今のLGBT教育のおかげか。
女子が運転しないっていうのも不自然。
どういうマッチョさんが作者なの?
友達探しに東北行くなら、三浦透子さん並みに運転しろよ。先輩に運転させないでさ。
どっちかと言うと『女子高生に殺されたい』よりもこっちの方がめちゃ期待してただけにガッカリ感が大きい。
『私たちはどうかしている』で恋敵演じてた2人だから楽しみにしてたのになあ。
全29件中、21~29件目を表示