劇場公開日 2021年12月17日

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「研ぎ澄まされた構成力に引き込まれる」世界で一番美しい少年 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0研ぎ澄まされた構成力に引き込まれる

2021年12月16日
PCから投稿

その少年は俳優志望というわけでも、モデルとして成功しようと野心を抱いているわけでもなかった。しかしヴィスコンティ監督に美貌を見出され『ベニスに死す』に出演したことで、訳もわからず世界的な狂騒の渦に巻き込まれ・・・。あれから50年を経た彼は、すっかり白くなった長髪をなびかせつつ、今なおフォトジェニックな表情で我々を魅了する。だが内面は別だ。そこに深く突き刺さっているものは一体何なのか。本作では、導入部から記録映像と音楽とが親密に絡まり合い、美しくもミステリアスな雰囲気を織りなしていく。はっとさせられるのは本作の構成の巧さだ。ビョルンという人間の複雑性を一枚、また一枚と丁寧にめくっていくその手捌きや筆致は、ドキュメンタリーでありながら、ひとつの物語に身を委ねているかのよう。幾つもの悲しみと苦しみを共有し、全てを知った上で改めて、彼に引き込まれていく。なんという人生。ずしんと重みを感じる作品だ。

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牛津厚信