「話が微妙に違うお話。」ラーゲリより愛を込めて マサシさんの映画レビュー(感想・評価)
話が微妙に違うお話。
話が微妙に違う。
この主人公は立派な社会主義者だった。外語大学に入学して社会主義活動で逮捕、そして、退学になるような筋金入りの信念のしっかりした社会主義者である。この映画で言えば、壇上に立って仲間を吊るし上げる側の立場だったはずだなのだ。
では、何故『ダモイ』出来なかったか?
原作者が現場を見ていた訳ではないし、この映画の演出家が真実を分かるはずもない
映画や『原作』を参考に僕が推測する。『ソ連にうまく使われた。』若しくは、『日本には帰ることが出来ない』と彼自身が自己判断した。と言う事だと思う。
さて、日本国はソ連からの帰国者を社会主義者と恐れた事は事実である。レッドパージに関係する松川事件、三鷹事件、下山事件がそれで、ソ連から帰国した兵隊が国鉄の組合運動と関わって、ソ連のスパイとされた。言うまでもなく、朝鮮戦争とアメリカの遺物なのだろう。もっとも、主人公は同胞を吊し上げするような人間ではなかったので、後世にこう言った心温まる話として残っているのだと思う。
しかし、一方で中国のハチ◯ウ軍に所属して『日本軍と戦ったと言っている親方が国鉄の中にいた』と我が亡父は言っていた。この映画の同胞を吊し上げする側の人なのかもしれない。
しかし、
この映画ではソ連に抑圧される主人公ばかりを描いているが、誰もソ連の虐待行為を観ていないし、一般論で言えば、ロシア語の喋れる貴重な人材を、ソ連がほおって置くわけがない。ましてや『人民教育』と称して、社会に左翼運動を広めるオルグであるならば、彼は間違いなくソ連にうまく使われたと見て間違いない。
さて。このストーリーの1年後にグルジアのスターリンが亡くなり、その1年後にウクライナのフルシチョフが台頭して、日本とソ連は国交が結ばれた。ロシアとウクライナの争いがあっても、ロシアとの国交が断絶したわけではない。
日本はアメリカと日米安全保障条約を結ぶことになるが、主人公が遺言に残した平和な社会に日本はなったのだろうか?そして、なっていくのだろうか?
マサシ様
山本氏がなぜ帰れなかったのか?
シベリア抑留の軍事裁判で重罪刑を科された原因は、前職(満州時代の仕事)が理由にされたのだと思います。山本氏は、満鉄の調査部でソ連の国力や地理などを分析する仕事をしていました。その調査結果は関東軍に報告されていました。もちろん、日本(または満州国)では合法的な行為です。
ソ連の軍事裁判では、その行為に対してソ連の法律が適用されて、スパイ行為とみなされたのです。今の平和な時代に生きている我々が「そんなバカな」と思っても、それが通用しない時代、国だったのです。問題視された前職は、ロシア語の分かる人=スパイ扱い、731部隊の人だったと理解しています。もちろん、彼らは前職を隠そうと必死なのですが、仲間内でソ連側におべっかを垂れて密告する人がいるのです。誰が密告しているかも仲間内では分かっていて、密告者は大変な恨みをかったようです。シベリア抑留者は、過酷な重労働だけでなく、こういった葛藤にも苦しんだのです。