「【”未来の為に。”過酷な境遇下でも、人間の尊厳と道義を保ち、家族への愛を忘れず、収容所の仲間達を励まし続けた男の姿に心打たれた作品。二宮和也を始め、助演者の名演が作品に重みを与えている作品でもある。】」ラーゲリより愛を込めて NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”未来の為に。”過酷な境遇下でも、人間の尊厳と道義を保ち、家族への愛を忘れず、収容所の仲間達を励まし続けた男の姿に心打たれた作品。二宮和也を始め、助演者の名演が作品に重みを与えている作品でもある。】
ー 冒頭にテロップで、実在の物語であると出る。
第二次世界大戦末期、満州ハルビンで、家族、妻モジミ(北川景子)と生き別れた山本幡男(二宮和也)は、敗戦後旧ソ連軍の収容所に連行される・・。ー
◆感想
・心に響くシーンが多数描かれている作品である。その根底には、山本幡男の聡明で、視野が広く、家族を愛し、仲間に勇気を与える言動の数々であろう。
ー 若き名優二宮和也が、時に柔和な笑顔を浮かべ、常に家族を想い、収容所の仲間を勇気づけ、歌を口ずさむ山本を見事に演じている。-
・山本は、自分をソ連に売った元上司の原(安田顕)を赦し、心優しき文盲の新谷(中島健人)に字を教え、”卑怯者”と自分を呼ぶ松田(松坂桃李)に希望を与え、粗暴な軍曹、相沢(桐谷健太)には、”一等兵ではない!名前がある!”と毅然と言い放つ。
- 山本が、絶望していた収容所の仲間の意識を変えていく過程がキチンと描かれている。皆で野球をするシーンでは、皆に笑顔を与え、理の通らない事をソ連兵からされた時には、決然と抗議する姿。彼が人間の尊厳を大切にしているが故に、相沢を含め、収容所の仲間達の尊崇の念を集めたことが良く分かる。ー
・だが、病魔が山本を襲う。松田がまず、抗議の作業不参加の座り込みを始め、相沢、新谷も・・。そして、原が収容所所長に銃を向けられながらも、山本の検査を要求するシーン。原は、自らの行いを悔いたこともあるだろうが、命を懸けての抗議するシーンは、手に汗握る・・。
■白眉のシーン
そして、喉頭がんで余命三カ月を言い渡された山本に、原が言った事。
”遺書を書け。” そして、山本はソ連の大地と共になる・・。
ソ連兵に遺書を取り上げられないように、原、松田、新谷、相沢は、作業をしつつ、遺書の内容を頭に叩き込む。
終戦後、11年経って旧ソ連と日本の国交が結ばれた事で、彼らは舞鶴に向け、漸く帰航するシーンでの、彼らが可愛がっていた黒犬クロが船を追って来るシーン。
そして、原は家族全員への遺書を綺麗に清書した手紙を携え、モジミを訪れ、手紙を見る事無く山本の遺書を読み上げるシーンからは、涙を堪えるのが難しい。
そして自らも母親を亡くした松田は、山本の母への遺言を涙を流しながら伝え、新谷は子供達への遺言を、戦禍に依り妻を亡くした相沢はモジミに対する遺言を読み上げる・・。
山本の人柄であろう。素晴らしきシーンの連続である。
そして、安田顕、松坂桃李、桐谷健太という邦画を代表する役者も皆、素晴らしいのである。
<不寛容な思想が蔓延り、旧ソ連だった国の蛮行が止まらない現況下、この映画が発信するメッセージは重い。
劇中、山本が収容所で言った”戦争は、酷いモノですよね・・。”と言う言葉が、ズシンと心に響く作品である。>