「爽やか!」テレビで会えない芸人 taroさんの映画レビュー(感想・評価)
爽やか!
素晴らしい芸人。素晴らしい映画でした。
松元ヒロさんの飄々とした佇まい、軽やかな権力批判、その裏の地道な努力、魅力的なご家族。すべてに魅了されました。
権力批判と言うと、つい青筋立てて怒りを表明したくなります(それだけの腐敗した政権でもあるわけです)が、それを絶妙な笑いにして表現している所に芸の妙味があります。その芸は、どれほど腐敗していても選挙では自民党が圧勝するという絶望的社会状況をしなやかに生き抜くサバイバル術となり得るようにも思われました。
映画の冒頭でテレビ局の幹部の人たちが松元ヒロをテレビに出せないのは「今は気楽な内容が好まれる」「クレームが怖い」からと語っている音声が流れますが、視聴者に責任転嫁するのはやめてほしいです。この素晴らしい芸人をテレビに出せないのはテレビ局の〝人〟が出さないからです。しかし、この映画も、映画の基になった番組もテレビ局の〝人〟が作っているのですから、やはりテレビの存在意義は、視聴者・スポンサー・政治家よりもテレビ局の〝人〟次第なのだと思います。そうした作り手の葛藤や苦闘はパンフレットにしっかりと書かれていました。
映画の要所要所で挟まれるヒロさんの舞台は、ワイドショーのワザと急所を外した忖度的政権批判ではないし、単なるガス抜きでもありませんでした。それは、権力の急所を射ぬきながら、観ている人を明るく前向きな気持ちにさせる、人間への愛情に裏打ちされた〝芸〟でした。尊敬します。
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