「不思議だけど(だから)面白い」LAMB ラム とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
不思議だけど(だから)面白い
このゆっくりと積み上げられていくホラー風味ファンタジーはノオミ・ラパスはじめ役者陣の演技によって高められていく。そして脚本監督ヴォルディミール・ヨハンソン(だれ)の才能を証明してみせる。
見ていくうちに不気味とかじゃなく、かわいくなっていくアダ。山中で羊飼いとして暮らしながら、子を喪った哀しみを背負っている夫婦に、ある日突然訪れる生命の誕生=異物。山頂にかかる霧のように2つの要素が境も曖昧に溶け合う。言葉で説明されることなく、けどそれが結果的により効果的にこの不思議な物語に観客をじわじわと引き込んでいく。何をしでかしたのか(酒癖の悪さ?)、バンドメンバーたちによって捨てられる弟という外部の人の訪問によって異様さが際立ち問われる家族円満。そんなバンドマン弟の役割としては、そうした"異物"を人間は受け入れることができる(のだろうか)ということだろうか。
最後にやってくる正体がヤバすぎる…。多様性の中で、そうした視点を向けられる側にある人知を超えた存在からの拒絶というか好意的ではない反応。意味深な最後はもはや、山頂の霧が晴れるように心のモヤモヤがやっとある意味/本当の意味でスッキリしたのか、一種『ミッドサマー』的ですらあるとも思えた。不本意な形ではあれ肩の荷が下り解き放たれる、少なくともそう見えなくもなかった。哀しみを埋め合わせる代替のような存在にはその特異さも目に行かないのか、あるいは受け入れられるのか?そうしたものがやって来ると飛びついてしまうのが自然な人間の心情だろうけど、それすらもすべて失って初めて本当の意味で(残酷ではあるが)再出発を切れるのか?
山や家を背に/目安として歩を進めるのでなく、川の音を聞いて。そういう風に最後の最後まで明確な答えを与えてくれることはなく観客に問いかけてくる…という意味で、この作品は映画として切り取られる前からその後まで続いていく内容だなと思えてよかった。
↓※以外ネタバレ含みます↓
ゾオン系ラムラムの実を食べたガチムチイケメン羊人間が羊をはらませて、時機を見計らって(なぜかガッツリ人間に懐いた頃に?!)回収/迎えにやってくる(なぜか不機嫌そうに??!)