恐怖分子のレビュー・感想・評価
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自宅で'86年の香港・台湾合作を、デジタル・リマスター版にて鑑賞。三組のカップルの運命が複雑に交錯し、不幸が産まれる物語。黒バックのスタッフロールから始まり、全編に亘り独特のリズムが展開を支配し、BGMが殆ど無い。登場人物を突き放した様な引きの映像が多く、電話のシーンが多い。個々のエピソードが積み重なり、三段論法の如くエピローグに集約されて行くが、本筋や主人公を絞り難く、誰目線で観るかによって印象が変わりえる。チロチロと舐める様に愉しむ古酒の様にじっくりと時間を掛け、鑑賞したい一作。60/100点。
・説明を排した様な作りは、破綻せずとも中途半端なシーケンスやシナプスから放り出された様な登場人物があり、中でも物語の核となるW.アン演じる混血の“シューアン”のその後が気になった。
・鑑賞日:2016年4月6日(水)
空気の厚みを映した映画
偶然で繋がる群像劇
主人公?の医師の夫に感情移入できず
2015/04/30、シネマ ジャック&ベティで鑑賞。
2015/08/11、VHSで鑑賞。
一度目は映画館で観て、少々眠かったせいもあって話の流れがよくわからず、大して面白くない印象だったが、他の人の評価がいいし、気になってビデオで観直した。
二度目の鑑賞で登場人物の相関関係が理解できたが、それでもちょっと評価高すぎないか?という印象。
最後、小説家の妻に捨てられた医師の夫が自殺するが、この夫も上司に媚びて同僚の不正をチクって出世しようとするこすっからい奴なのであまり感情移入できず、最後に自殺しても同情できず、妄想したみたいに復讐しろよって思ってしまった。
ラストシーンで妻が夫の自殺をどうしてか悟って、浮気相手とのベッド上で吐き気をもよおしていたが、あの演出もなんだかなあ、と言った感じ。
いつの時代でも、女を信じてはならない…
光と陰と色彩によって語られる一本。
国は違えど、当時の風景を知っている身としての加点はアリながら。
クソ女が甘い気持ちで引き金を引いたバタフライエフェクト以上に。
追い込まれ、誰も信じられなくなった旦那の「都会=街」で生きる孤独と絶望が胸に迫る。
いや、ホントに!涙
そして芳醇なのにとにかく乾いた画面。
ガスタンク。
ケミカル寄りのストーンウォッシュジーンズ。
ダイヤル式電話。
無駄にゴージャスで、ボサボサ一歩手前のパーマ。
そしてなんとも言葉に出来ない、あの頃当たり前だった光と陰と色彩…
群像劇としては荒削りなところもあるけれど。
勢いと情熱と情念を感じさせられた作品。
…同時にふと思ったのは。
今に至る園子温監督は、尖っているのは確かだけれど。
石井岳龍監督のかつてと今を、同音違工でリピートしているだけなのかもな…
現在「GOJO霊戦記」辺りなだけで。
台北
相変わらず台北は世界で最も映える街だと確認する。パリやニューヨーク、リスボン、レマン湖畔あるいはストラスブールよりもずっと。何気なく背景に映り込む緑は、やはり亜熱帯のそれで、濃い。パトカーが行き交い、ガスタンクがそびえ、窓ガラス掃除屋が吊られて掃除して、妻が不倫相手と手を繋いであるいて、ボーイッシュな少女が美人局援交の客を待って、銃声が響き、少年はNikonのカメラでシャッターを切り、屍体が横たわる街。雨に濡れた少女が一晩明かしたバスの運転席から見える街。短いながらディスコのシーンが凄く良い。実は台湾映画が一番ディスコ/クラブを的確に撮ってる気が、ミレニアムマンボしかり、恐怖分子しかり。銭湯にぶちまけられた脳髄、女を襲う吐き気。そう都市はいつだって気持ち悪い。ソリッドで、シャープで、タイトで、フレッシュ。恐怖分子はテロリストより全然怖い。
街の匂い
30年前の映画?だと言う事なので時代はバブル。四角いメガネやサングラスも一周回って今のトレンドアイテムとなっている。そんな小物1つも懐かしさと共に新鮮さを感じる。
壁に細く切ったガムテープで無数の写真を整然と貼ってある中、それらが窓から吹き込む風に揺れたり、薄いレースのカーテンが風を孕んで揺れたり。また飛沫の飛び散る様など「動」の切り取られたシーンもあれば、反対に「静」となる、明け方なのか日の入りなのか分からないオレンジ色が滲む遠くの空や倒れて起き上がらない男の姿。
街の風景が懐かしくもあるのだか、まるで今のリアルタイムにも映る新鮮さ。渋谷の丸井入り口を思わせる繁華街は、元丸井の社員としては因縁のシーンというべきか(笑)
全体的に街の景観、路地裏など、夏の設定だからかもしれないが、日本の梅雨とは違うジットリ感を纏っており、人間の奥に潜む闇を感じる。
当時この映画はかなりスタイリッシュだったのではないだろうか?台湾ニューウェーブと言われていたのに納得。だがウォン・カーウァイ程の執拗な凝り方をしておらず、気が他に散らずに観れる映画でした。
記憶というものついて
観たことがありそうで、でもほとんど記憶が残っていない。しかし壁一面の女の子の写真が風に煽られるシーンは強く印象に残っている。
ということで、デジタルリマスターを上映してくれるというので観に行った。
大きな球体のガスタンク。刑事の友達と最後の酒を酌み交わす時のつまみは何なのか知りたい欲求。話の本筋とは関係ないものばかりが記憶の底から蘇る。
反面、少女が男友達と美人局をすることや、小説が文学賞を貰った女が医師の夫を見限ることは、その場面がやって来ても思い出せない。
人間の記憶とはかくも物語を必要とするものなのか。それとも人間の記憶とはそもそも物語としての意味しか形を持たないものなのだろうか。
ストーリーを覚えていない映画は、もはや見た事実すら忘れているという、自分の記憶というものについて考えさせられた。
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