「「おいしい給食」が食べたくなる!」劇場版 おいしい給食 卒業 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
「おいしい給食」が食べたくなる!
テレビドラマ「おいしい給食」の劇場版第2弾ですが、ドラマも前作も観ていません。しかし、小学生の甥っ子に勧められ、せがまれ、一緒に鑑賞してきました。率直に言って、メッチャおもしろかったです。
ストーリーは、給食を食べるためだけに教師になった甘利田と、彼のクラスの生徒で給食を巧みにアレンジして食べる神野ゴウが、栄養重視の給食改革を進める給食センターと教育委員会に立ち向かい、おいしい給食を全力で守るというもの。誰もの思い出にある給食をテーマにしながらも、誰も気づかなかった給食の魅力を存分に伝えていることろが、本シリーズの最大の魅力です。
とにかくこの甘利田先生がとてつもなく魅力的です。母の料理がまずかったというのが発端のようですが、彼がこよなく給食を愛する姿はもはや変態レベルです。しかし、これがなかなか微笑ましいです。配膳台の前に生徒と共にわくわくしながら並び、食べる前には嬉しくて踊り出し、おかわりジャンケンに勝って絶叫する、こんな教師にはなかなかお目にかかれません。そんな自他共に認める給食マニアの彼を、あざ笑うかのように独自のセンスで食べ方をアレンジしていく神野ゴウとの対比が、本作をさらにおもしろくしていきます。
実は自分は、今でこそ給食は大好きですが、子どもの頃は好き嫌いが多く給食が大嫌いで、登校を渋ったり、朝食を抜いたりしていました。作中でも語られるように、当時は完食主義が主流で、担任に許してもらえず、清掃中の埃たつ教室や下校後の薄暗い教室で、吐き気と闘いながら給食を口に運んだ忌まわしい記憶が鮮明に残っています。高学年になり、知恵がついてきてからは、毎日ビニール袋を持参し、嫌いな給食はこっそりとそれに入れ、帰り道に空き地に投げ捨てて我が身を守りました。あの頃、甘利田先生のような人と出会っていたら、給食も楽しい思い出として刻まれていたかもしれません。
主演は、市原隼人さんで、普段の彼らしい演技と、給食時の振り切った演技とのギャップが笑いを誘います。そこに、土村芳さん、酒井敏也さん、いとうまい子さんらを加え、佐藤大志くんら生徒役の子たちが素朴な演技で脇を固めます。
鑑賞後は、きっと誰かと給食の話をしたくなると思います。給食は、地方によって献立もマナーもルールもずいぶん異なるようですが、それを語り合うのは楽しいものです。本作は1986年の設定なので、懐かしの先割れスプーンも登場しますが、その後、犬食いや箸使いを覚えない等の問題から姿を消します。他にも、主食がパンから米飯へと切り替わったり、コスト削減のためデザートが減ったり、国際交流の観点から外国料理が登場したり、地産地消の観点から郷土料理が登場したり、アレルギー対応からいろいろな食材が姿を消したりと、その変遷をたどることは日本の歴史をたどることと同じです。そして今や、黙食が求められ、教室から会話が消えました。食事は、何を食べるかも大切ですが、誰と食べるか、どう食べるかは、もっと大切です。子どもたちの笑顔と会話のあふれる「おいしい給食」が早く教室に戻ってきてほしいものです。