「改正出入国管理法、6月より施行を前に。」マイスモールランド sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
改正出入国管理法、6月より施行を前に。
正直に告白すると、観ていて居たたまれなくなり、配信を何度も何度もストップさせながら、なんとか最後まで観た。
それくらい苦しい映画だった。
「取材に基づくフィクション」とうたいながら、描かれている内容は、どの場面を切り取っても、鮮血が滴るように「リアル」だからだろう。
主人公サーリャは、身内にも地域からも、通訳としての役割を期待されていることが描かれる。頼む方は「彼女のできること」のみに目を向けているので、「彼女がそこに割かなければならない時間や労力や心理的な負担」には思いが及ばない。
それはまるで、昨年末、NHKで放映された「デフ・ヴォイス」で描かれた、ろう者の家庭でただ1人聴者に生まれたコーダの草彅剛が、当たり前の役割として、父の余命宣告を手話通訳をさせられていたのと同様に映った。
仲の良い友達にも、自分の出自を話せない。
クルド人であることに誇りが持てず、手のひらについた染料を隠してしまう。
ちょっとした誤解からドイツ人と思われたことを訂正できず、自分からも名乗ってしまう。
等々…。
これらも、出自や自分に付随する何かを理由に差別されることを恐れる気持ちからくる自己防衛ということでは、とても普遍的な反応で、誰しも何かしら思いあたることがあるだろう。
国から、「不法入国者」という扱いを受けなければ、努力家で、家族思いで、大学推薦を勝ち取る力のある彼女は、小学校教師になるという夢に向かって、まっすぐ進める道が開けていたかもしれない。
大学進学の経済的な問題は生じるかもしれないが、実際彼女は3か国語を操り、ボランティア精神にも富み、実体験を持っているということから、小学校の外国籍支援や、日本語教室の教諭としては、またとない人材になりうることは間違いない。
けれど、それも難民申請の不受理で、水の泡。
調べてみると、元々、日本の難民認定率の低さは、世界の中で飛び抜けて低く問題視されてきたが、トルコ出身のクルド人に関して言えば、これまで認定者は0人。つまり、0%なのだそうだ。
(NPO法人 難民支援協会のHPより)
「本日よりこの在留カードは無効になります。」
と言って、パンチで穴を開ける田村健太郎演じる職員の無慈悲さ…。
仮放免されても、移動の自由は制限され、働いて稼ぐことも許されない。
これが人権侵害でなくて、なんなのか。
金をちらつかせて欲望を満たそうとするパパ活おやじの醜さ。
「日本語お上手ね」と話しかける老婦人の悪気のなさ。
事情を知った聡太の叔父や母も、結果的に「聡太とはもう会わないでやってくれないか」と、関わりを断つことで問題から目を背ける方向に動こうとするのは、こうした問題解決の経験の乏しさから来るのか。
大家の「こっちは善意で住まわせているんだから」発言の押し付けがましさも、「支援=思いやり」の利己的な満足感を想起させて、あっという間に相手が自分の思い通りに感謝の様子を見せなければ、怒りへと豹変しそうな危うさを感じさせる。
そんな中で、最初から最後まで、聡太とのシーンが本当に救われた。
*********************
外国人の難民申請3回目以降は「強制送還の対象」とすることなどが盛りこまれた改正出入国管理法が、4月の閣議決定で、6月から施行されることになったそうだ。
日本は、本当に人権を大切にする国と、胸を張れるのだろうか?
なぜかアイアンクローのレビューあげてから、呪いなのかなんなのか、自分のマイページにアクセスできなくなりました。どうこうしてる間に新しいページになって。コメントや共感いただいた通知はくるんですよ? 名前は同じなのでこれからもよろしくお願いします。