「国土はその小さな心の中に」マイスモールランド uzさんの映画レビュー(感想・評価)
国土はその小さな心の中に
正直、この作品について語れる知識がない。
どの程度リアルだとか、どれほどの苦しみかとか、どこに問題があるのかとか、何も知らない。
でもだからこそ、観てよかったと思う。
在留資格が失われた理由や、どうすれば取り戻せるかは最後まで明かされない。
もちろん誰でも彼でも受け入れていては国が立ち行かなくなることくらいは分かる。
だが、就労を禁じられてどう生き延びればいいのか。
せめて何の落ち度も選択肢もない子どもたちにだけでも、保障や援助はないものか。
主人公であるサーリャは、推薦がもらえるくらい勉学に励み、夢のためにバイトもこなし、家事も手伝う。
父も、兄弟のことのみならず「他のみんなのことも頼む」なんて、どれだけ重責を負わせるのか。
彼女がいなきゃ、もっと状況は悲惨だったろう。
美しさも相まって魅力的ではあったが、彼女がしっかり者すぎて問題がマイルドに見えてしまっていたかも。
友人2人は描写が薄いため、立場の違いの対比としての機能よりもパパ活への導線の印象が強い。
ロナヒや担任、恩師、許婚、聡太の母なども記号的。
コンビニ店長の葛藤や、「これからは好きなように食べろ」と言うまでの父の心理なども描写が足りない。
聡太も、現実的ではあるが無力なまま何も出来ず終い。
妹を残して崎山家を訪れたことや、みんなで旅行に行ったことなどのきっかけが描かれず、唐突な場面も多い。
そもそもこの作品自体、何も好転せず何の結論もない。
ドキュメンタリー以上たり得ないという意味で、映画としての評価は高くない。
しかし、映画だからこそ触れるきっかけとなる側面もあり、作品自体の価値は高いと思う。