母の聖戦のレビュー・感想・評価
全31件中、21~31件目を表示
メキシコの闇の深さをあらたて実感する
娘さんの救出どころか真犯人の逮捕すらできずに、庶民はただただ耐えるしかないのか。折角味方になって主人公の力になっていた将校さんまで異動させられてしまうとは。無力一杯の映画だった。
だからメキシコ嫌い
2023年劇場鑑賞15本目。
金持ちでもなんでもない一般女性が娘を誘拐されて、頼りにならない警察や軍に見切りをつけて自分で探し出そうとする実話を元にした作品。
メキシコの治安が悪いのは知っていましたが、市民が犠牲になるのは流れ弾に当たる時くらいと思っていたら、ガッツリ犠牲になっているんですね。警察は完全に機能していなくて、軍ががんばっています。
いやそいつまだ情報持ってるよ!なんですぐ殺すん!
主人公の母親はモデルということで細部はかなり違うのでしょうが、こういう事は起きているのだろうと思うとやり切れないですね。
この世は地獄か
メキシコでは実際に、このような誘拐ビジネスが横行しているのだと聞く。
その意味で本作は、一種の「実話」と言えるかもしれない。
モデルとなった「母親」もいるようで、
エンドロールの直前に、彼女への謝辞がクレジットされる。
誘拐された娘を取り戻すため、孤軍奮闘する母親の物語り。
身代金を支払ったにもかかわらず、子供は戻されず、
父親である夫は及び腰、加えて、地元警察は全くの非協力との
四面楚歌の状況のなか。
一市民にしか過ぎない母親が打てる手は限られ、
彼女には裏ルートへ繋がる筋も無く。
ましてや相手は銃で武装した集団。
衆寡敵せずの表現通り、個だけではあまりに無力。
娘のボーイフレンド、街の顔役、警察官、商店の主人、
死体安置所の責任者、軍隊の新任の中尉と、多くの人物が周囲に現れる。
しかし、別居している夫や彼の今の情婦も含め
誰が味方で誰が敵なのか、或いは
犯罪組織と繋がっているのかいないのかも判然とせず。
近隣の住人でさえ、主人公を簡単に売ってしまう可能性さえ否定はできぬ。
疑心暗鬼になりながらも勇気を奮い
『シエロ(アルセリア・ラミレス)』が
果敢に立ち向かうことで、
真相は一歩ずつ彼女の側に近づいて来る。
強固な意志に裏付けられたその顔がアップになるシーンが多く用いられ、
時として絶望を、そして疲れを、また微かな希望を感じさせる表情が変わる度毎に、
我々もその強靭さに感じ入る。
そうした「義」の有る側に敵対する
犯罪をする側の態度はあまりにストレート。
悪びれることもなく、さも当然との風に対峙する。
あまつさえ、罪の意識は微塵もなく、
自分が害を及ぼした相手にすら
呪いの言葉を吐く始末。
何が彼等をこのようにさせてしまうのか。
一方で自身の一族に対する愛情は人並みに持っていることが、
あまりにアンビバレンツ。
他者の側に立ち憐憫を感じることのできぬ精神構造が
如何にして形作られるのかと暗澹とした思いにも囚われる。
『テオドラ・アナ・ミハイ』は女性監督で
本作が初の長編作品と聞く。
準備に時間をかけ、
且つ、彼女の才気も十分なのだろう、
重いテーマの中で、主人公が際立つ造りは鮮やか。
観る人により、
どうにでも受け取ることのできるラストシーンも含めて。
“聖戦”という言葉はこの映画が描く孤立無援の中で一人抗い闘う母の姿には相応しくない(日本語としても適切でないし)。 まだ『ある母の闘い』とかにした方が良かったように思う。
①邦題では所謂“母物”というジャンルを先ず想像してしまう。誘拐された娘を何とか取り戻そうとする母の愛と勇気の物語…
しかし、原題の『La Civil(一般市民くらいの意味?)』からは、警察も軍も当てにならない社会で生きていかなければならない民衆という意味合いが伺い取れる。
②母親が子供の為に命をかけて行動する姿を描いた映画はこれ迄にも沢山あったし、私には子供がいないので(母)親の気持ちは想像できるだけで実感は難しい。
③私がこの映画を観て先ず感じたのは、
いろいろと惜しいが、日本ではありえない、ある国の日常の現実を描く良作。
今年28本目(合計681本目/今月(2023年1月度)28本目)。
内容的に結構地味なところもあり、大阪市で扱っている映画館は1つだけ。その理由があるのか、あるいは他のメディアで取り上げられたのか、100人ほどのミニシアターで4割埋まりほどといった「そこそこ」の入り方です。
公式HPなどで触れられている通り、メキシコにおける「誘拐ビジネス」を扱った内容です。一見ドキュメンタリーのように見えますが当然作話の範囲…と思いきや、実際にあった事件をもとに(後述通り、このような事件はメキシコでは当然のように起きている)つくられています。一方、ストーリーを淡々と描くだけで、公式サイトその他にある「誘拐ビジネス」を描くことはわかっても、それを批判的に描くのかどうなのかという点が映画内ではっきりとせず(おそらく、製作国であるところのメキシコ政府から何か言われた?)、そこは類推するところがあります。
ただ、多くの方は公式サイトを見ていなくても、語として明確に出てこなくても、いわゆる「誘拐ビジネス」が論点にあるのだろう、ということはわかると思います。
ただ、一歩踏み込んで考えたとき、なぜメキシコ(など)で誘拐ビジネスが当たり前のように起きるか、です。
一般的に犯罪には刑罰がつきます。したがって、犯罪をおかすものにとっては、その「リスク」と「リターン」を考えることになります。また、国家(司法)は刑法を策定したり刑務所を作るといったことだけでなく、「そのような犯罪を起こさせない国・社会づくり」ということが求められ、その「せめぎあい」となるわけです。
そこで、なぜメキシコなど(南米に集中しているのが特徴で、ほか、アルゼンチン、コロンビア等)でこれらが見られるのかと考えると、
・ 自動車が(お金と免許があれば)購入できるだけの経済力があり、また公道等も普通に存在するか
・ 「ローリスク・ハイリターン」かどうか(逆にハイリスク、ローリターンな行為はどこでも誰でも普通はしません)
・ 司法や警察行政など、取り締まる側が事実上存在しないか、癒着していたり、あるいは捜査技術等が低く事実上機能していないといえるかどうか
・ 一方で、職業につきたいと思えば(ある程度は制約はされても)選べるほどに経済力が豊かな国か(失業率が30%とか40%とかと言われたら、やる気があっても何もできません)
…という4つの論点があることがわかります(参考:大阪市立図書館など)。
車すら購入できないような最貧国(主にアフリカなど)では、そもそも「車を使った誘拐ビジネス」自体が成立できません。また、日本やお隣韓国、アメリカのように、(賛否両論あるとはいえ)監視カメラが多くあるいわゆる「監視社会」が成立しているか、また(これも賛否両論あろうかと思いますが)いわゆる「スピード違反取締カメラ(ビデオ)が高速道路などに多く設置されているか」といったことがこの「誘拐ビジネスが行えうるかどうか」という「実は最も大きいポイント」になります(まさか自転車で、とはなりませんし、日本はご存じのようにあちらこちらにあるので、やるだけ無駄という以外の何物でもない)。
そこで、「車は買えるし道もあるが、そうした監視カメラや高速道路の追跡システム等はまだ整備されていないか、その途中」といった国において成り立つのだ、ということがわかります(証拠が残らないので検挙がきわめて難しい、など)。こうした国は限られていて(アフリカの多くの最貧国クラスだと、「車すらそもそも購入が困難」だし、インドレベルの発展途上国だと普通に監視カメラが多くあるので、やはりできない)、そうした国において特有で、それがたまたまメキシコであったり、アルゼンチン等数か国に限られるのです。
-----
(参考/短時間誘拐(express kidnap)について)
外務省の当該国(当然、メキシコ含む)の注意喚起として、この犯罪の特徴の「ローリスク、ハイリターン」をさらに推し進めて「超ローリスク、ミドルリターン」化したものに、「短時間誘拐」があげられます。1日限りの誘拐で、日本と同じようにATMで1日にカードでおろせるお金には(設定を変えないかぎり)通常限界があるので、その限界額(メキシコでは6000~7000ペソが多い模様。7000ペソでおよそ16500円程度)まで要求するという、まさに「超ハイスピードで、すぐにはじまってすぐに終わる誘拐」もあります(参考:外務省)。
-----
これらのことは映画はおろか公式サイトには何も書いていませんが、こうした発展的知識も持っていないと、映画自体の主張が少ないので(上記通り、おそらく政府からケチがつくんでしょうね…)、そこは調べる必要があります。
採点に関しては以下の通りです。
-------
(減点0.3/趣旨は理解しても、やや説明不足な点は否定できない)
何度も書くように、この映画の背景や問題提起が何も明示的にないのは、おそらく当該国(この映画はメキシコを含む数か国の合作映画)の政府からの干渉その他だとは思うのですが、それでもあるかないかではかなり違います。
ただ、ここまでの知識を前提とするかはどうかとしても、一般的にいう、いわゆる「誘拐ビジネス」の論点がある、ということは多くの方にはわかりうると思いますし、ミニシアター中心である以上、行かれる方はある程度調べていかれるのであろう(私もそうしました)という点では減点は(作者側に裁量権が少ないのであろうと思える現状は)限定的です。
-------
修羅と化した母の表情に、とても引き込まれた
メキシコで主人公の母のシエロが、誘拐された娘のラウラを捜索する物語です。
ドラマチックな演出はないのですが、かなり引き込まれました。
ラストのシーンがとても印象に残っており、あの人物(ラストにアップされる人物)の気持ちを感じとることができました。
シエロの修羅と化した母の姿に終始引き込まれ、東京国際映画祭で審査員特別賞を受賞したのも納得できました。
追記 私のレビューのすぐ上のレビュー(文字読みさん)は、一部ネタバレしているので、その方のレビューは、観る前に読まないでください。
1月21日追記 未だにじわじわ来る物を感じるので、星5に評価を上げます。凄い映画です。
痩身術かもね
10代後半と思しき娘を誘拐された母親が奔走する話。
彼氏とデートという娘を送り出し、車で出かけて用事を済ませていると、見知らぬ男達に止められて、娘を誘拐したと告げられて巻き起こって行くストーリー。
別居して若い女と暮らす旦那をなんとか巻き込み身代金を用意したが、娘は帰ってこずに値切ったからと更なる要求。
それに応えても…。
街中でどうどうと顔を晒して誘拐を告げる犯人って、警察が宛てにならない国は恐ろしい…。
そして自分で何とか手掛かりを追って、希望の芽が出て来て、映画としてかなり面白くなってきたけれど、ドンの件あたりから少しダレ気味に。
まあ、そういう境遇に置かれた母親の心境をみる作品といえばそうなんだろうけれど、その後も結局もやもやっと。
最後も恐らくそういうことなんだろうな…というちょっとだけ期待させる様な締めで、余韻が中途半端に感じた。
途中まではかなり良かったんだけどね…。
頼れるのは己だけ
メキシコで犯罪組織に誘拐された娘を奪還しようとする母親の闘いを描いたクライムドラマだが、劇伴が一切流れないばかりか、ドラマティックに盛り上げる演出を徹底的に排除。母親が見るものや体験する事を、観客にも容赦なく味わってもらおうとドキュメンタリータッチで捉えており、2時間15分という尺もあってか、観ていてとにかく体力を要する。裏を返せば、それだけメキシコという国の誘拐事件が深刻である事の裏返しでもある。
警察は何もしてくれず、別れた夫も当てにならない。だったら頼れるのは己だけと単独で動き、ついには軍隊まで巻き込む。子を救うべく暴走していく母親が主人公の映画を、“『母なる証明』モノ”と勝手にジャンル分けしているが、間違いなく本作もその1本に加わる。このジャンルでは近作の『ドライビング・バニー』も含むと思うが、『ドライビング・バニー』も本作も、貧困層に厳しい国の社会事情が裏テーマにある。
暴力の連鎖が暴力を呼び、誘拐犯側にもやんごとなき事情があるという点で、虚しい結果になるのが大半の『母なる証明』モノだが、さて本作はというと…ラストの解釈は観た人の判断に委ねられるが、少なくとも監督の意図するもので概ね納得したい。そう思わないとあまりにも報われなさすぎる。
色んな謎への興味が高まるけれど・・・
一筋縄では行かない誘拐もので、社会の闇のようなところに切り込んでいく感じで、かなり見入ったけれど、ゴールが全く見えない。それがこの作品の醍醐味なのかもしれないけれど、あまりの放置し放題で、正直ついていけません。
全31件中、21~31件目を表示