劇場公開日 2021年11月19日

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「『キングダム 見えざる敵』の続編のようなリアルで無情な戦闘の果てに浮かび上がるSWAT部隊の使命が胸に響く力強い人間ドラマ」モスル あるSWAT部隊の戦い よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0『キングダム 見えざる敵』の続編のようなリアルで無情な戦闘の果てに浮かび上がるSWAT部隊の使命が胸に響く力強い人間ドラマ

2021年11月24日
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鑑賞方法:映画館

舞台はISIS(ダーイッシュ)との戦いで荒廃したイラクの街モスル。任官からわずか2ヶ月の新米警官カーワは麻薬と銃器の交換取引を行うダーイッシュ数名を逮捕したところで激しい銃撃戦となり目の前で叔父を殺され同僚と孤立、絶体絶命となっていたところをジャーセム少佐率いるニネヴェSWAT部隊に救出される。カーワから叔父を殺されたと聞いた少佐は、彼の部隊は身内をダーイッシュに殺された元警察官で構成されていてある指令のために行動していることを告げ、カーワを部隊に誘う。何も判らぬまま入隊を承諾したカーワはすぐさま部隊と行動を共にするが、彼らの行く先々でダーイッシュとの激しい戦闘が続き1人また1人と仲間を失っていく。

米国映画ですがいわゆる白人キャストは1人も登場せずセリフは全編アラビア語。激しい銃撃戦で幕を開け至る所で人間があっさり命を落とす地獄絵図が繰り広げられる中を、寡黙なジャーセム少佐と彼の右腕で冷静沈着なワリードに導かれた部隊はある使命のために行動しているが、入隊したばかりのカーワには明かされない。SWAT部隊とダーイッシュの戦いもデタラメで仲間が拉致されているところに平気で手榴弾を投げ込んだり、タバコと交換して手に入れた銃弾も不発だったりする。どこまでも続く廃墟の中を突き進んだ果てで唐突に使命を聞かされたカーワの表情に透けて見える感情に激しい耳鳴りを感じました。

サウジアラビアを部隊にしたサスペンスアクション『キングダム 見えざる敵』の脚本を手がけたマシュー・マイケル・カーナハンの監督・脚本作品ということで、『キングダム〜』の続編のようなリアルで臨場感に満ちた戦闘が延々と続きますが、芝居がかったドラマティックな死はどこにもなく、思想や信条に関係なくただ無駄に人命が失われ、その死屍累々の上にぽっかりと浮かぶ彼らの使命が胸に響く、実に力強い作品です。

よね