劇場公開日 2021年11月19日

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「アラビア語を話す俳優たちが演じる戦場のリアル」モスル あるSWAT部隊の戦い 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アラビア語を話す俳優たちが演じる戦場のリアル

2021年11月16日
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長引く戦闘で街の隅々まで破壊されたイラク第二の都市、モスルを、数人の元警察官で構成されたSWATが"ある目的"に向けて行軍する。敵はISIS(イスラム過激派組織)。残骸の死角から放たれる銃弾や自爆テロを掻い潜りながら、いかに彼らは目的を達成するか?そのプロセスは戦争ドラマとして秀逸であると同時に、配役や描写を含めて細部はドキュメンタリーの雰囲気に近い。

本作で監督デビューを果たしたマシュー・マイケル・カーナハンは、リアリズムの観点からアラビア語を母国語とする俳優をメインに起用。結果、観客はかつて間接的に眺めていたイラクの地上戦へと体ごと引き込まれることになる。

事実に基づいた元記事の映画化権を取得したのは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』や同『エンドゲーム』の監督、ジョー&アンソニー・ルッソ兄弟。しかし、本作はまるでハリウッド映画らしくない。理由はあまり馴染みのない俳優たちの存在と、躍動するカメラが終始、戦争で我が街を徹底的に破壊された人々の側に立ち、彼らの怒りに寄り添っているからではないだろうか。

アフガンが再びタリバンの統治下となった今、観ると、そんな思いが一瞬頭を過るのだ。

清藤秀人