「ミニマルな作劇が上手くはまった」ジャネット 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
ミニマルな作劇が上手くはまった
ジャンヌ・ダルクを描く2部作の前半である本作は、田舎町ドンレミの少女ジャネットがいかにしてジャンヌ・ダルクになっていったのかを、現代音楽にのせたミュージカル仕立てで描いている。デスメタル調の音楽など、激しいリズムにのってヘドバンする少女ジャネットは、確かに何かに取り憑かれたのではないかと言う説得力がある。本作の特筆すべき点は、ミニマリズムに徹した画作りだと思う。豪華なセットはない、殺風景な荒野で数人の登場人物が歌い踊り、激論する。しかし、なにもないからこそ、想像力は刺激される。ジャンヌ・ダルクの物語は「神の啓示」から始まるわけだが、神の啓示みたいな記録しようもないものは想像してもらった方がいい。想像力を刺激する画の構成力と、歌い踊る彼女の身体の異様さにただならぬものを感じさせるという方法で、聖なるなにかを描こうとしている。聖性を描く方法として、豪華なVFXを駆使するよりまったく上手いやり方だ。
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