劇場公開日 2022年1月7日

  • 予告編を見る

「言われてるほど酷くなかったが少女は要らん」弟とアンドロイドと僕 M.Sakaiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0言われてるほど酷くなかったが少女は要らん

2022年3月1日
スマートフォンから投稿

石黒教授の大ファンである僕は、狂気のマッドサイエンティストが自身のドッペルアンドロイドを造り出すなんてもう、聞いただけで観に行かなければという気持ちにさせられた。
事前に確認したレビューは散々なもので「商業作品として最低限の質に届いていない」という怒りの数々。これは僕がジム・ジャームッシュ監督の作品に抱いている怒りと全く同じで、僕も彼の作品を思い出す度、あんなのが映画監督として金をもらってることが許せなくて腸が煮え繰り返るので、当作品の監督はKTを鑑賞候補に入れて結局観なかったくらいの認識しかないが、一旦躊躇してしまった。
しかし狂気のマッドサイエンティストとドッペルアンドロイドというテーマへの欲求には勝てず、シネマロサにて鑑賞。

まあ、確かに説明不足感は否めないが、ジム・ジャームッシュの一億倍マシだし、この作品で商業作品として最低限の~と怒っている人はジム・ジャームッシュの作品(と呼ぶのすら僕は不快だが)を見たら憤死するのではないか。全然マシである。

桐生が精神を病んだ理由は思ったより分かりやすく描かれていた。桐生の父はテンプレ通りの毒父で様式美すら感じる。半グレのような義弟にもありきたりの安心感。
ただ、アンドロイドの動力源があまりにひどい…タイトルにアンドロイドと入れておいてあれはない。あの点については石黒教授もお怒りになられることだろうw

また、少女の存在が物語に不要過ぎて、この少女こそ観客へのせめてもの忖度なのかなあと感じる。

はっきり言って桐生は自身にそっくりなアンドロイドに対し、性的興奮を覚えているように見えるからだ。
誰もそこに言及していないが、性的なトラウマでもあろう父親の不義理を思い起こしながら、無意味に自身のシャツの前をはだけてアンドロイドの手に首を締めてもらう…というシーンは、僕にはそういう意味にしか思えなかった。また他人に興味や関心のない桐生が、わかりやすくアンドロイドには微笑みかけたり優しく抱き締めたり…これでは、物語には必要なくとも綺麗所として少女が出てこないと、男性の観客が気持ち悪く感じるだろう…そういう忖度かと思った。
男性の観客の一人である僕は、物語に不要なものを出さんでくれと言いたいが…

俳優陣は皆演技が良かった。特に父の後妻が桐生から全てを奪っておいて、ぬけぬけと幼少期の思い出を桐生に語り出すシーンなど最高である。実際に居そうな毒婦でゾクゾクした。一番良かったシーンかもしれない。

これが監督の私小説的な作品であるというのも他のレビューで見たが、どちらかというと(少女以外は)石黒教授ファンの女性が考えたような話だと思った。両手で黒板に書くよくわからんけどかっこいい数式の、ただこれがやりたかっただけ感。監督が何を考えてこの映画を作りたかったのか、俄然興味が湧いた。

Hanzawa