劇場公開日 2022年3月25日

「人間の欲望の果てに…」ナイトメア・アリー bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人間の欲望の果てに…

2022年3月27日
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鑑賞方法:映画館

2018年に『シェイプ・オブ・ウォーター』で、アカデミー賞の作品賞を受賞した、鬼才・ギレルモ・デル・トロ監督が描く、上質なサスペンス劇場。ギレルモ監督らしい、最初から最後まで、暗く、もの苦しいトーンの中で、ストーリーも背景も展開していく。しかし、各シーンごとの映像は、隅々まで洗練されていて、ダークな中にもインパクトある色彩映像として心に刻まれていく。

舞台は、暗雲が世界を覆いつくそうとする、第2次世界大戦に突入する1940年代のアメリカ。

父親に対してトラウマを抱えた男・スタンが、人獣の見世物を売りにするカーニバル一座と合流し、団員の女性・モリ―と恋に落ちる。一方で、カーニバルの団員から読唇術を学び、都会での読唇術ショーを目指し、モリーと共にカーニバルから抜け出す。そして、スタンが備えたカリスマ性から、ショーは成功を収める。

更なる、高みを目指したスタンは、モリーの心配をよそに、魅惑的な心理博士・リリスに唆されて、大富豪や政治家を相手に、読唇術を活かした、インチキ霊媒を始めるのだが…。そこには、あまりにも悲惨な闇が、スタンを待ち受けていた。

ストーリーの前半では、田舎の怪しげなカーニバル一座のステージを描き、後半では、派手やかな都会のショー・ビジネスのステージを描くことで、明暗分かれる正反対のステージで構成されている。しかし、主人公・スタンにとって、どちらが明で、どちらが暗だったのかを交錯させるところも、監督の演出の面白さ。人間誰もが持つ、心の奥底にある強欲や傲慢を引き出し、その哀れな姿を訴えかけてくる。

本作では、出演者も豪華。主演のスタンには、『アメリカン・スナイパー』をはじめ、男くさい演技で定評のあるブラッドリー・クーパーが。それ以上に、作品を盛り上げているのが、ウイリアム・デフォー、ケイト・ブランシェット・ト二・コレット、ロン・パールマン等、それぞれ個性が強く、一癖も二癖もある俳優が脇を固めることで、耽美で、怪奇で、それでいて鮮やかなギレルモ監督がねらう物語を演出している。

ラストシーンは、最初からの布石から、何となく予想されたが、二時間半に及ぶ大作にもかかわらず、中弛は感じず、ギレルモ監督らしいサスペンス映画となって仕上がている。

bunmei21
bunmei21さんのコメント
2022年3月27日

NOBUさん、コメントありがとうございます😊
ギレルモ監督らしさが、スクリーンを通して、存分に伝わって来る作品でした。

そして、俳優陣も豪華。それぞれの個性が充分発揮できる役所で、それらが相乗効果となって、ホントに良い作品に仕上がっていると思いました。😉

bunmei21
NOBUさんのコメント
2022年3月27日

今晩は
 仰る通り、ギレルモ・デル・トロ監督本来のダークな面が前面に出た見応えある作品でしたね。
 人間の強欲、怠惰、傲慢、憤怒と言った七つの大罪を盛り込みつつ、見事な前後半の異なる美術に魅入られた作品でした。
 一気呵成に観た2時間半でしたね。作品が良いと時間は彼方に吹き飛びますね。では、又。

NOBU