「人間の弱い面をついたある意味、恐怖映画とも思える作品。」ナイトメア・アリー いなかびとさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の弱い面をついたある意味、恐怖映画とも思える作品。
時代を第二次世界大戦開始直前に設定したことが、この作品に恐怖映画の側面を与え深みを増している。
主人公は読心術師として、そこそこの成功を得た。成功の秘訣は観察眼と人間の深層心理(精神分析)に熟知している事である。読心術の肝は、人間の夢や希望、不安と恐怖である。もちろん、欲望も。これらを利用して、人の心を操ることも可能だと読心術の師匠は諭す。
より多くの富と名声を得るため、主人公は師匠の教えを裏切り、一線を超えてしまう。前半、ヒトラーやチャーチル及びルーズベルトの政治家の名が出る。私はこれら政治家が読心術を使って、私たちを操る寓意物語かと感じた。
戦死した1人息子を想う母親、大富豪で権力者でありながら、死別した恋人を想う老人、その想いが多くの女性を傷つけたようだ。どんな境遇にいても、人間に悩みは尽きない。その悩みに付け込む人がいる。詐欺師、政治家、宗教家、ある意味これは恐怖映画ではないか。詐欺師の成功転落物語だけとは思えない。
上映時間が3時間近い。退屈はしなかったが、2時間くらいにして欲しかった。また、伏線がよく貼られ結末が予想できてしまう。ちょっと残念だ。
意外だったのは、映画化は2回目で初回は主人公をタイロン・パワーが演じた。美男子過ぎて、役に合わない。クーパーの方が似つかわしい。でも、ちょっと歳を食っているかな。
チャップリンの「殺人者」でのセリフ。「1人殺せば殺人者だか、100人殺せば英雄だ」。第二話世界大戦の開始だ。時代を移動した効果がでている。
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