「『いつになったら雪止むんだろう』」ユンヒへ 藤崎修次さんの映画レビュー(感想・評価)
『いつになったら雪止むんだろう』
劇中で何度も繰り返されるこのセリフに日韓両国の関係を憂う政治的メッセージが込められているなどと考えるのは、やはり野暮というものか?
それはさておき、この作品、感情的になっての激しいやりとりや刺激的な場面は一切なく、全編に渡ってひたすら穏やかな空気が流れる。この空気感が何とも言えず心地良い。
そして印象的なのはセリフとセリフのあいだの『間』。
まるで、台本のト書きを観客自身で書くように促してるかのよう。
象徴的なのが、クライマックスのユンヒとジュンの再会シーン。ゆっくりと向き合い、絶妙な距離を保ちながら抱擁する事もなく、見つめ合う。そして、離れていた時間に思いを馳せ、共に涙する。見ているこちらも胸に迫るものがあった。
とにかく、自然と没入していくことができる静かな世界観が見ている側も穏やかな気持ちにさせてくれる。
物語のキーアイテムとして、タバコが使われているが、上司が加熱式を吸っているのに対して、主人公・ユンヒが紙巻きを吸っているのが、いつまでも過去を引きずっているユンヒの気持ちを表している。フィルムカメラも同様。こういった小道具が物語にノスタルジックな雰囲気をもたらし、穏やかな雰囲気を助長している。
中村優子がアラフィフなのに年齢を感じさせない程若々しい。そして、変わらず美しい。
セボン役のキム・ソヘも可愛いかった。
いかにもミニシアター向けの地味な作品だが、出来ればロングラン上映してほしい上質な作品。
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