「ドニー・イェンの重苦しい闘い」レイジング・ファイア Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
ドニー・イェンの重苦しい闘い
まず最初に。
これだけ多彩なアクションを、それぞれ規格外にド派手にちりばめて冥界へ旅立った、ベニー・チャン監督に合掌です。まだまだ観たかったです。
◉アクションが棚にビッシリ
格闘技だけでなく、カーチェイスもガッツリしていて、密度的に言えば棚に在庫品が隙間なく詰まっている快感。
拳銃、ライフル、機関銃、チェーン、斧、ハンマー、手榴弾。カンフー技も蹴り技から関節技まで、実にほどよく配置されていました。
クライマックスは、機関銃の掃射戦と手榴弾でケリがつきそうだったのに、素晴らしく引っ張ってくれて感激。警棒VSナイフからカンフー技の応酬、ハンマーVS金属棒へとどんどん接近していって、最後は腕ひしぎで躊躇なくへし折った。
◉静止画の重さも
しかし決着前の、警棒を持って斜に構えたドニー・イェンと、2丁のナイフをトンファーみたいに敵に向けたニコラス・ツェーの姿は、これ以上ない緊迫した静止画として、しばらく頭から離れそうにないです。カッコ良かったです。
この重量感ある静けさが、その後の決闘シーンを盛り上げてくれた。
◉叛逆の必然
さて、この作品にもう一つの重たさを与えていたのは、やはり警察の正義の意味。最後までドニー、イェンは憂鬱であり、不機嫌だった。かつての盟友の悪を悪と認識しなければならない云々よりも、「警察」そのものをどう認識するか。まぁ、警察アクションには必ず付き物のテーゼです。
ただここで、ニコラス・ツェーのグループの所業がやや乱雑かなと思いました。あの状況で、警察のメンバーが容疑者を殺してしまう必然性が弱いかなと。まるで力任せの傭兵みたいでした。理不尽に対する彼らの怒りにどれだけ共感できるかが、この作品の一本の柱でもありましたから。