「ジュブナイルSFの鉄板プロットに新たな語り口を持ち込んだ野心作」君を愛したひとりの僕へ よねさんの映画レビュー(感想・評価)
ジュブナイルSFの鉄板プロットに新たな語り口を持ち込んだ野心作
両親が離婚して父と暮らすことを選んだ暦が父の職場である虚質科学研究所で栞と出会って意気投合、長い時間を過ごすうちに恋心を抱くようになるが、暦の父と栞の母が再婚することになり兄妹になることを受け入れられない二人は並行世界への逃亡を試みるが・・・。
別れた彼女と過ごした記憶を消去しようと決意した主人公が、施術の最中に自分の過ちに気づき、記憶の中の彼女と逃亡を試みるミシェル・ゴンドリー監督の『エターナル・サンシャイン』を思い出してしまう展開ですが、この逃亡が早々に失敗して大変なことになります。並行世界という思春期SFに欠かせないプロットにオカルト要素を足した点が白眉で、心霊現象の解釈に並行世界の概念を導入して独特の世界観を構築しています。切なさが溢れる終幕はもう『僕が愛したすべての君へ』への目配せになっています。
どちらから観てもいいということにはなっていますが、『君愛』で並行世界の概念や世界観が丁寧に説明されて前述の通り結末も匂わせているので個人的には『君愛』から観る方が入り易いように思います。
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