劇場公開日 2022年10月7日

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「企画倒れのヒドイ方」君を愛したひとりの僕へ ヨヨ23さんの映画レビュー(感想・評価)

0.5企画倒れのヒドイ方

2022年10月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

公開日に2作連続で見てきました。
大分県民です。
ついでに原作の小説2作+外伝1作の既読組です。
それでも言います。ヒドイです。

原作小説2作品についてですが、これらはカレーと肉じゃかのように「具材はだいたい同じでも別物の料理」と言えるほどに違いのある物語でした。
ポケモンのマグマ団とアクア団のようなVer違いではなく、ピカチュウとニャース、サトシ達とロケット団くらい視点が違っているストーリー軸で描かれていたものです。
そして本作「君愛」のヒロインは佐藤栞という女の子で、瀧川和音は主人公の相棒や戦友とも言えるような関係性の「ハズでした」。
物語も、今作は高崎暦の執念・狂気を描いたバットエンド物の「ハズでした」。

映画化した本作品ですが……なんというか、ものすごく「雑」な印象を受けました。
声優さんの演技が棒読みなのはまだいい方です。もしかしたら意図的に棒読み気味にすることで細田守監督作品のような雰囲気を出そうとした可能性も微粒子レベルで存在するかもしれませんが、「まだ」いい方です。

Youtubeのクリップ動画の方がまだマシと思えるような、劇中挿入歌と同時に進行する2人の仲。
まるでノルマを達成の為だけに登場するかのように次々と流れる大分市の風景。
ツギハギみたいにバンバンバンとぶつ切りに進行するストーリー。
小説とは若干異なるラストシーン(ネタバレ防止のためにぼやかしますが、個人的には改悪)
そして極めつけは……もう一方の、「僕愛」の方の劇中シーン。

意図はわからないでもないです。お互いの劇中シーンを挟むことでお互いの物語を思い出させ、相乗効果的なものを狙ったんだと思います。
あるいは制作の手間を省くとか。真相はわかりませんが、作品の意図としてはなんとなくわかります。

しかし、しかしです。2作品の同期性を狙う前にです。

独立した映画としての最低限の体裁くらい整えろや!!!!!!!

原作小説は普通に面白かったです。
名作と言えるほどはありませんが、良くも悪くも普通に楽しめる作品でした。
だからこそ2つの作品を比較して読み比べて何度でも周回できて、作品の「外」もメタとして楽しむことができる良作となっていました。

こちらの映画は違います。初めから「企画を楽しむ事」を前提として作られています。
企画だから映画の中身はどうでもいい。2作品をリンクさせる策として、思い付きで雑なことをしたらこんな作品になった。そんな印象を受けました。

私は本作の「君愛」の方から見ましたが、あまりにもグダグダで……「僕愛」のシーンに切り替わった時は「え? 制作予算尽きてもう一方の作品のシーンでお茶を濁した?」と本気で手抜きを疑った程でした。
まさか、この制作予算を削って宣伝費に回したとか……やってないですよね?
もしもこの僕愛シーンを入れるために脚本を削ったのだとすれば、完全に逆効果だと思います。普通にノイズが増えて混乱してややこしくなっただけです。回想効果以前に、ただ上映時間の水増しにしかなっていない。
なにより主人公が狂いきっていない。脚本を削り過ぎていて、世界全てを巻き添えにしてでも時を逆行させるという狂気がありません。
原作では逆行理論を立てた上で、未来予測まで計算に入れて事象の回避をしようとしたんですよ?

もう一方の「僕愛」の方も見たのでそちらもレビューする予定ですが、そちらは「全体として多少マシ」なだけでした。
そっちはそっちで説明不足が目立ちます。

正直、この映画2作を見るくらいなら原作小説を単品で読んだ方が満足できます。
良かったところと言えば、主人公たちのキャラデザが見れたことくらい。
完全なる企画倒れです。

ヨヨ23